2020/04/29; 決闘

ある日、寮で昼食を取っていると、隣の友人が口を開いた。
「決闘 (デュエル) したくね?」

久しぶりに耳にした言葉に戸惑ったが、友人は続ける。

「今デュエルしたら子供の時より数倍強いデッキ作れて、めちゃめちゃ楽しめると思うんだ。ロマンあるよな?」同意せざるを得ない。確かに楽しそうだ。

決闘 (デュエル) とは、遊戯王やデュエル・マスターズといったトレーディングカードゲームのことである。日本男児ならほぼ必ず通る道であるため、デュエルと言って通じない者はいない。しかしみんながやっていたからこそ、やり込む者は少なかった。ましてや子供。コンボや効率などロクに考えもせず、ただかっこいいとか攻撃力が高いとか、そんなカードを集めてデッキを作る者ばかりであった。

社会人になった今こそ、その忌まわしき思い出に引導を渡し、大人の決闘に身を委ねようではないか!
そうと決まれば早速調達せねばならん。最強の武器 (カード) をな!

財力に甘え、1人30ものパックを購入。思ったより値段は張ったが、そんなことは目じゃない。パックを開封し、レアカードを手に入れることしか頭にないのだ。
無造作にパッケージを破ると、幼い頃の思い出とともに高揚感が湧き上がる。これこれ、この感じだよ...!俺たちが求めていたのは!
思ったよりカードの名前や絵柄がダサくて情熱を失いかけたが、キラッキラのレアカードを引き当てた喜びは大きかった。
ひたすらにパックを開けて光るカードを探し求める俺たちの姿は、さながら浪漫を求めて飛び回る冒険家のようだっただろう。

とはいえ、俺たちが知っているカードなどもう存在しないし、新しいルールもどんどん追加されていた。何が強いカードなのかも分からないまま、とりあえずのデッキを組む。デッキができたら、いよいよ決闘だ。決闘、スタンバイ!


ボロ負けした。みんな初心者なのに、俺だけ勝てなかった。しかし見えたことはある。デッキを作るときには分からなかった課題が、決闘の中で浮き彫りになったのだ。これはデッキを組み直して再戦だな...。

俺たちは熱い握手を交わした。お決まりのセリフ「今日のところはこれくらいにしといてやらぁ!」を吐き捨て、その場を後にする。頭に浮かんだ言葉を呟いてみる。

「決闘、楽しいなぁ...」

24歳、まだまだ人生序の口。日々是勉強である。

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