サイスニードのハイ・ストレートと吉村貢司郎
はじめに
サイスニード残留おめでとう!危うくボツになるところでした。
暁めぐりです。
今回はサイスニードの高めのストレートと、そこから見る吉村貢司郎についてまとめてみます。元ロッテの里崎智也氏はサイスニードについて、中継で度々高めのゾーンギリギリのストレートを特徴として挙げています。また、MLB、NPBでも高めのストレートはトレンドとなり重要視されています。
本記事の前半は、サイスニードの高めのストレートはどれほど有効なのか、今季の投球から分析していきます。
後半は、やはりストレートを中心に吉村貢司郎の将来像について予想していきます。タイプが違うようにも見えますが、サイスニードと吉村にはかなりの類似性があるようです。
※記事になにかあればこちらまで
暁めぐり@燕党新人Vtuber(@Meguri_Akatsuki)さん / X (twitter.com)
サイスニードのストレート
今季7勝、防御率3.67をマークし、一度も離脱せず先発ローテを守ったサイスニード。
直球最速157キロはチームトップ、平均147キロは先発陣で2位にランクイン。空振り率8%も先発陣ではチームトップタイの数字をマークしています。すべてのストレートの投球分布を示したのが下の図です。
やはり真ん中高めを中心に、高めのゾーンにストレートを集めています。高さ、コース別で球速に変化はありません。
ここからは高低ストレートの比較を。平均球速に変化はありませんが、空振り率は高めの直球が10%に対し低めが4%。ファウル率、結果打球率も同様に高めの直球がかなり優位ですね。
MLB、NPBの平均でも同じような結果ですが、サイスニードに関してはより顕著です。もう一つ注目すべきは被打率。高めの直球では2割近く被打率を抑えることができ、投球数からみたHRの割合も優秀です。
高低とは関係ありませんが、サイスニードのストレートにはもう一つ特徴があります。それが下図のストライクカウント別の平均球速です。
比較すると一目瞭然ですね。平均球速は1ストライクごとに1~2キロ上昇しており、2ストライク時の平均球速は149キロまで上がります。
空振り率も5%→9%→11%と平均球速に伴って上昇しますね。被打率も同様の傾向が見られます。逆に入り球のストライク率は69%と確実にカウントを整えることができています。
個人的には特にファーストストライク時の直球を「カウントストレート」と勝手に呼んでいます。
正直、良し悪しあると思います。最近はあまりありませんが、中軸打者にも140キロ台前半のボールで入ることがあるので怖いといえばそうですね。
一方ではこのボールがあるからこそ、先発ローテの柱として、ある程度長いイニングを安定して消化できるようになっていると思います。
一時期は先発か中継ぎかといった適性の論争もありましたが、今では先発陣を引っ張る存在にまでなりました。今でもショートイニングなら平均150は軽く出してくると思いますが、本当に先発投手として成長したと思います。
吉村貢司郎のストレート~共通点1
さて、サイスニードのストレートに関しては高めストレートの有効性がかなり高いことがわかりました。次に吉村のストレートを見てみます。
ストレートの平均は146キロ、空振り率は6%。サイスニードとの比較では、平均-1キロ、空振り率-1%、ファウル率-5%ほど。
総合被打率は.292。(リリーフ含め)スワローズ平均だと.274なので少し良くないくらい。ここからゾーン別にみていきます。
特筆すべきは低めの被打率。投球割合としては高めの半分ほどにも関わらず、4割を超える高被打率。サイスニードと同様に、高めの直球では2割近く被打率を抑えられます。
もう一つ特徴的なのが、ベルトゾーン(高めでも低めでもない)の直球です。
ベルトゾーンのストレート被打率は.216、ストライクゾーンど真ん中を除くと.136まで下がります。高めストレートと同じ程度のファウル率を記録し、ゾーン見逃し率も高めより大幅に上昇します。
流石に空振り率は高めのほうが良いですが、自身の平均に近い数字です。
サイスニード同様、低めに「集める」理由があまりないですね。真ん中から高めに、強いボールを投じるメリットのほうが大きいですし、その中でコースを投げ分ければ大幅に被打率は下がるでしょう。
投球分布の事例
まずは4月23日巨人戦の投球分布
結果は5回9安打6失点3被本塁打、直球被打率.500(8-4)。
高低比率は低め67.7%、高め32.3%でした。
次に5月9日阪神戦の投球分布
結果は6回1安打0失点、直球被打率.111(9-1)。
高低比率は低め35.8%、高め64.2%でした。
1試合の事例としても高めに集めたほうがよさそう。この試合、投球分布だけなら「サイスニードが投げました」って噓ついてもバレなさそう…
2事例だけでなく、例えば今季最終先発となった9/27DeNA戦(6回2失点)だとストレートのうち高め比率が78.6%に達しています。
以上のように吉村貢司郎にとって、高めのストレートは来季先発ローテを守って年間活躍するための道しるべになりそうですね。
個人的には、最初のモデルは小川よりサイスニードだと思っています。
小川は低め両コーナーの比率と被打率が優秀すぎて(誰にとっても)真似するのは難しいですが。
中継ぎ適性とカウントストレート~共通点2
アジアチャンピオンシップでの大活躍に見るように、個人的には、吉村にも中継ぎ適性があると思っています。一方で、来日1年目のサイスニードもまた、先発か中継ぎか意見が分かれていました。
吉村に関しては今季期最終登板で中継ぎテストとなった10/4の投球ですでにその適正を示していました。
ストレートの平均は146キロ→149キロまで、+3キロと大幅アップ。同じ試合で中継ぎテストをしたE.ロッドは平均球速に変化はなく、(どちらもよかったですが)違いがはっきり分かれました。
アジチャンのタイブレークではストレートの平均球速は150を超えていたそうですし、瞬間出力の高さは間違いないです。
では、これを生かしつつ先発で活躍するには…
そのヒントがサイスニードのカウントストレートにあると思います。
例えば先程みた5/9の投球では、
カウントストレートが見られます。もちろんストレートしか見てないので、他の変化球との兼ね合いで最初からギアを上げないといけない登板も多いと思います。が、この日はカウントストレートを投げつつ6回95球無失点と好投しました。
1点差だったこともあって(相手は阪神村上)交代しましたが、7回も行けたと思います。今季最長は6回ですが、サイスニードのスタイルを見れば、より長いイニングを投げられるようになりそうです。
結論
ここまで、長文にお付き合いいただきありがとうございました。
サイスニードの高めはかなり浸透してきたイメージがありますが、吉村もまた、高めで押していけるタイプの投手ですね。その上でベルト付近の内外に投げ分けができるのは大きな武器だと思います。
サイスニードが今季23先発で防御率3.67。吉村も巨人戦防御率11.25を除くと防御率3.31かつ(怒られそうですが)中日戦の登板がなかったので、見た目の結果よりは悪くなかったと思います。
まあ現状の分析なので、来季いきなりアウトロービタビタを連発してる可能性もありますし、それも面白いと思います。
いずれにせよ、ピーターズが退団した今、2人にかかる期待はかなり高いので頑張ってほしいですね。
おわりに(次回予告)
アジチャン優勝おめでとうございます!田口の残留も嬉しいですし、吉村もいい活躍でしたね。サイスニード含む助っ人4人の残留も嬉しい限りです。
さて、次回は小澤か高橋奎二かどちらかをやります。
小澤に関しては配置適性を含めた話を、高橋奎二については前半戦の不調と終盤戦のいわゆる「対角線投法」についてまとめたいなと。
急激に冷え込んできた今日この頃ですが、皆様が元気に球春を迎えられますように願いつつ終わりたいと思います。ではまた~