2021/07/17; いつか感謝と謝罪を伝えなきゃ

人生には「やりたくないけどやらなきゃいけないこと」がたくさんある。僕はこれをやるのが苦手でしょうがない。日常でいえば部屋の掃除。仕事でいえばメールの返信や棚卸し。気が進まないことをすぐ後回しにしてしまう。そんな時、ある友人を思い出すことがある。

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彼と出会ったのは、大学1年生の時だ。優しくておっとりした人だった。あまり賢そうには見えない彼を、僕は無意識に見下していた。今思い出すと本当に恥ずかしいことなのだが、僕は心のどこかで、自分は彼よりはデキるな、と思っていた。

しかし、彼は紛れもなく強かった。彼は地道な勉強と研究を人知れず進め、徐々に頭角を現し始めた。彼が纏うふんわりした雰囲気は変わらないまま、成績や研究成果は着実に伸びていた。

彼の努力など知る由もない僕は、見下していた者が自分より優秀な成績を収めていることを知り、傲慢にも苛立った。僕がやるべきことを後回しにしている間も彼は頑張っていたのだから、当然の結果なのに。いつしか、彼に対する僕の態度は以前より冷ややかになっていた。

そしてある日の彼の言葉に、僕は完全敗北を悟ることになる。僕の研究が上手くいかず、もうやりたくないと愚痴をこぼした時、彼は言った。

「やりたくないこともやらなきゃ。大人なんだから。」

この言葉を聞いた瞬間、これまで僕は無意識に彼を見下していたことと、それがまるで見当外れだったことを理解した。己の幼さに吐き気がした。僕のプライドは粉々になり地に落ちたかと思われたが、幸い、地を打つ前に風に吹かれて霧消した。

この出来事を境に、無意識にも人を見下すことが無くなったように思う。僕はきまりの悪い思いをしたけれど、彼のおかげで、結果としてよりよい人間になれたのだ。彼に感謝と謝罪をしなきゃいけないな。今LINEを送ってもいいんだけども…。また今度会った時にしよう。

彼の言葉から自分の欠点を1つ改善できたのはいいのだが、彼の「やりたくないこともやらなきゃ」という言葉そのものは、今でも胸に突き刺さったまま、時々痛むのだった。

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以上、ある日突然、僕が大人の階段を数段昇った時の話だった。大人の階段って急に目の前に現れるものだよね。

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