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もくもくとした白い蒸気が視界の端を昇っていく。 真鍮色の機械が様々な音をたてながらせ…
「翼禮、本当に大丈夫なの?」 出仕当日の朝、姉が義兄と姪を連れて家に押しかけてきた。 …
「あ……翼禮、さん」 「おはようございます、淡島さん。何かお仕事あるかなと思って」 「え、…
森の奥、猩々たちすら近づかない、かつての神域は、凶鬼たちが放つ瘴気に汚染され、穢れがま…
手を組むことが決まってから、合計で三度、竜胆に会いに東の太門へ行った。 京よりも平和…
夜明けを待つ黎明の中、ある美しい装飾が施された輿が始まりの儀式を終えた斎宮を乗せて内裏…
あのあと、玖藻神社には無事にたどり着いたが、すぐに守護の祈祷をかけなおすと特級陰陽術師に指示されたため、日奈子長公主には挨拶できなかった。 「あぁあ、一目会ってみたかったのに」 「そうですね。会ってみてほしいです。とても優しい方ですよ」 「え! 翼禮はあったことあるの⁉」 「ありますよ、何回か。お召し物に守護の呪いをかけるためにね」 「すごーい!」 「とても聡明な方です。わたしがかける呪いについていろんな質問をしてくださいました」 「へぇ……。偏見だけど、御姫様ってこう……
内裏の上空。弘徽殿や承香殿といった、皇帝の妃たちが住む社殿を大々的に工事しているのが見…
「うまくいきましたよ、日奈子様」 「ああ……、本当によかった。ありがとう、翼禮」 わたし…
「希奈照吾! 吾黎斗!」 深い山の中、その奥にある、白い鳥居が備え付けられた洞窟の先に…
「お前のせいなのだろう、杏守 翼禮」 「ええ、そうです」 三人の特級陰陽術師と、その取り…
「こ、これは……」 「やるじゃん!」 社殿の外。陽も落ち、少し冷たい空気の中で篝火が焚か…
次の日、華やかな女性神職正装を身に着けて朝からご機嫌な竜胆を連れ、玖藻神社の祭である玖…
竜胆が言った通り、凶鬼などの襲来は一切ないまま玖藻祭は最終日まで滞りなく進められ、大盛況に終わった。 今年は気候も穏やかで天気にも恵まれ、日奈子長公主の噂も相まって人出は過去最高だったらしい。 斎宮の代理に選ばれた娘がどんなものか、皆一目見たかったのだろう。 そして、見た者全員が言葉を失い、ただただ祈りをささげたという。 あふれ出る祈りの力に抱擁され、すっかり虜になってしまったようだ。 「では、わたしたちは陛下にでも報告に行きますか」 「あら! やっと私もあのおぼっ