2021/12/04; 熊野古道探訪記

熊野古道とは、伊勢神宮や京都を起点に、熊野三山を繋ぐ道だ。熊野三山とは、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社という3つの大社である。古くより「伊勢に七度、熊野へ三度」と言われたように、600km以上にわたるこの長い長い道は、多くの旅人に踏みしめられてきた。

1か月ほど前に、僕は熊野古道へ行こうと思い立った。徐に電話を取り出し、三重県に住む友人に言った。「熊野古道を歩くぞ!!」
当初は伊勢から歩いて熊野三山を目指すつもりでいたが、何せ600kmである。並大抵の気合では踏破できるはずがない。今回は仕方なく、車で熊野三山を巡ることにした。

熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社の順に訪れた。中でも印象深かったのは、熊野本宮大社と、その旧社地である大斎原 (おおゆのはら) である。

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↑熊野本宮大社

熊野には、ところどころに八咫烏 (やたがらす) の伝説が伝えられている。何でも八咫烏は、天・地・人を表す3本の足を持っており、目的地へと案内してくれる「導きの神」であるらしい。上の写真にも、社殿の左右に八咫烏を象った石像が鎮座し (右側の像は松の陰で見えない)、「よく来たな…」と言わんばかりの威厳を見せつけている。

熊野本宮大社は、元々熊野川・音無川・岩田川の中洲にあった。しかし1889年の洪水により社殿の大半が流されてしまったため、現在の熊野本宮大社は、中洲から500mほど離れた位置にある。その元々社殿のあった場所が、大斎原である。

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↑大斎原へ続く道

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↑大斎原の大鳥居

大斎原には、高さ34mの大鳥居がある。まずはその迫力と存在感に圧倒されざるを得ないが、注目したのは鳥居の中心、そこにいるのは、やはり八咫烏だ。熊野の悠久の歴史を見守り、人々を導いてきたのだろうか。

大斎原の隣には、熊野川の河川敷が伸びる。川の向こうには、広大な森と青空が広がる。川辺に座って一息つくと、聞こえてくるのは川のせせらぎ、木々のざわめき。熊野の時を刻むのは、秒針ではない。遥か昔から絶えることのない、この清く静かな自然の音色である。

水に映った木々の揺らぎを眺めていると、ふいに八咫烏が飛び立ち、僕の行く先を教えてくれるのではないかと期待した。

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