お茶の水JAZZ祭~小野リサ様インタビュー編~

1.はじめに
 今回で第13回目を迎える『お茶の水JAZZ祭』はオンラインでの開催となります。
明大まちづくり道場は皆様に『お茶の水JAZZ祭』の魅力をすこしでもお伝えできればと、「『お茶の水JAZZ祭』出演アーティスト様インタビュー」記事を定期的に更新して参りました。そして今回は第4弾として小野リサ氏にインタビューを行いました。
 

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小野リサ氏とは

1962年、ブラジル・サンパウロ生まれ。10歳までブラジルで過ごし、15歳からギターを弾きながら歌い始める。1989年、アルバム『カトピリ』でデビュー。“ボサノバの神様”アントニオ・カルロス・ジョビンや、“ジャズ・サンバの巨匠”ジョアン・ドナートとの共演、ニューヨークやブラジル、アジア各国での公演も積極的に行っている。99年、アルバム「ドリーム」が20万枚を超えるヒットを記録するなど、これまでに日本ゴールドディスク大賞「ジャズ部門」を4度受賞。2013年にブラジル政府からリオ・ブランコ国家勲章を授与されるなど、日本におけるボサノバの第一人者としての地位を不動のものとしている。2018年 デビュー30周年を記念し、J-POPカバーアルバム第4弾『旅そして ふるさと』を3月にリリースし、このアルバムを引っさげて30周年の全国ツアーを開催。2019年2月27日にはこのツアーファイナルとして、中野サンプラザホールでコンサートを開催した。2018年5月には初のオーストラリアツアー、10月から11月にかけては初の北米(アメリカ・カナダ)ツアーを開催し、世界的に活躍。毎年年末年始には中国全国ツアーを開催している。2019年1月DJ TAROが手掛けるノンストップ・カフェ・ミックスアルバム2タイトル同時発売。「ISLAND CAFE feat.Lisa Ono Ⅱ」「LISA CAFE Ⅱ〜Japão especial」2019年3月より「小野リサ コンサート2019〜Music Journey~」の全国ツアーがスタート。2019年9月にはオセアニアツアーを開催。初のニュージーランドでのコンサートと、オーストラリア(アデレード・ブリスベン・メルボルン・シドニーオペラハウスなど)全5 公演コンサートを行った。
12月4日、新しいアルバム「愛から愛へ〜愛の讃歌〜」をリリース。
宇崎竜童&阿木燿子のゴールデンコンビによる新曲「まだ恋が足りない」の他、「愛の讃歌」など収録。このアルバムを引っさげてのコンサートツアー「小野リサ コンサート2020 Love Joy and Bossa Nova」が、2020年2月21日(金)Bunkamura オーチャードホールからスタートした。

(JAZZ祭HPより抜粋して引用)
  <TOP | 【第13回 お茶の水JAZZ祭 オンライン】 (jazzsai.com)>

代表的なボサノヴァ歌手の一人として日本だけでなく、世界中で活躍されている方です。
今回の『JAZZ祭』には、小野リサ氏の歌声にジャズの演奏隊の皆様にも参加していただき、ここでしか聴けないセッションとなっております。ぜひお楽しみください!

2. インタビュー内容
 今回のインタビューは、道場生の長友と大泉が担当いたしました。

―お茶の水JAZZ祭についてー
大泉)今回の開催で十三回目となるお茶の水JAZZ祭なのですが、JAZZ祭に対する思いなどございましたら聞かせてください。
小野)今回のお茶の水JAZZ祭は宇崎竜童さんと阿木燿子さんのおかげで出演させていただくこととなりました。お二人に曲を書いていただきまして、新しいアルバムに入れさせていただいたんです。そのことがきっかけで二年越しにJAZZ祭に参加するお話がようやく実現しました。なので、今回はとても楽しみにしていました。
ちなみにお二人には私も初めてお会いしたんですが、とても素敵でチャーミングで、音楽に対する真摯な姿勢や純粋さ、パッションがすごく感じられます。そんな人生を謳歌している宇崎さんと阿木さんへ、この場を借りてありがとうございますと感謝の想いをお伝えしたいです。

大泉)JAZZ祭ということで、小野さんが考えるジャズとボサノヴァの共通点や違いなどがございましたら教えていただきたいです。
小野)ボサノヴァとジャズはたぶん親戚同士みたいな関係にあるのかなと考えています。ブラジルの若者が当時のアメリカの映画を通して音楽をたくさん聴いて、ジャズから影響を受けたことでボサノヴァが生まれました。そしてボサノヴァができたことでジャズの方々がボサノヴァという音楽をジャズのなかに取り入れていくという、何か相互関係にあるような気がします。
 
