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管楽器の不思議〜移調楽器奏者の眼〜

 大昔にピアノを習った頃、「音名」と「階名」の違いは正直さっぱりわかりませんでした。最近ようやく区別するようになった、かなあ。時々(しょっちゅう)混同して混乱しております。

「音名」・・・またの名を「実音」。ピアノを習っていたときは「ハニホヘトイロ」で覚えたんだけど、今は「CDEFGAH(B)」なんだな。
「階名」・・・「主音に対する相対的な高さ」を呼ぶための名前なのだと。

わかるような、わからないような(笑)。

管楽器はそれぞれが互いに異なる「ド」の音を持っている

小学校の金管バンドでは打楽器を担当していて、主にグロッケンを演奏していた。
先生はトランペットはじめ金管楽器を主体に指導しているものだから、チューニング(音合わせ)やスケール練習をするときは「はいみなさんせーの!ドーレーミー。」と号令をかけてみんなが「ドーレーミー」と吹く間、グロッケンは所在なく「シ♭ードーレー」の鍵盤を叩いていたのだ。この時に感じた違和感が「金管楽器のド」に対する不信感(笑)の始まりだった。

ホルンの「ド」はピアノの「ファ」

金管楽器の「ド」はピアノの「シ♭」らしい。
という気づきを持って中学校に入学し、吹奏楽部でホルンを手にした。
さあホルンよ、君の「ド」はピアノだとどの音になるんだい?
楽譜には「Fホルン」って表記がある。フレンチホルンともいうし、きっとF(ファ)だね?

ビギナーズラックである。
学校備品のホルンはヤマハのFシングルだった。
顧問教諭により作成された全体練習のスケール練習用の楽譜では、基本のスケールは「へ長調」で記載されていたから、やっぱり吹奏楽の世界は「変ロ長調の世界」なんだなあと、中学生なりに割り切ることにした。
なんとなく「異世界(変ロ長調)に降り立った実音世界の住人」感が拭えなかったので、せめてもの抵抗(?)として「ホルンのドはピアノのファ」を心に刻んだのであった(なんのこっちゃ)。

合奏は「異世界交流」!?

高校生からは一旦音楽から離れたのだけど、大学生の時にふと手に取ってしまった「ボレロ」のミニスコア。
それぞれのパートの音を譜面のままにピアノに乗せると、まるで調和しないのである。当然といえば当然だが。
楽譜冒頭のパート名を見ると「**in C」という表記。in CはBだったりFだったりAだったり。どうやらそのパートの五線譜が胸に抱いている調性がそもそも違うというのか?

その瞬間、ピアノ以外の楽器(特に管楽器)がそれぞれに唱えているドレミの曖昧さがスッと明るくなった、気がした。

作曲家は異なる世界観を持つ楽器同士を、それぞれに合った調性に調整(シャレてしまった)して合奏に昇華させているのだ、と。

ホルンの「in *」の恐怖(笑)

吹奏楽曲は多くが「変ロ長調」を基本にしているので、ホルンはさりげなく「へ長調→変ロ長調」の転換を、少ない臨時記号や一つまたは二つの♭でやり過ごせるのだが、オーケストラは曲によって調性は実に多様である。おそらくホルンをはじめほとんどの管楽器は「in*」という表記によって「移調」という脳内作業をしている(はず)。
本音は譜面のドレミそのままの運指で吹きたいのだ。
ただ「ホルンといえば移調でしょ」という声(ほんとかよ)に歯を食いしばって「そ、そうですとも。移調なんてね、慣れっこなんですよ、我々は。」とうそぶきつつ脳みそから湯気やら煙やらを上らせつつ「in*」に挑んでいるのだ。少なくとも私は。

私見みっちりに書いてしまった・・・。

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