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さきちゃんのパワーに圧倒された雪組公演「ODYSSEY -The Age of Discovery」

 雪組梅田芸術劇場メインホール公演「ODYSSEY -The Age of Discovery」を観劇した。1月に東京国際フォーラムで実施予定が、コロナウイルスの影響で全日程中止となり、リベンジとなるこの公演。私が観劇した日は、宝塚大劇場・東京宝塚劇場・ドラマシティ公演がコロナウイルスの影響で公演中止となっており、宝塚歌劇の公演は、全国でこの梅田芸術劇場でしか上演されていないという状況。しかし、そんな不穏な空気を吹き飛ばそうかというような、雪組のみなさんのパワーをいっぱいに感じた公演だった。

さきちゃんのダンスからあふれ出るパワー

 まず、幕開きの美穂さんの美しい歌声に感動。朝美さん、朝月さん、彩風さん、そして雪組のみなさんが登場して笑顔で踊られているところを見ると、こんな状況下でも懸命に公演を続け、客席に元気を届けようとしてくれる雪組のみなさんの姿に、感動して涙がこぼれてしまった。
 1幕で特に感動したのは、第7章「Southern Ocean Antarctica(南極海)」の場面である。シンプルなセットで、真っ白な衣装に裸足の彩風さん。広い空間を占有し、全身をフルに使ったダンスから出される大きなパワーに圧倒される。彩風さんの身体能力もさることながら、客席を惹きつける圧倒的な表現力。それに全力で応じる朝月さんとの息のぴったりさ。こちらも息をのんで魅入ってしまう。それに続く第8章「Mediterranean(地中海)」。“さききわ”の鮮烈デビューとなった雪組大劇場公演「SUPER VOYAGER!」の「海の見える街」を彷彿させる黄色いスーツ・ワンピースに、ジャズ調の音楽と三井聡先生の振付。それだけでも雪組ファンにとっては胸アツなのに、前のシーンの彩風さんのパワーがそのまま伝わったかのように、雪組生全員からパワーがあふれ、舞台からは気迫さえ感じた。幕が下りてもしばらく放心してしまう1幕ラストであった。

2幕も見どころしかない

 2幕も美穂さんのソロからスタート。ディズニー映画「ポカホンタス」の劇中歌「Colors of the Wind」は、美穂さんの優しい歌声と、それに合わせて情緒豊かに踊られる朝月さんのダンスがすばらしい。そして彩風さんのダルマ姿!同じ人間とは思えない腰の高さと脚線美!続く場面は、岡田敬二先生のロマンティックショーを想起させる。白い軍服がこのうえなくよく似合う彩風さん、華やかな衣装と耳に心地よいメロディーは宝塚歌劇の真髄である。白い軍服姿の朝美さんも、美しすぎてずっと見ていてもまったく飽きることがない。そしてやっぱり日本物の雪組、世界各国を航海するという設定のODYSSEY号も、日本を通らないわけがない!お祭りマンボの透真さん・杏野さんはさすが雪組の上級生と言わんばかりの日本物の美しい所作、こぶしの効いた美穂さんの歌唱も絶品。取り巻きの祭りの男のなかでも、桜路さんがとりわけ粋であった。続くブラジルの場面。久城さんのリオの女(歌手)は、高音までよく響く美声に、長い髪を手で翻す仕草がチャーミングでかわいらしい。最後にODYSSEY号は宝塚に戻り、シルクハットに黒燕尾、手には羽扇とTHE宝塚という衣装で宝塚の名曲メドレー。今回の公演では、振付に外部のスタッフも招へいしているそうだが、王道のショーの形で、「やっぱり宝塚はいいよね」とファンに思わせながら締める野口先生の演出に乾杯。公演の開始から終了まで十二分に楽しみ、宝塚って素晴らしい!と改めて思わせてもらえる最高の舞台だった。

 劇場の座席に座るまでは、公演が実施されるのか不安で、劇場に向かう電車の中でも逐一劇団の公式ホームページをチェックするような不安な心境だったが、帰り道は胸がいっぱいであった。この原稿を書いている今、ODYSSEY号は無事に航海を終えている。不安な状況を吹き飛ばして客席に元気を届けたいという雪組のみなさんの思い、ODYSSEYだけはなんとか最後まで公演を続けてほしいというファンの思いが叶ったものだと確信している。

雪組どっせい!