2021/09/20; 「ただしい人類滅亡計画」を読みました

少し前に「ただしい人類滅亡計画」という本を読んだ。小説のようなストーリーを持ちながら、「反出生主義」という比較的新しい思想の成り立ちを解説した意欲作である。非常に面白かったし、この本をきっかけに哲学への興味が湧き立った。反出生主義に興味あってもなくても、次々展開される議論が面白いので、オススメです。

反出生主義によると、人が生まれることは必ずしもいいことではない。というか悪いことである。人は産み落とされると同時に苦しみを経験することが決定づけられ、それならいっそ産まれない方が苦しみは少なくて済むからだ。

「人生には苦しみだけじゃなく喜びもあるんだから、苦しみだけに注目するのはおかしい」と反論したいところだと思うが、ひとまず聞いてほしい。なお気になったら、この本を読んで見てほしい。およそ聞きたい答えは書いてあると思う。

反出生主義の考え方は、一見非常識なように見えるが、実はごく自然な考え方のように思える。皆さんは学生の頃、明日のテストが嫌で「台風でも来てテスト中止になってくれないかな…」などと空想したことはないだろうか。この気持ちは、「苦しむくらいなら、元々ない方がいい」という点で、反出生主義と共通している。反出生主義が「人が産まれる・産まれない」という大層な問題を扱っているために分かりにくいが、「テストが中止になってほしい」という考え方の延長線上に、反出生主義はあるのだ。

私はこの本で初めて反出生主義という考え方を知り、他人事とは思えなかった。望んでもいないのに (喜びもあるけれど) 苦しみの多い世界に産み落とされる。かと言って自殺して生きることをやめるのにも苦しみを伴う。こんなの、目的のない謎の試練を与えられたようなものである。こんなことなら産まれない方がよかったと、私は思ったことがあるし、そう思うのは必然ではなかろうか。

一般的に考えて、私はこれから「子供を作る」世代である。しかしその決定権が100%私にある以上、決心する前によく考えなければならない。生を受けた瞬間に苦しみを宿命づけられるにもかかわらず産まれるに値する理由はあるのか、子が経験する苦しみ以上に幸せを与えられるのか、繁殖することが必ずしも優先されない今の時代に、子を設ける意味は何なのか…。

反出生主義を他人事と思えない私は、現時点で「子供を作る」という選択に足る理由を見つけられない。理由を見つけるどころか、「子供を作る」ということに対する凄まじい恐怖を感じる。私は、人間一人を産み出すという、1度始めたら取り返しのつかない事象に責任を持てるかどうかが、怖くて仕方ないのだ。

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