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コロナウィルスと、小説と、一周して元の場所に戻る "novel" という単語の意味

最近のコロナウィルスについての報道を英語圏でみていると、それを "the novel coronavirus" と表現していることが多いのに気づきます。novel って「小説」という意味ではないの?と、当然不思議に思うわけです。

名詞としての novel はもちろん「小説」なのですが、実はこの単語には形容詞の場合もあり、そのときは「新しい」という意味になるのがこの用法です。では、どうして "novel coronavirus" であって、"new coronavirus" といわないのでしょう?

new 対 novel

新しいものを指し示すときには new という言葉を使うことがほとんどだと思いますが、それと novel とのあいだには微妙な違いがあります。

new は、最近できたもの、最近更新されたものに対して使用されるのですが、novel はとりわけ個性的で、新鮮味があり、かつて見られなかったものに対して使用されるのです。なので、新しいウィルスなどが登場した場合には、new ではなく novel を使うことになります。

他だど、たとえば「新しいアプローチで問題に対処する」などという場合に "take a novel approach to this problem" と言ったりします。

novel の語源

そもそもこの novel という単語が「小説」となった流れが、「新しい」という意味と切り離せないのも覚えておく価値があります。

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元々ラテン語で novus, novellus 「新しい」「若い」などの意味だった単語がイタリア語で novello となり、novella storia 「新しい話」「ニュース」などという表現につながっています。

古フランス語でもラテン語の流れから nouvelle という単語が「新しい」という意味合いを持っていますが、それも conte と roman の中間のお話という単語として定着していきます。映画だとヌーヴェルヴァーグなんて言葉もありましたね。

英語でも、フランス語の nouvelle からのつながりで古くは「新しい」「新鮮な」という意味合いで使われていたのですが、その後あまり使用されなくなります。

圧倒的に new という単語のほうが使用されるようになったのですが、いまでもこうして特殊な場合や慣用句的な場合には novel という言葉が自然にでてくるあたり、言葉とは息の長いものだと感心します。

この novel という単語、日本だと「ノベルティ」という単語で接することが多いはずです。novelty は「新奇な、斬新な」という意味合いから「新製品」という意味を通過して「グッズ、土産物」といった意味を獲得しているのですが、頭についている novel はまさに今回の紹介した意味合いのものなのです。

ただ、あまり歓迎されないものについて novel がついているケースは少ないので、ここ最近のニュースで novel が付くのには、ちょっとぞわぞわとするような、居心地の悪さがつきまとうのもたしかです。



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