―オンライン収録についてー
大泉)続いて、オンラインの収録についてお伺いしたいと思います。今年度はオンラインの開催となってしまったわけですが、その中で感じたことなどを教えてください。
小野)やはりオーディエンスがいらっしゃるライブというのは、演奏する私たちもすごくパワーをいただいていると思うんですね。発する側とリスナーの皆様との相互関係の中で生まれるパワーをお互いに感じながら、一つの音楽が成り立っているということを改めて感じました。
大泉)実際にお客さまがいるライブは服に音が吸われたりして大変だろうと思っていましたが、実際にお客様がいた方が演奏がしやすいと感じますか?
小野)そうですね、例えばレコーディングをするときは音に集中して一つのものを完成させるということに私たちは気持ちを注ぐのですが、ライブの場合は、お客様がにこっとしたり、体を揺らしたりしているのを見て「あ、これでいいんだな」と確かめるものがあるように思うので、それが有るのと無いのとではこんなにも違うんだなと思いました。

大泉)反対にオンライン開催にしてよかったなという点はございますか。
小野)自分の家からリラックスした環境の中で世界中の音楽、すべてのものがみられるということの素晴らしさもありますね。
大泉)私たちも実際にオンラインで有料ライブなどを見て、聞く音楽の種類が広がったと感じることがありました。しかし、やはり生で実際に音を聞いた方が臨場感もあり心に響くなぁということが何度もあって、生のライブとオンラインでは違うんだなということを改めて実感しました。
 
長友)収録の際になにか印象に残った出来事はございますか
小野)とにかくステージに立つことができるといううれしさがこみ上げてくるのを感じました。その日のライブは、久しぶりに会うメンバーの方々とほっとする一瞬でもあり、自分たちがウキウキワクワクと楽しんでいるように感じました。
長友)メンバーはいつも同じ方々なのですか?
小野)会場が小さいところだとそんなに人数を入れられませんし、各々皆さんいろんなユニットを組んでいるメンバーさんなので、いろいろな方々と演奏しています。今回は最近一緒に演奏している方々との共演で、とても賑やかで楽しかったです。
長友)そうなんですね。実は、事前に本番の映像を見せていただいたのですが、楽しそうに演奏している様子がすごく印象的でした。
ところで、先ほどおっしゃっていたリスナーからエネルギーをもらうという話について掘り下げたいのですが…今回は無観客のライブでしたが、実際のライブというよりも収録に近い感じでしたか?
小野)そうですね。とはいえ、やはり皆様が私たちの映像を画面越しに見られているということを感じながら演奏しました。

長友)先ほどジャズとボサノヴァが近いとおっしゃっていましたが、ジャズとセッションすることはよくあることなのですか?
小野)ミュージシャンの方々は、ジャズからボサノヴァに入ってくる方がほとんどです。ジャズの特徴である即興する場面が出てきますが、皆さん約束事をお勉強してきた方々なので、出していい音の中で自分のその時の気持ちを表現されます。毎日同じ曲を演奏しても即興の時になるとやはり違うメロディーが出て来たりするので、ジャズってとても楽しいですね。
長友)それは演奏を見ている方にもとても伝わってきました。
小野)そうですね。特にメンバーも久しぶりの演奏でしたので無邪気になってましたね(笑)

―自粛期間中の活動についてー
長友)自粛期間中にどのような活動をしていましたか
小野)家にいる時間がこんなにたくさんあるなんて、今までなかなかなかったのでとても珍しくて。そんな中でやはり、家族とともにゆっくりいろんな話ができたということが私にとってすごく貴重な時間でした。そんな中Youtubeやってみたらということで、みんなで協力しながら去年までは自宅セッションの動画を週に一回上げてましたけど、今年からは月に一回上げています。

長友)やはり、普段の活動からの変化はありましたか?
小野)オンラインでやることも多くなりましたし、実際ホールで開催してもお客様の人数を制限しています。おかげさまでコンサートも少しずつですが、開催させていただいています。
長友)普段の活動にも制限などがかかっているのですね。そんな中で音楽に対しての考えに変化はありましたか?
小野)曲一つ一つをすごく大事に歌うようになりました。逆に時間がなかったときはそこまで緻密にひとつの作品を作るということも余裕がなくてできなかったので、本当に時間って大事だなと思いました。今までは世の中もすべて慌ただしかったように思います。あまりにもスピードが速すぎると追いついていけないこともありますよね。そういうときにゆっくりゆっくり進むということでいろんなことを考える時間を持てたこと、「もっとこうすればよかったなぁ」とか、「じゃあ今度こうしてみよう」とか、いろいろと思う大事な時間になっていると思います。
長友)今ある時間を大切にしようという考えになったということですね。
小野)そうですね、日々を大事に大事にしていきたいです。今でもそうですけれど、若い時はもう「あれもしたい」「これもしたい」とやりたいことが本当にいっぱいあったんです。この間ももっと英語をマスターしようとか、もっと料理をやろうとか、やりたいことがたくさんあって。まずは一つに絞ろうといま選んでいるところです。
長友)そうなんですね。小野様が今、新しく始めたいことはなんですか?
小野)いやー本当にやりたいことはいっぱいあって。(笑)小さいときにピアノもやっていたので、改めてピアノをちょっと極めたいなと思ったんです。ところが、毎日がまだ何だか大忙しなんですよね。でも皆さんはこれからいろんな時間がたくさんあって、人生がこれから長いので、若くても本当に毎日を大事にね。一つ一つのこと、その時のことに集中することですごく幸せに生きられる気がします。
長友)そうですね。私も自粛期間中はやはり時間の大切さというものを実感していて、その時時々を大事に生きるという言葉が身に沁みました。

