金融業界、海外勤務への近道は?
外資系投資銀行、日系証券、メガバンク、PE、ヘッジファンド;いずれの業界出身の方からも良く聞かれる質問があります。「海外勤務のポジションはありますか?」
当社は国際的な人材紹介会社として海外にも充実したネットワークを持っていることもあり、海外で働いてみたいという国際派の方がお問い合わせくださるのです。
結論から言うと、海外勤務のチャンスは残念ながらそう多くありません。特にニューヨーク、ロンドンにおける案件は労働ビザの取得が難しいこともあり、ほとんど無いのが現状。 アジアでも、シンガポールなどでは外国人向けの労働ビザの審査が年々厳しくなっています。
海外勤務のチャンスが少ないのは、意外に思われるかもしれません。金融はインターナショナルな仕事ですから。
日系証券大手やメガバンクはMBA留学制度もあり、海外進出の歴史も古い。外資系投資銀行は世界中に充実した拠点を持っているし、外資系PEも世界中で投資を行っている。ではなぜ海外案件が少ないのか?どうすれば道を開けるのか?
そんな方のために業種ごとの現状と、海外勤務を目指す道、最近の成功事例をご紹介します。
1.業種ごとの現状
1)大手の日系証券会社及びメガバンクの現状
大手の証券会社及びメガバンクは世界中に現地法人、支店などを持っています。海外で働く社員が多いのは事実。ですが圧倒的多数を占める国内要員に対する割合で考えると 海外駐在員は相当の少数派。又近年では海外拠点の現地化が進んでおり、海外勤務のチャンスは少なくなっています。
ほとんどの大手日系金融機関では企業派遣によるMBA留学制度があります。MBA留学は海外勤務の近道―には違いないのですが、大手日系金融機関は社員数も非常に多く、企業派遣によるMBA留学は狭き門。
対して比較的門戸が広いのが、若手研修制度の一環で海外拠点にトレーニーとして配属されるケース。海外の提携金融機関や、国際金融公社、アジア開発銀行といった国際機関へ出向する方もいます。
2)外資系投資銀行の現状
投資銀行部門(IBD)、特に外資系では、海外勤務のチャンスはほぼゼロに近い状況です。M&A, ECM, DCMなどコーポレイトファイナンス担当部署でクロスボーダー案件はありますが、基本的に日本国内の業務に集中しており、海外勤務への近道といえません。例外的に、1年間のトレーニー勤務としてニューヨーク勤務の制度を持つ米系投資銀行はあります。
マーケット部門では、以前はニューヨークやロンドンのジャパンデスク、という道がありました。現地時間で外国債券(外国株式)セールス&トレーディングを行うポジションですが、近年は各社のジャパンデスクは縮小傾向にあり、日本採用で海外拠点派遣の道は厳しい状況。米国におけるジャパンデスクの最近の募集案件では、米国永住権(グリーンカード)保有が応募資格になっていたりします。
3)PEの現状
プライベートエクイティの世界では、現地主義の考え方が基本。例えば外資系PEでも日本投資を行う場合、日本国内の拠点に勤務するのが一般的。投資候補先、そして既存投資先と日常的に密接な関係が築くことが重視されているためです。
バイアウト投資は市場を介さない相対取引が主流であり、国内のビジネスは国内で、海外のビジネスは海外で完結するケースが多く、国際間の人材流動性は低いです。
日系PEファンドでは、いくつか海外勤務の事例はあります。いずれも東京本社に入社→シンガポール拠点への転勤というパターンでした。
外資系ファンドの一部では、企業派遣MBA制度を設けています。これを利用してMBA取得後、米国拠点において1年間程度勤務するケースも過去にはありました。
2.海外勤務への近道
業種として海外勤務を叶えられる可能性が高いのは外資系銀行、そしてヘッジファンドでしょう。外資系銀行では、海外で日系企業を担当するジャパンデスクが多いです。ヘッジファンドでは、香港もしくはシンガポール拠点のファンドで日本株担当例が主流。
では、それぞれのお薦めのポイントを見てきたいと思います。
1)外資系銀行
輸出輸入業務を行うトレードファイナンス、国内及び国外の各拠点で決済を行うキャッシュマネジメントは外資系銀行のドル箱業務。
外資系銀行のビジネスモデルにおいて、クロスボーダー業務は大きな比重を占めます。
日常的に、国際業務を担当するケースが非常に多い。
また、海外におけるジャパンデスクは拡大傾向にあります。
従って外資系銀行への転職は、将来における海外勤務の近道といえます。
2)ヘッジファンド
もし海外勤務を希望されている場合は、ヘッジファンドが相対的にチャンスが大きいです。
但し、少数精鋭で運営しているケースがほとんどなので、ヘッジファンドの求人は絶対数が少ないのでご注意を。
多くのヘッジファンドは税制及び投資規制上の観点から日本拠点を持っておらず、香港やシンガポールに対日投資関連のヘッジファンドが集中。ロンドンにも日本投資関連のヘッジファンドがあります。
市場における流動性の高い商品に投資しているケースが主流であり、ヘッジファンドには必ずしも国内拠点が必要でない点も大きな要因でしょう。
3.海外勤務を実現した実例紹介
1)日系大手証券会社の成功事例
新卒で外資系投資銀行に入社、投資銀行部門に配属。
M&Aアドバイザリー部門のVPとして、頭角を現す。
学生時代に留学経験があり、強い海外志向から海外勤務の機会を社内外で模索。
大手証券会社のM&Aチーム東京拠点に転職。
1年後、本人の強い希望により本社派遣の駐在員としてロンドンへ転勤。
2)メガバンクの成功事例
新卒で外資系投資銀行に入社、投資銀行部門に配属。
アナリストとして幅広い業務をローテーションで経験。
メガバンク東京拠点、プロジェクトファイナンスチームへ転職。
シンガポール拠点へ転勤。
3)外資系投資銀行の成功事例
新卒で日系大手証券会社に入社、外債セールスチーム配属。
米国債セールスを主に経験。
外資系投資銀行東京拠点、外債セールスチームへ転職。
ニューヨークのジャパンデスクへ転勤。
4)PEの成功事例
新卒で外資系投資銀行に入社、投資銀行部門に配属。
M&Aアドバイザリー部門のアソシエイトとして、頭角を現す。
海外+バイサイドに興味があり、機会を模索。
ドバイ本社の外資系PEへ転職。
5)外資系銀行の成功事例
新卒でメガバンクに入社、幅広い業務をローテーションで経験。
トランザクションバンキング部門VPとして、実績を残す。
外資系銀行東京拠点、 トランザクションバンキング チームへ転職。
ロンドンのジャパンデスクへ転勤。
6)ヘッジファンドの成功事例
新卒で外資系投資銀行に入社、投資銀行部門に配属。
M&Aアドバイザリー部門のアソシエイトとして、頭角を現す。
日本から香港へ転職。外資系ヘッジファンド香港拠点、日本株ロングショートエクイティのインベストメントアナリストに。転勤ではなく転職という形で海外勤務を実現したケース。