WFP2023年1月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2023年1月号(第175号)の感想を書いていきます。

1.はじめに

創る人も増え、解く人も増えてどんどんフェアリー界が活性化が理想とする今後ですが果たしてこの夢は適うのでしょうか?

というたくぼん編集長の願い。
WFP第0号を見ると、WFPは小さなところから始まったのだなと分かります。
今年もいっぱいフェアリーで遊ぶぞー。

2.複玉での玉取りの仕様

最近fmzaでサポートされた複玉詰の話。
玉が複数いて、最後の玉が詰まされるまで終局とならないルール。
創る側、解く側どちらしても難しいルールではありますが、その分高いポテンシャルを秘めていると思います。

ここで問題になってくるのが、複数の玉のうち1枚を取った際に、取られた玉はどこに行くのかということ。
駒を取ったとき、通常は取った側の駒台に行きます。
それを複玉詰でもそのまま適用してしまうと、創作上大きな障害になってしまいます。
従って、

複玉において玉属性を持つ駒が取られた場合、玉属性を失わない駒ならば持駒にならずに取捨てとなり、玉属性を失う駒ならば相手の持駒となる。

と扱おうという話が書かれています。

〔 複玉協力詰の例 〕
複玉協力詰の例題が紹介されています。
詰まされる側に複数の玉がある場合、それを減らすように着手するのが基本方針。

私も例題を作ってみました。

【 複玉 】
攻方または受方が複数の玉(玉属性を持つ駒)を使用できる。
盤上の玉が1枚になるまで王手放置が可能。
盤上に残った最後の玉が詰み、新たな玉を盤上に出現させる受けもないとき「詰」となる。
(補足)
複玉において玉属性を持つ駒が取られた場合、玉属性を失わない駒ならば持駒にならずに取捨てとなり、玉属性を失う駒ならば相手の持駒となる。

【 協力自玉詰 】
先後協力して最短手数で攻方の玉を詰める。

作意手順:
16王、同玉、27銀、17玉、18銀、同桂成 迄6手

攻方15王がいなければ18銀 同桂成迄なので、その王を消去します。

〔 玉属性を失う駒を取る複玉詰の例 〕
「複玉詰」を「と玉」と組み合わせた例題が紹介されています。
玉を増やす受けが面白い。
どんな使い道があるか考えてみたくなる手筋です。

さて、複玉ルールを使ってどんな作品が創れるのでしょうか?
いくつか思い付くネタはありますが、余詰がかなり出やすそう。
何をやるにしても実現するのは簡単ではなさそうです。
今後どのような作品が生まれるのか、楽しみなルールですね。

3.第148回WFP作品展

■ 148-11 さつき作
さつき氏がWFP作品展に初登場。
衝立詰は以前からあるルールですが、最近ではめっきり見なくなったルールです。
先日行われたフェアリー短編コンクールで同氏の作品を見るまでは、私もどのようなルールか知りませんでした。
ルールの詳細について、これを機にしっかり文章としてまとめられたことも大きいな進歩だと思います。

4.ちょっと早い2023年年賀詰作品展 解答発表

2番 変寝夢作
Kangaroo Lion(別名:Rabbit)というフェアリー駒の作品。
フェアリーチェスで使われている駒です。
実は私も年賀詰用にRabbitを使うことを考えていました。
結局ボツにしましたが。
なるほど、こうやって作るんですか。

3番 神無七郎作
受方がGrasshopperを攻方にひらすら取らせる。
目的はその奥にある受方桂。
仕組みも明快で、新年に相応しく楽しい作品。

4番 伊達悠作
桂の4段跳ねを最短で。
非王手という比較的シンプルなフェアリールールで実現したところが良い。

5.今月の手筋

テーマは置歩詰。
性能変化を用いない置歩詰は、複玉以外のルールでも実現できそうです。

6.第12回フェアリー入門解答

今回の担当は真T氏で、課題は最悪詰。
岡野陽駿氏が初解答。
作品・解答合わせてWFPの登場は初かと思いますが、詰将棋メーカーでフェアリー詰将棋を最近発表されていました。

