見出し画像

滑る、ということ

滑る、と言う経験を皆さんはしたことがあるだろうか?

滑る、という芸人独特の行為なのか経験なのか感想なのか結果なのかすら分別不可能なこの不愉快極まりなく恐ろしいものは、自堕落な芸人生活における免罪符ですらあると思う。

この、滑る、があるからこそ
朝早く満員電車にのって人間関係に気を遣いながら日々汗を流す皆様を尻目に極めて少ない労働時間で大金をもらっても平気な顔していられるのだ。

昔、とある営業先で名も知らぬアイドルグループと一緒になった。
イオン系スーパーの吹き抜けでネタを15分やるのだが、もうこの時点で滑る予感しかない。
お笑いファンはほぼおらず、その上お金を払ってきてるお客さんではなく買い物の途中通りすがりの、なんなら漫才というものを、人生で初めて見る人もいるかもしれないレベルの場所。吹き抜けはそんな中でも微かに起きる笑い声も天井へ吹き抜けさせる。

案の定、激滑りした後、舞台袖で、呪いのように滑った滑ったと繰り返す川瀬に、出番を我々の前に無事終えた名もなきアイドルがこう言った。

ここから先は

2,100字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?