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抗議集会に参加する場合の、スマートフォンの設定の仕方

アメリカではいま、ミネアポリス警察の手によって黒人のGeorge Floyd氏が殺害されたことに対する抗議活動が全国的に広がっています。

これを「黒人に対する人種差別に反対する抗議集会」と表現する向きもありますが、より具体的に「黒人に対して不公平に暴力的な警察の取締りに対する抗議集会」と捉える方が現状に即しています。

黒人は、横断歩道以外の場所で道を渡るだけで警察に拘束されたり、比較的軽微な違反でも車を停止させられて尋問される傾向があることが知られています。そして往々にして、そうした警察とのやりとりが一方的にエスカレートして、射殺されたり、投獄されるケースが起こり、警察側は基本的に責任を問われることがありません。

そのように不公平に作られた社会システムへの不満の蓄積が、現在起こっている抗議集会の根っこに存在します。

抗議集会に行くときのスマートフォンの設定方法

こうした不信感が存在し、かつての事例から見て警察が様々な権利侵害を行うことが容易に想定されるからこそ、次のような記事が作成されています。

抗議集会に行く際に、自分の権利を守るためのスマートフォンの設定方法です(あくまでアメリカの場合です)。

そもそも持っていかないのが一番いい
この記事では、もし可能ならばそもそもスマートフォンを抗議集会に持っていかないのが一番良いとしています。スマートフォンは個人情報が膨大に蓄積しているだけでなく、SNS のアカウント、撮影した写真や動画、位置情報など、証拠となる情報が膨大に含まれています。

当局に利用されそうなものは、そもそも持ち歩かないというのが、一番の防衛になるというわけです。どうしても持ち歩くなら、バックアップにした上でまっさらにアプリなどを削除したスマートフォンや、バックアップの端末がいいだろうとしています。

1. FaceIDや指紋IDなどと言った生体認証を切ること
これも面白い視点だったのですが、たとえば警察に拘束された場合にスマートフォンの中に入っているあなた自身の個人情報を閲覧されたり、撮影した写真や動画が削除されてしまうことを避けるために、スマートフォンにはパスコードををかけておくのが必須ですが、この時生体認証を使わない方がいいというのです。

これはアメリカの場合ですが、警察はスマートフォンのアンロックをすることを容疑者に対して強制することが法的にできません(アメリカ憲法修正第五条)。

しかしそれでも生体認証がある場合には、拘束された上で意思に反して顔や指紋でアンロックできてしまう可能性があるので、できるだけパスコードにするのが良いというわけです。

2. デバイスはもちろん暗号化しておき、なるべく機内モードで
これも基本になりますが、証拠品として押収されたスマートフォンを物理的に解析して、データを抜き出すことができないように暗号化を施しておきます。

また、行動している際にはセルラータワーとの通信で位置が記録されてしまいますので、なるべく機内モードで行動します。

3. セキュアなアプリを使用する
知り合いとの通信も、他者によって傍受されやすい仕組みではなく、なるべく暗号化がエンドトゥーエンドで施されたアプリを使います。

たとえばSignalのようなアプリならば通信のメタデータを保存しませんし、時間が経過するとメッセージが消去される機能などもあります。

ブラウジングを行う場合は、Chrome のようにトラッキングされる可能性があるアプリではなく、Tor のような仕組みを使ったり、DuckDuckGoのような検索エンジンを利用すると言ったてんも挙げられています。

それ以外にも様々な手段が
それ以外にも、iOS / Android 両方にアクセシビリティ機能として存在するアクセスガイド機能を使って、現在使用しているアプリを1つだけに制限して他のアプリをロックしておくということもできます。

SNSに投稿している際に、他のアプリが意図に反して通信を行ったり、デジタルな足跡を残してしまうことを避けるためにです。

よく、こうした手段について書くと「違法なことをしているつもりがないなら、隠すことはないではないか」「追跡を逃れようとしているということは、悪事をしようとしているからだろう」と言い出す人がいます。

そこで最初に戻るわけですが、アメリカで起こっているこれらの抗議集会の根底にあるのは、警察組織に対する不信です。どれくらいの不信かというと:

・今日もニューヨークで75歳の無抵抗な男性を警察が正面から突き飛ばし、頭部から流血して重体になった件で当局が最初は「転んで怪我をした」と発表して動画が広くSNSに流通して初めて責任を認めた

・ボストンなどでは、警察が容疑者として捕まえた人物の車に違法薬物を仕込んで逮捕するような事例も数多く、仕込んでいるときだけボディカメラを停止し、逮捕時だけオンにすると言ったことが複数事例ある

・2020年2月にジョージア州で25歳のAhmaud Arbery氏がランニングをしていたところ、彼を空き巣だと断定した住民に射殺された事件が何ヶ月経っても逮捕、起訴につながらない。SNSに動画が流出して初めて捜査が進展

こう言ったことが数限りなく横行しているからこそ、それに対する抗議を行ったとして、当局に拘束された時に公平に扱ってもらえないだろうという警戒がとても強いのです。

そして日本には関係がない、日本ならそうした不公平な不当なことはないだろうという想定もおそらく甘すぎるでしょう。

いざという時のために、デジタル的に監視されないようにする設定方法を学んでおくのは、自分が普段からどれだけトラッキングされているかに意識的になるためにも重要な知識と言えるのです。


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