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子どもたちは人として尊重されなければならない

「イエナプランはメソッドではなく理念だ!」とよく言われます。そして、8つのミニマムや20の原則、6つのクオリティ、コアクオリティ、7つのエッセンスなど、学校が理想的な場所になるための様々な理念があります。その中でも「20の原則」はイエナプランスクールを実施する学校には必ず校内への掲示が求められています。

20の原則の最初の文章
「どんな人も世界にたった一人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も一人一人がほかの人や物によっては取り換えることのできない、かけがえのない価値を持っています。」

これは、私の子育て中のエピソードです。
当時、中学生だったうちの息子の担任の先生から「毎週土曜日にお母さん向けの勉強会を実施していますので、よかったら参加しませんか?」とのお声がけをいただきました。
先生直々にお誘いいただいた勉強会。ちょっと特別感があり、喜んで参加させていただきました。(後で思えば、クラスの中で問題児とされている子の親が誘われていたようです(笑))
ともあれ、中々素晴らしい勉強会でした。25年ほど前ですが、「親業」というアメリカの教育書を使った学びでした。この「親業」、現在は講座にもなっており、資格制度になっていたりしますが、当時は著書を共有して毎週学ぶ形でした。ご興味のある方は以下より試し読みできますし、今もAmazon等で購入可能です。

著書はさておき、当時息子の担任から言われてショックだったことが二つありました。
一つは「お母さん、もしお子さんとの関係性ができているかどうか、試す魔法の質問があります。お子さんが帰ってきたときに「学校どうだった?」と聞いてみてください。答えが「別に。」だったら、親子の信頼関係はゼロです。」おそるおそる、その夜試してみたら息子の返事は見事に
「別に!」でした。

もう一つは「お母さん、もしお子さんが食卓で立てひざでご飯を食べていたら、お子さんになんと言いますか?」というもの。ほとんどの親が「食事の時は膝を立てちゃダメ!」と、即座に言います!との答えでした。
次に担任は「じゃあもし、ママ友さんが同じことをしたらあなたはお子さんに言ったことと、同じことを言いますか?」全員が「。。。。。」でした。
その時担任が言った言葉は今でも忘れることができません。それは・・
「お子さんはあなたの所有物ではなく、一人の人権を持った人間ですよ」
というものでした。


最強の二人から学ぶ。人として尊重するための対話の大切さ

女子はほとんどの子たちが、すぐに仲良しグループで行動します。その中でもこの二人は最強のコンビでした。私は対話の大切さをこの二人から学びました。

ひよりちゃんとさらちゃんは大の仲良しペア。二人とも自分の意志をしっかり持っており、ダイレクトに相手に伝えることができるタイプでした。それはある場面では周りから批判されることもありましたが、二人一緒だと中々のパワフルさで、グループリーダーも手強さを感じていたことと思います。二人はいつも一緒に居たかったようで、テントを2台くっつけて一緒に寝ていたのです。ところが、ワールドオリエンテーションになると、二人は別々のグループに割り振られてしまったのです。それでも毎晩一緒に寝ているから、大丈夫だろうとリーダーたちは思っていたようですが、4日目の朝のサークル対話でひよりちゃんが「さらちゃんと一緒のグループがいい!」と自分の願望としてはっきりと意見を述べたのです。

もしこれが学校だったら彼女はその願望を言えたのか?と、感じながらもグループリーダーがサークル対話で取り上げていたので、私はキッチンで食事の支度をしながら、耳だけダンボで聞いていました。ひよりちゃんの衝撃の「提案」は子どもたちに様々な波紋を投げかけたようです。
同じグループの、リーダー格の男の子は「今まで一緒にやっていたのに急にそんなこと言われたら困る!最後まで一緒にグループとしてやっていきたい」と言い。さらちゃんがいるグループの子どもたちは困惑した顔で黙り込んでいました。
イエナプランのサークル対話では、グループリーダーは自分の意見はなるべく差し控えることが求められます。何故なら、大人が意見を言ってしまうと、子どもたちは「自分で考えて、自分で選択するチカラ」をつけることができなくなってしまうからです。
この日は4日目のプログラム「脱プラショッピング&クッキング」の日。皆で車で出かける予定だったため、グループリーダーが子どもたち一人一人にどう思うか?を聞いて、結論としてひよりちゃんはさらちゃんのグループに入ることになったのです。
このことは、私自身後から大きな反省点となりました。その理由は後ほど書きたいと思います。
朝のサークル対話もそこそこに、子どもたちは「脱プラショッピング」に出かけていきました。

「脱プラショッピングとは?」

3日目に国連の「プラスチックの海」の動画を見た子どもたちは、プラスチックを捨てないと同時に、使わないということにも思い至ったようです。卵を買いに行ったグループは、スーパーでプラスチックのパックに入ったものではなく、養鶏場にボールを持参して、野生の?鶏にも遭遇しながら、脱プラショッピングを楽しんでいました。

養鶏場のおじさん曰く、脱走した鶏は卵だけ産みに鶏舎に帰ってくるから大丈夫!と言っていたとのことです。

野菜や果物は無人販売所に行きました。優しいかよこおばちゃんは季節外れのスイカを無料でサービスしてくれたとのこと。こんなやりとりも立つプラショッピングの楽しみの一つなのです。

スイカ割りをしたいからと買いに行ったら、「スイカはもう終わったよ」と言ってたのに、わざわざ子どもたちのために、畑から取ってきてくれたようです。こんな地域の人の優しさも子どもたちは感じることができたのではないかな?と思いました。

「脱プラクッキングとは?」

ショッピングでプラスチックを使っていない買い物をしてきたら、その材料を使って、子どもたちはメニューを考えて一緒にクッキングをします。
そしてプラを意識しないで作った前日の昼食と、脱プラをやって作った当日の昼食のゴミを比べてもらうというものです。

養鶏場の鶏が生んだ卵でクッキング
脱プラショッピングの材料で作ったのは「にらたま」冬瓜の煮物、かぼちゃの煮付け、そしてかぼちゃクッキーでした。

その結果ゴミの量はプラを意識した時と、そうでない時のゴミの量は3倍ぐらい違いました。捨てないこと、そしてなるべく買わないことで地球の未来は良くなるかも知れない。と思いました。


対話では結論を出さないことの大切さが問われるその理由とは

ひよりがさらちゃんのグループに行きたい!これを対話の時間に話し合った。そこで大人が結論を促してしまった。これはイエナプラン的にはやってはいけないことなのです。
何故なら、イエナプランの目的は「自分で考え自分の行動に責任を持つ社会人を育てることだから」なのです。そして学校はそれを練習する場所と捉えているからなのです。つまり、そのために子どもたちは自治を行い、時事をとりあげ、毎日「対話」により、自分の意見やほかの人の考えていることを知り、違う意見を尊重できることで「より良い社会の実現にむけて学ぶ場所」それが学校と捉えているからなのです。

クリティカル思想が苦手な日本人「NOはYESと同じ価値がある」

日本人が一番苦手なこと、それは、相手の意見に対して面と向かって「NO」と言えないことだと思います。本当は「違う」と持っていても本人に直接「それは違う」と言えないのです。なぜでしょう?今回、子どもたちが体験したサークル対話から、私はとても大切なことを学んだと思いました。子どもたちのチカラはものすごい可能性を秘めており、大人がその芽を摘んでしまっているのでは?と深く考えさせられたのです。
その理由とは?               続く


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