マガジンのカバー画像

【連載小説】螢惑守心の煌仙子【完結】

39
十七年前、国に忠誠を誓い、命を懸けて護国のために戦ってきた常勝軍が、一夜にして壊滅した。  戦場はあまりに悲惨で、何かに食い散らかされた兵士たちの残骸だけが残っていた。  遺体は…
運営しているクリエイター

#オリジナル

第〇集:登場人物用語紹介(随時更新予定)

※こちらは小説【螢惑守心の煌仙子】の用語集です。 ※歴史上、実際にあった官職も書いてあり…

第七集:凡聖一如

――誰ぞ、わしの聖域にズカズカと入りよるのは……。許さん……。許さん……。 ――あの女の…

1

第八集:羞月閉花

 わたしは後方に飛びのき、斬撃を躱すと、すぐに前方へ飛び出し、大剣めがけて太刀を振り降ろ…

第九集:異国情緒

「おおお……、なんという栄え方をしているんだ……」  花丹国一の港町、長海。  現代語では…

1

第十集:適材適所

「懐かしい、この感じ……」  第一階層は緑豊かな地下大熱帯森林だった。 「なるほど……。龍…

第十一集:因果応報

 灰が散り、声を持たない魔神蚕たちが、枝や葉と一緒に燃え落ちていく。  子供たちを救おう…

第十二集:按甲休兵

「もう明け方かぁ……」  紫にさす朱は黎明の色。  魔窟から出て最初に見た空は、昨夜見た炎よりも優しく、世界を照らす準備を始めていた。  港町の朝は早い。それでも、まだ生鮮食品店以外の店は開いていない。 「マックスさんのところに届けるにはまだ早いかな……。あれ?」  魔窟の目の前にある酒屋の前に十人ほど人が集まっていた。 「あいつら、まだ帰ってこないぞ」 「もしかしたら野宿でもしてるんじゃ……」 「いや、それはないだろう。行ったのは第一階層。それも、ただ蚕を取りに行っただけだ

第十三集:怨望隠伏

「わぁ……」  十メートルを超える高い塀。南北に約九百メートル、東西に約千メートルもある…

第十四集:君側之悪

 朝堂。  そこは天子とともに朝臣たちが政治を行う場所。  長く大きな階段の先、いくつもの…

1

第十五集:焦熱地獄

 長海は今日も変わらずにぎわっている。  何かのお祭りでもあるのだろうか。店の軒先に、前…

第十六集:善戦健闘

「おお、平原だ。最悪」  あちこちで探索者の集団と鬼霊獣の戦いが繰り広げられており、地面…

第十七集:虎尾春氷

「痛い……」  時間短縮のため、魔窟を飛行で往復した結果、溶岩洞では蛙たちに狙い撃ちされ…

1

第十八集:兄友弟恭

「兄上! いますか!」  わたしは帰宅後すぐに蜜柑堂へ行き、兄を探した。  清廉な薬の香り…

第十九集:仙姿玉質

 姉は嫁ぎ先となる蘇芳堂という薬舗ですでに働いている。  蘇芳堂は瓏安の隣の州、佳州にある大きな薬舗で、佳州知府の次男が営んでいる。  その次男こそが姉の夫となる人だ。  佳州には大きな運河が通っており、貿易拠点としてとても人気がある。  花丹国内だけではなく、多くの異民族も商売にやってくるので、珍しい工芸品や動植物なども、比較的手に入りやすい環境だ。  長海とは違った趣のある異国情緒溢れる街。わたしが気に入っている場所の一つだ。  わたしは大仙針に乗り、蘇芳堂にやってきたは