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2020年のアメリカ大統領選挙情勢 (5ヶ月前)

今年は4年に一度のアメリカ大統領選挙の年です。今年の選挙日は11月3日と、まだ5ヶ月先ではありますが、すでにある程度の情勢分布のようなものは見え始めています。

そこで、これからだいたい1ヶ月に一度ほどにそのときの世論調査の平均値を利用して情勢がどのようになっているのか、どの程度変化があったのかについて記事に残しておこうかと思います。

勝利条件は270票

アメリカ大統領選挙をご存じない方のためにまとめておくと、選挙は直接選挙ではなく、538人の選挙人団(electoral collage)を選出し、彼らが大統領をきめるための表決をとるという、一種の間接選挙という形式をとっています。538 / 2 = 269 ですので、勝つためにはちょうど270人の選挙人を獲得すればいいわけです。

しかしここが肝心なのですが、選挙人の数は各州によって異なり、州単位で勝利した候補がその州の選挙人を総取りするというルールになっています。比例配分ではないのです。

そうした理由もあって、2016年の大統領選挙では総得票数はヒラリー・クリントン氏のほうが多いのに、選挙人の数でトランプ氏が勝利するといったことも起こるのです。これが不公平なルールだという人もいますし、この選挙人制度は時代遅れだという声も大きいのですが、とにかく現状ではこれがルールになっています。

ほぼ結果が見えている州が大半

現在のアメリカは大きく分けると保守の共和党とリベラルな民主党の間で国が二分されており、どちらの党がどの州で強いかという伝統が大きく作用します。

たとえば大票田でいうと、カリフォルニア州(選挙人数55)、ニューヨーク州(選挙人数 25)、イリノイ州(選挙人数20)などは民主党の力が強く、逆にテキサス州(選挙人数 38)、ジョージア州(選挙人数 16)などは共和党が強いことが知られています。

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選挙人の数を丸の大きさで示したのがこちらの図ですが、共和党については特に Deep South などといわれる南部州が束ねると強い支持母体になっており、民主党は東西の海岸沿いの州が支持の中心となっているのがわかります。

選挙戦のゆくえを握っているのはたった7州

ある程度選挙の結果が固定しているということは、選挙結果を決めるのはそれぞれの党の支持が盤石な州ではなく、どちらに転んでもおかしくない州ということになります。

では今年はどのような状況になっているかというと、jhkforecast がまとめた以下の図がわかりやすくなっています。

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まず、大票田でしかもどちらに転ぶかわかりづらいフロリダ州(選挙人数29)がたいへんなことになっています。

フロリダがどれだけ大事かというと、2000年のブッシュ vs ゴア氏の大騒動もありますが、2008, 2012年はオバマ氏、2016年はトランプ氏と、結果はだいたい勝者の側になっています。フロリダを逃すと、その29票を他で埋めるのは不可能ではないにしても非常に難しいのです。

そのフロリダ州の現在の状況は +2.8 ポイント程度でバイデン氏が有利になっています。この程度だと、世論調査の誤差の影響も無視できませんので、実際に投票があった場合に結果がひっくり返ることは珍しくありません。

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といっても、このバイデン氏有利の傾向は4月からしだいに広がっているものでもあるというところが注目に値します。

バイデン氏のファイヤーウォール

フロリダ州は絶対落とせない州として激戦が予想されますが、万が一フロリダを獲得できなかった場合でも大統領選全体で負けないための州を確保する戦略を双方とも考えます。

そこで注目されるのが、前回トランプ氏が劇的な勝利をおさめた北部諸州、ミシガン(選挙人数16)、ウィスコンシン(選挙人数10)、ミネソタ州(選挙人数10)、そしてペンシルヴァニア州(選挙人数20)です。

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たとえば、現在勝敗の行方がわからない州を茶色にしたこちらの図で、伝統的に共和党側になるテキサス、ジョージア、アリゾナ、ユタ州などをトランプ氏に計上したうえで、フロリダとペンシルヴァニア州を加えると、バイデン氏の勝ち筋はほとんどなくなります。

バイデン氏としてはそうした状況には陥りたくありませんので、フロリダ州を落としたとしてもペンシルヴァニア州は落とさないという戦略がとても重要になるわけです。

現状、世論調査の結果だけをみているとバイデン氏はヒラリー・クリントン氏が涙をのんだミシガン、ウィスコンシン、ミネソタの3州で有利に戦いを進めています。この3州がいわば「壁」になっている限り、バイデン氏の勝ち筋は非常に多くなります。

たとえば伝統的には共和党側なのに、急速に勝敗が見えなくなりつつあるアリゾナ州や、多少有利になっているノースカロライナ州にも予算を投じることでトランプ氏を揺さぶることだって考えられるでしょう。

ただ、このミシガン・ウィスコンシン・ミネソタ3州はデモグラフィーとしては若干共和党側であることにはかわりありません。バイデン氏は今回白人女性票や、大学を卒業していない白人層でもヒラリーに比べると票を伸ばしていますが、そうした支持を失わないように注意しないと、この3州だって安泰というわけにはいきません。

先日はCNNの複数の世論調査をまとめた調査でバイデン氏が+10となっており、いくつかの重要な州で有利に選挙戦を進めているという調査があり、トランプ氏がそれに激怒しているという話題もありました。

パンデミックの影響がどうなるのか、経済の状態がどうなるか次第で、このまま済むはずがないわけですが、前回のヒラリーvsトランプでも、意外にデータは安定していて、あとで見返すとトランプ氏の勝利は統計的に十分ありうる範囲だったというのが大統領選の面白いところです。

実際に投票が行われない限りわからない統計的誤差を含みつつも、現時点では7:3ほどでバイデン氏が有利というのが現状です。統計的に見ると、トランプ氏が勝利する確率はポーカーでツーペアがでるくらいで、不利とはいっても十分にありうる範囲内です。

というわけで現時点での妄想地図を貼り付けて、あとで見返してみるとしましょう。

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