―その他―
長友)ここからはお茶の水に関する質問になりますが、普段はお茶の水に訪れますか。
小野)娘がクラリネットを練習しているので、楽器屋さんに行くこともあります。
私の母の親戚が神田に居たので、ブラジルから帰った10歳の時から、神田のお祭りに行っていましたし、いつも神田明神に遊びに行ってました。週末に親戚がみんな集まったり、夏祭りで山車を引いたり、神田明神のお祭りに毎年お菓子をもらいに行くのが楽しみでしたね。
長友)ゆかりのある街だったんですね。
小野)そうですね。母も神保町に住んでいたことがありますし、その辺りに行くとすごく懐かしそうにしています。母も読書が大好きなので、神保町に行くたびに懐かしい本屋さんへ行ったりしますね。
あと、スキー用品を買いに行ったりもします。
長友)スキーをされるんですね。アウトドアがお好きなんですか。
小野)スキーは一番最初に北海道のトマムで仕事のメンバーとやったんです。ふわふわの雪で、本当に楽しかった。あとカヤックも好きです。沖縄に行ったときに夕方マングローブでカヤックしていた時にお魚がぴょんぴょん飛んでいるのを見て「あぁ、いいなぁ」とカヤックにもはまってました。
長友)当然ですが、やはりいろんなところに行かれてますね。
小野)時間は止まらないけど、旅行は毎日の繰り返しからちょっと抜け出させてくれる。だから旅行っていいなと思います。

長友)普段の活動で行き詰ったりした際にどこか訪れる場所はありますか。
小野)実はあまり行き詰ったりすることがないんです。音楽をやることが楽しくて楽しくてね。毎年のようにアルバムを出していましたし、せっかちなので一つ終わると次何しようかなって考えています。でも疲れた時に一番肩の凝りがなくなるのは自然がある場所だなと思っているんです。例えば公園でぼーっとベンチに座っていたり、山登りに行って、頂上に着くと次はどこに登ろうと考えたりします。あと海が好きで浮き輪で浮かんでいたり、芝生の上で大の字になって空を見上げたり、そこで本を読んだりピクニックしたり… そうしているとなんか力が抜けていくんです。
大泉)自然を見ると時間の流れがゆっくりだなと感じるのでさっきの自粛期間中のお話にも通じることがあるなあと感じました。

長友)演奏中はどういったことを考えていますか?
小野)演奏中は、曲に自分をゆだねて楽しむ。そんな感じで何かを考える、ということはないんですね。音楽ってやっぱり目に見えないものですからね。その時々を楽しみながら、感動しながら自分を曲にゆだねて楽しんでいます。
お祭りみたいに、「もうその時を楽しんじゃえ」って思っています。例えばブラジルのカーニバルでも神田のお祭りでも同じだと思ったのは、「今日一日を楽しんじゃおう」とその時々をみんなで楽しんでいるところなんです。そういう気持ちでいると自然に笑顔になりますし、楽しんでいる人を見るとつられて自分も踊ったりして楽しくなっちゃうじゃないですか。
長友)お話を聞いて、やはり純粋に楽しんでいるからこそ、気付けば見ている方もつられて楽しい気持ちになっていたのかと感じました。

長友)最後に、今回のJAZZ祭の見どころを教えていただけますか?
小野)ジャズと言っても本当に幅が広いので、JAZZ祭っていろんな方が出演されるから、いろんなスタイルの音楽を聴くことができるから、それはとっても貴重なものだと思いますので、ぜひ楽しんでいただけましたら嬉しいです。

3. おわりに
いかがでしたか。このインタビュー企画を通じて出演されるアーティストの方々の魅力を皆様に伝えることができれば幸いです。今回をもちましてインタビュー企画は全て終了いたしますが、お茶の水JAZZ祭はご購入のチケット会社によっては、期間中何度でも配信を見返すことができます。今回の記事をご覧になる前と後では、アーティストに対する印象に変化があるのではないでしょうか。
最後になりますが、改めましてここまでご覧いただき誠にありがとうございました。

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