軍記ものが好きな理由

「わたしにはコレがあるから大丈夫と思っていたけれど、それが揺らいでしまった時に、どう生きたらいいか分からなくなってしまった。」

さっきふと、以前先輩が話してくれた言葉を思いだした。もう5年も前のことだろうか。ふと胸の中に去来してくるものがあった。

そういえばこの先輩がきっかけで文楽を観るようになって1年が経つ。今では2〜3ヶ月に一度の楽しみになっている。

なぜ文楽に通い続けるかというと、下品な表現になるかもしれないが、コスパが良いからの一言に尽きる。毎日声を出すこと、人形を動かすこと、三味線を奏でることを考えるプロフェッショナルの芸を堪能できる。そして演目は100年以上愛される名作ばかり。この文化を支え、広く伝えんとする技芸員(文楽に携わる人たちのこと)の方々のサービスや情熱、熱意に胸を打たれる。そしてそれが大きな組織で動かされている。応援していて損がないし、エンタメとしても最高なんだもの…。

いくつかの演目に触れ、気づいたのは、軍記ものが好きということ。ベースは家同士の争いで、そのなかで義理人情だとか正義だとかを頼りに生きている。

大抵、物語の大詰めで主人公はそれまでと違う生き方を選択する。子どもを失ったことで
世の儚さに気づき、出家するとか…何もかも失ったからたったひとりで島流しに合うとか…

それまでの人生で信じてきたもの、守ってきたものを捨てて、生き方を変える。それってどんな壮絶な覚悟だろう、そうせざるを得なかった運命のおおきさ、痛さはどんなだろう…と思うのです。

立ち尽くした人の姿を人形に見るたびに心をかき乱される。

あと単純に物語のレパートリーや形を知っていくのも楽しいです。まだしばらく見続けたい。

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