① 駒井めい作
自作。攻方王への王手を利用して攻方の着手を限定。
短い手数の中に密度濃く詰め込めたと思います。

⑨ 北村太路作
2手目26桂は面白い一手。
この桂合は取るわけではなく、作意を見ただけでは15の地点に利かなければ何でも良さそうなので、かなり不思議な印象を与えます。
最悪詰の性質を活かした見事な作品。

⑩ springs作
攻方王への王手を利用した作品。
初手32角ではダメで、41角に限定される味が良い。
詰め上がりの受方23角は、最終手で飛車を遠くから打つ手を消していて一石二鳥という感じ。

⑪ 真T作
金合動かしを2回。
短評でsprings氏がコメントしている通り、龍捨て2回の手順にすることで、自然に金合に限定されているのが巧い作り。

⑫ 真T作
銀合動かしを2回。
同銀生が2回出ますが、短評で神無七郎氏がコメントしている通り、意味付けが異なっているのが興味深いところ。
同じようで違うというわけですね。

⑭ たくぼん作
香を連続で4回合駒。
これだけの内容が無駄のない配置でできているのは嬉しい。

⑯ 伊達悠作
桂を連続で4回合駒。
5マスの空間に対して、合駒をする地点を1マス飛ばさないといけない不規則さが面白い。

⑲ 神無七郎作
4手で歩を1枚消去する…かと思いきや、龍に取らせることで手数を短縮できるのが意外な展開。

7.第13回フェアリー入門(禁欲協力詰)出題

今回から担当がたくぼん氏から伊達悠氏に交代。
難易度の記載は有難い。
「ここまでは解こう」という気にもなるので、解答を送りやすくなったのではないでしょうか。

8.第14回フェアリー入門(ライフル協力詰)

課題はライフル協力詰。
私はライフル版邪魔駒消去の作品を発表していますが、それを例題として取り上げていただいています。
ライフルルールは小林看空氏によって輸入されてから、それほど日が経っておらず(WFP第159号参照)、作例もまだ少ないです。
私も2作目を発表しようと思いつつできていないのですが、納得がいかず寝かせていた作品に手を加えて、別館の方に投稿しました。

ライフルルールの性質がもたらす特殊な詰め上がりが、解く側からすると難しいです。
入門作を作るという観点では、結構骨が折れるルールではないでしょうか。
新手筋が出るかなどにも注目。

9.Lortap入門作品展 出題

私の担当コーナー。
Lortapはfmzaで実装されていたものの、誰も使っていなかったルールで、私が掘り起こしました。
手数を3手以内に制限しましたが、慣れないルールなのでだいぶ解きごたえがあると思います。

10.実験室の悲劇(第13回)

次回のフェアリー短編コンクールは占魚亭氏が担当されます。
夏頃に開催予定で、3月か4月に告知するようです。

作品の方はImitatorの有無によるツイン。
Imitatorは手順に与える影響が強烈な駒なので、解を等価にするのが難しいように思えます。
やはり上手くまとめるのは難しそう。
記事で言及されている羽毛布団作は、かなり上手くいった部類と言えそうです。

11.短コン衝突事件

第4回フェアリー短編コンクールの第11番変寝夢作について、同一手順の作品があったという話。
泰永三二朗氏から担当の私に報告があり、記事の執筆をお願いしました。

12.協力詰・協力自玉詰 解付き #8

私の担当コーナー。
創作課題を出していますので、興味があったら是非挑戦してみてください。

【創作課題】 攻方王に受方の開王手がかかる協力詰を作れ。

■ 8-1 springs作
飛角対比のツイン。
対照性も良いですが、銀の配置が1マス変わるだけというツイン設定も巧い。

■ 8-2 駒井めい作
自作。飛車を邪魔にならない位置に動かす。
このような手は詰将棋だと名前が付いていませんが、チェス・プロブレムでは「Hideaway」と呼ばれています。

詰将棋でもHideawayと呼ぶ必要はないですが、テーマとして開拓の余地は十分に残されていると思います。

13.あとがき

三角氏は普通詰将棋の著名な作家ですが、最近詰パラでフェアリー詰将棋の発表をされていました。
どうやらWFPにも進出するようです。
人が増えるのは本当に嬉しいですね。