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越前おおの荒島社を1年間やってみた

一瞬で町は変わらないが、1年間で大きく町は変わった。
いや、僕たちにとっては一瞬で町が変わったのかもしれない。

映画を見て外に出た瞬間、さっきと違う世界が広がった。
好きな人に告白して世界がバラ色になる。
町が変わる瞬間って自分の見え方が変わる瞬間。
そんな事なのかもしれない。

2019年7月1日、合同会社 荒島社は特別何も仕事を持たずに法人化した。そんな馬鹿で無鉄砲なおじさんたちの会社だ。

最初の仕事は旧武家屋敷にインスタ映えスポットを作る仕事。正直乗り気ではなかったし、インスタ映えスポットというものに懐疑的だったが、今では毎日インスタにアップされてくる”映え写真”がとても嬉しい。昨夏は天候のこともあり夏休み期間中の大野市の公共施設の利用率は大幅に下がってしまったようだが、この施設は入館者が何倍にもなったらしい。この実績もあって今年も事業は継続、新たに他地域からの大きな仕事も舞い込んだ。

「空き家とサーカス」商店街を舞台にした空き家・空き店舗の活用と、商店街の利用促進。新規事業者の発掘を目的に開催したイベント。とにかく空き家、空き店舗を掃除して、僕たちの理想の商店街を作ろうとたくさんの方々の協力を得ながら台風の中、2日間のイベントを開催。結果、数日後にはひとつ空き店舗が埋まり、出店者や空き家所有者にはたくさんの変化が起こった。最近では空き家とサーカスがきっかけとなり、移住してくる若者まで現れた。そして、理想の商店街を作りたいと息巻いて始めたイベントを準備する中で、僕たちの中にも大きな気持ちの変化があった。
「もう、理想の商店街ここにあるやん」

空き家とサーカスを準備しながら、僕たちは大きな夢を見ていた。
「商店街にホステルが欲しい」
大野には素敵な旅館やゲストハウスはすでにあるが、商店街にホステルはなかった。学生やバックパッカーが気軽に寄ってもらえる安宿があればこの町を面白がってくれる人が増えるはず。そして商店街が楽しくなること、大野の銭湯や朝市を宝物を発見するように旅してくれる人が必ず訪れてくれる。そんな妄想を企画書にしたため、初めて経産省というビックマウンテンに小石を投げつけた。採択。大きな補助金を獲得したが、同時に半分の借金も覚悟した。

色々な方の協力があり2020年7月荒島旅舎(ホステル)はプレオープンを迎えた。予定よりも3か月遅いオープン。世界は変わっていた。

1年間が過ぎた今、僕たちの日常はとても豊かだ。商店街には以前と変わらない日常が詰まっている。町の人とお互いに気にかけあう関係性がだんだん作れている気がする。商店街の会長が前は「お前らに全部任せる」が口癖だったが、今は挨拶をいつ振っても前のめりで饒舌で、ゲストの女の子をちゃんと口説いてくれる。自転車屋のおじいちゃんは旅舎のお客さんに「荒島泊まってくれてありがとう」と言ってくれるし、たこやき屋のおばちゃんは「形が悪くなっちゃった」といって美味しいたい焼きをくれる。朝市の農家のおばちゃんがゲストに「あんたら荒島ホステルとまったんか?」と気にかけてくれるし、元酒屋のかわいいおばちゃんが花をくれる。美味しいつるもちラーメンの麺屋さんが僕の帽子をほめてくれる。

理想の商店街をつくろう!なんて言っていた一年前と違い、僕たちは足る事を知った。だんだんとお店が少なくなる商店街や、出店者が少なくなっていく朝市を寂しいなんて感情はなくなり、これまで気合い入れて継続してくれた大切な文化やおばちゃんたちが愛おしい。そして、これからもできればこの日常を僕たちの子供に残してあげたい。少しでも近くのみんなが商店街を利用して欲しいし、僕たちはもっとお店の人と話がしたい。

今日は小3の娘が荒島旅舎の隣の毛糸屋さんで編み物を習いはじめた。
秋になったらすみれ色のバッグが完成するらしい。

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