命生の日記(2024.07.21.SUN)

部活の日、副部長からこの言葉を聞いた。
彼女に『教師役』を提案した時の事だった。

「私だって、トラウマとかあるんだからな!?小五の時の先生のせいで『心が壊れた』んだからな!?『私が心を壊したことがない』だなんて思うなよ!あの先生に関してはトラウマなんだよ!」

僕はそれに対して「知ってる」の四文字しか返さなかった。

なぜなら、高二(筆記日から言うと去年)の時に、彼女から「小五の時に壊れた。おかげで『人を信じられなくなった』んだ」と言っていたからだ。

彼女が人を気にしない理由に相応しいと思った日だった……が。

僕はそれに対して『何も思えなかった』。

何故、それを僕に打ち明けた?
僕を「ともだち」だと呼んだことがない彼女が何故僕にこれを話したのだろう?

同情が出来なかった。
むしろ、疑いしかなかった。

それが、今になって、部活でも言われた。
彼女は副部長。僕は部長。

「部長」としてではなく、
「僕」なら、この強い言い方に強くこう言ってやりたかった。

「……『心が壊れた』だけで、まだ『しあわせ』だね」

……と。

別に僕の事を人間の心がない奴だも思ってくれていい。
ただ「部長」という名前があるから、何も深く言わずに「知ってる」の四文字を返しただけだった。

部員達はそこまで気にしていなさそうだったから良かったが、『その言葉』が僕の心……いや、『灰』に突き刺さった。

そう……『殺した自分』に。

僕は、少なくとも、彼女より恵まれなかった。
生まれる地点で、きっと生きる意味なんてなかったと思えるぐらいの不幸さだった。
……そんな事を言うと、考えすぎだって、言う人はいると思うが、今は僕の意見を聞いていてほしい。

何か意見を言うと「口答えするな」「お前が違う」「伝わらない」「お前に言う権利は無い」と言われる。

何かグループ活動をすると、必ず、ひとりぼっちになる。

親の言うことを聞かなければ、叩かれる、蹴られる、傷をつけられる。

「クラスから省かれているよね」「お前はうるさいからあっちいって」「キモイ」等、僕に向けられるのは悪魔の目線だった。

それは、幼稚園の時から。
彼女は、小五の時から。

僕はかつて、何度か人を信じては、裏切られたことが何度も何度も……飽きるぐらい起きた。

『心を壊す』くらいで済むなら幸せだよ。

僕は『心を殺した』んだ。

心を壊されたのでは無い。
心を殺されたのでは無い。

『誰かに殺される前に、自分の心を殺した』んだ。

おかげで、僕は何者か分からなくなった。

何が苦しい?
何が悲しい?
何が辛い?
何が痛い?

もう、思うだけ時間の無駄だって気が付いた。

ボロボロになった心なんかじゃない。
もう、跡形もないんだ。

他人に合わせて、その人の好みになるように、話して、文字を打って、演じている。

僕が演劇部に入った理由は将来の為だけではない。

『これからも偽って生きれるようにする為』なんだ。

僕にとって、人生は『演劇』だ。

何者でもないから、人生というステージに立って、『僕』という役割を演じる。

生きる価値なんてない。
生きる意味なんてない。

心を殺して、自分を殺して、

ああ、もう、ぐっちゃぐちゃだね。

僕は人形だ。
何者でもないただ生きているだけの嫌われ者なんだ。

『心を壊した』だけ、本当に幸せだね。

君には分からないよ。
『心を殺して、自分を失ってまで、馬鹿みたいに偽る』のを。

貴方はまだ、『貴方』という人間が居る。
僕はそんなの居ない。

ほら、ものを壊しても、『破片が残る』でしょ?
それと同じなのさ。

僕には破片なんてない。
『灰』になって____そして……。

消えてしまったんだ。

これを無表情で文字を打ってるなんて、僕自身も信じられない。

何度も言うが、君はまだしあわせ者だね。

『心を壊した』って言って君の首を絞めてやろうかと考えたくらい、僕にとっては苦しい言葉だった。
何もないのに、どこかに刺さるような痛みもした。

何も思わず居た。
もし、それで手が出ていたらどうなっていたんだろう?
彼女を殺していたのだろうか?
どんな手を使ってでも。

……そんな事がなくて本当に良かった。

僕は何度か失ってるから、また何かを失うのは飽きたんだ。

さて……今日も『平気』を作らなきゃ。
今日も態度も文字も笑顔で。

『命生』を演じるよ。


P.S.
生まれてから、僕の事が大っ嫌いです。
早く消えることを願っています。

fin

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