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意味不明小説集

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自分の意味不明小説や、noteで見かけた不条理だったりホラーだったりする、星新一系の意味不明ショートショート(1頁漫画も)をまとめています。
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#創作文

創作》ぬりえ

「今日はみんなでぬりえをしますよー。みんなはどこの国が好きかなー?」 今日はクラスメイト全員で、国の名前とかを知ってもらいながら、ぬりえをする。そんな授業。 真っ白い大きな紙に、黒い線で描かれた世界地図。 6畳ほどの大きな世界地図を目の前に、子供達は歓声をあげていた。 みんなはまだ小学2年生で、もちろんどのあたりにどんな国があるかなんて知らない。そこで地図帳を使いながら、見つけた国に好きな色を塗らせる。 昨日遅くまで描きながら、へぇ、こんな国あるんだーと、教えるはずの私も

創作》POLLENPHOBIA(パレンフォビア)

鼻がむず痒い。 そろそろ花粉の飛ぶ季節。 この頃になるといつも思うんだ。 花粉症にならない奴らは大丈夫なのかな?って。 花粉ってさ植物の種みたいなもんだろ? 正確にはおしべなんだけどさ。 おしべである花粉とめしべがくっついたら、種になるわけだ。 そして、種はいつか芽を出して双葉になって、どんどん大きくなる。 考えてみろよ。 花粉を吸い込んでも平気って事は、体内にもしめしべがなんかの間違いで入ってて、くっついて種になって芽を出す確率が上がるって事だ。 だが、花粉症の奴

創作》白イ花

今朝は、いつものように自宅の最寄り駅に行きました。 駅の改札に向かう途中、頭に綺麗な白い花のコサージュを付けた女の子を見掛けたんです。 中学生か…高校生くらいの子、だったかな? とても綺麗な花だったので、つい、見とれちゃって。 …でも、よく見るとその花、なんか変なんです。 飾りなら、こう、金具がちらっと見えたりするじゃないですか。でもそうじゃなくて。 なんか変だなって、よく見てたら、気付いたんです。 頭から、生えてたんですよ、その花。 ちょっと意味分かんなくて、本当かなって思

創作》歪

ある朝起きたら、視界が歪んで見えた。 真っ直ぐな筈の物には不規則な波、 人の顔のパーツは有り得ない配置、 なだらかな婉曲は弾けたようにギザギザ。 そういえば、こんな絵を描く画家がいたなぁと思い出す。 綺麗な長方形であった筈の鏡を覗くと、平凡な顔がおかしなことになっていた。 小さな目は大きく拡大され、左右の大きさもばらばら。 低い鼻はさらに低く、普通の大きさだった口は鼻よりも小さい。 耳もやたら大きいし、頭だって破裂しそうなほど大きい。 違和感あるけど、普通に生活が出来る

創作》おい、起きろ

冬の朝は、目覚めても布団の中から出たくない。 今日もいつものようにもぞもぞぐずぐすしていると、枕を向けた壁側の、窓がガラリと開く音がした。 驚いて窓の方を見上げると、窓の向こうから男が顔を出して、こちらを覗いている。 待ってくれ、ここは三階で、窓の向こうは足の踏み場などないはずだ。 ぽかんとしていると、男は僕に向かって、 「おい、起きろ!朝だぞ!」 そう叫んだ。 うわっと声を上げたところで目が覚める。 なんだ、夢か、変な夢だったな。 そう思って窓の方を見上げると、窓が開

創作》めんどうな人の話

僕が小さい頃、テレビ画面の中でその人は顔をしかめて言った。 「救急隊員がコンビニに寄るなんて、もってのほかよ!」 僕には言ってる意味が分からなかった。 救急車に乗って働いているのは人間なのに、仕事中は水すら飲んではいけないらしい。 でもこの考えの人が当時はとっても多くって、当たり前になってきた。 そしてそのうち、そう言った人間に何かを施す立場は全てロボットがやるようになった。 救急隊員はもちろん、消防も、郵便も。宅配便や飲食店のウエイトレスだって、今はロボットが当たり前