2023/04/11; 生きた心地がする

暗い歌が好きだ。暗い小説が好きだ。暗さには正直であることが伴うから。正直な感情を飲み込むと、やがて体の奥から湧き上がってきて、至る所から溢れる。そのときの「生きた心地」といったら、他にはない。

先日のこと。大切な人が、極めてセンシティブな話、その人にとっては思い出したくもないだろう出来事、を打ち明けてくれた。突然の告白に私は戸惑った。何を言うべきか迷った。けど咄嗟に私の口から出た言葉は、どうやら彼女を和ませ、多少なり安心させたようだった。

私はほっとした。ともすれば彼女の傷口を抉りかねない状況で、無意識の内に言葉を選び、彼女に寄り添うことができたのだ。そして気づいた。私はこの時のために、暗い歌や暗い小説を愛してきたのだと。

「生きた心地」は、歌や小説の登場人物に同化した結果だ。「生きた心地」がする度に、私は人の正直な気持ちに寄り添うことができるようになっていた。今回彼女を安心させられたのは、きっとそのおかげだ。

暗い歌や小説を好きでいて、本当に良かったと思う。カラオケでは暗い歌ばかり歌うなと散々言われるが、これが俺の好きなものなんだから仕方がない。

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