鉄の斧の物語

むかしむかし、正直者の木こりが、木を斧で木を切っていたら、手を滑らせて、斧を近くの泉というか、きれいな沼に落としてしまいました。

そしたら、女神様が、手に金の斧を持って、現れて、「あなたが落としたのは、この金の斧ですか」

という、話は、皆さんご存知ですよね。

まあ、途中は省略しますが、正直者の木こりは、それで、金の斧と銀の斧を手に入れ、自分の鉄の斧も返ってきました。

それの話を聴いた、貧乏で、性格が曲がっていて、正直でない木こりが、それを真似したのですが、変に嘘をついたので、金の斧も、銀の斧も得ることはできなくなって、そして、自分のたった一本の鉄の斧も失ってしまいましたよね。

私が、語るのは、その後の話です。

でも、聴いた話なので、あまり詳しくは語れません。「作家は見てきたような嘘を書き」と言われますが、作家ではない私は、聞き書きなので、あまり詳しくは書けません。そこは、ご了承くださいね。

その木こりは、仲間内では鉄ちゃんと呼ばれていましたが、斧を失ってしまったので、途方にくれました。

斧がなくてはどうしようもないので、金の斧を得た木こりに、鉄の斧を借りに、恥を忍んで行ったのでした。裕福な金ちゃんは、斧をいっぱい持っていたので、その一本を「あ・げ・る」と、余裕の表情で、渡してくれました。

その時の、金ちゃんには、鉄ちゃんを憐れむような、見下すような、いやらしい表情がありましたが、そんなことを気にする余裕もなく、鉄ちゃん木こりは、涙を流して、鉄の斧を受け取ったのでした。

家に変えると、息子に言いました。「木こりにとっては、鉄の斧ほど大事なものはない。他のものを欲しがっては行けない。鉄の斧と自分のやる気、それだけが大事なんだ、絶対に金とか銀とかを欲しがっては行けないぞ」

それまでは、いい加減なオヤジでしたが、どうも、この一件で、親父殿は人が変わったようでした。それから、鉄ちゃん一族は、「鉄の斧はきこりの魂」と家訓を作り、鉄の斧を大事にし、一生懸命働いて、何代か下ったときには、地域で最も信用のある木こりの一家になっていました。

そして、ある時、その家に、一人の男の子が生まれました。子供は、生まれたときから、光り輝くようで、眼はキラキラ輝き、口もとも、つよくむすばれ、普通のこどもではないことは明らかでした。

「マーチ」と名を付けられたその子は、病知らずの強い肉体を持っていました。そして歩くようになり、それから言葉を話すくらいの年になると、泣くこともなく、やると言ったことは、かならずやり遂げるような、尋常ではない強い意思を持っていました。

もっとも変わっていたのは、斧に強い興味を持っていたことで、おもちゃを欲しがることはなく、斧だけを欲しがりました。

7歳位になると、背に斧を背負って、遊びに行くようになりました。周囲の子どもたちは、マーチのことを、特別な子供と見るようになっていて、年上の子どもたちも、マーチのもつ、強烈な威厳に恐れをなして、いじめたりされることもありませんでした。

そして、地域の人々は、その特別な子供のことを「斧の子マーチ」と呼ぶようになったのでした。

つづく・・・