電動車いすに乗って生活する私が「一人暮らし」を見つけるまで

私は12月初旬に生まれて初めての一人暮らしを始めたばかりだ。電動車椅子で生活しているため、家事援助や身体介護など、ヘルパーさんを毎日夜に2時間頼みながら生活している。初めてに囲まれた暮らしはとても楽しい。当たり前だが、ヘルパーさんを頼んでいる時間帯以外はすべて一人の時間である。今まで実家や施設にいて、人と過ごしている状態が当たり前だった私にとってはそれだけでとても嬉しい。

でも、一人暮らしを始めて3日くらいで気づいたことがある。それは、生活の中でなにをするのか(なにをやらないかも含めて)決めるのも、自分を大切にするのも、自分しかいなくなったということだ。実家や施設にいるときは周りの大人が私の様子を見て、手伝ったりやっておいたりしてくれていた。けれども今はそれら全てを、自分で気づいて実行したり、ヘルパーさんに指示を出したりしなければならない。

コロナ禍で外出自粛やテレワークをする時間が増えたことも相まって、自分がなにを生活の中で大切にするのかを考える時間が多くなった。考えた結果、やめたことがある。それは”自分でできる限りのことをこなそうとすること“だ。

私が2時間の中でヘルパーさんに頼んでいることは、洗い物や洗濯・ゴミ出しなどの家事、夕食の準備(メニューや手順は私が指示する)、入浴時の湯船の出入りの介助などだ。
仕事から帰宅しヘルパーさんが来るまでの間でお風呂を沸かしておき、ヘルパーさんが来たら入浴中にやっておいてほしい家事や料理の指示を出し、湯船に入るのを手伝ってもらう。湯船から上がる時にお風呂場に呼び、手伝ってもらった後は一人で身体を洗ったりする。お風呂から上がったら、準備しておいてもらった夕食を食べ、洗い物をしてもらって終了だ。文章にすると忙しく感じるが、料理は電子レンジや調理家電を使って手順を極限まで簡略化していて、普段主婦として台所に立つ機会がある人も多い私のヘルパーさんたちは作業内容の実績を記入する際に「これを調理と記入していいんですか(笑)?」と言うこともあるくらいだ。火を使うと火加減の指示や見守りもしなければならず、そういう指示は難しいうえに時間もかかるが、レンジだとワット数と分数の指示だけで簡単に美味しいものができる。私が車椅子のまま台所に入れないこともあり、我が家にはコンロこそあるけれど鍋やフライパンはない。ヘルパーさんが帰った後はスマホをいじったり読書をしたりして一日が終わる。(大抵はスマホをいじるだけで時間を溶かし、後悔の念に駆られる)

実は一人暮らしを始めた12月当初は、ヘルパーさんを一日1時間しか頼んでいなかった。食事は冷凍食品とカット野菜で済ませて、洗い物や洗濯とゴミ出しだけをお願いし、入浴も1時間半から2時間かけて自分でしていた。自分でできることは自分でやりたいと思っていたし、人と接することは気を遣って疲れるからヘルパーさんがいる時間をできる限り少なくしたかった。でもヘルパーさんが帰った後一人で入浴をするのはとても疲れるし、実家や施設では一人でこなしていたものの、湯船の形が少し違ったため足を出すときにもし滑って怪我をしたらどうしよう、という不安もあった。その後なにかをする時間もなく急いで眠りにつく。夕食の栄養バランスだって決して良いとは言えなかった。こんな生活を続けていたらいつか体調を崩して一人で暮らせなくなるしせめて自炊をしたい。せっかく一人暮らしを始めたのに、必要最低限のことしかできなくなることに焦りも感じていた。ここまで考えてやっと、一人で全部をこなさずヘルパーさんと一緒に効率化を考えよう、と思うことができた。
ヘルパーさんの利用計画を一緒に作ってくれる相談員の方に相談し、身体介護の利用と土曜日の日用品買出しの移動支援(一緒に外出をしてもらう支援)を追加、自炊のために家事援助の時間を増やしてもらい、家事や身体介護でやってもらいたい部分を明確にした。そうして2時間の間にすべての家事や食事を終わらせ、寝るまでの時間を自由時間に充てることができるようになった。この原稿もその時間を使って書いている。

私は身体障害があり、手足がうまく動かず電動車椅子で生活している。障害のない人より一つ一つの作業に時間がかかってしまうが、残念ながら障害の有無にかかわらず1日は24時間だ。仕事にもいかなければならないし、一人ですべてのことをこなすのはとてもじゃないが難しい。そのために福祉制度でヘルパーさんをつけられるようになっているのだから、ヘルパーさんを使わずに身体や心に負担をかけて生きていくよりも、上手く使って自由時間や心のゆとりを持てるようになった方がずっといい。自分でできることは自分で、という心がけはとても大事だけれど、それだけでは日常生活をこなしていくことで精一杯になってしまう。私が私らしく暮らしていくために、時間のかかってしまう部分に助けを求めることは必要不可欠なことだ。
私は当初、ヘルパーさんに頼まずできるだけ自分で生活しようとしていた。その姿勢も間違いではない。でも、それをすることでなくなってしまう時間や体力、気力を考えた時、つまらないなと思ってしまった。確かに一人暮らしをする、という目標は達成できるかもしれない。でも、好きな本を読むことや書くこと、音楽を聴くこと、友人や彼氏と話す時間、好きなお菓子を頬張る時間。そういうものをなくしてまで暮らしていくのは耐えられないと思った。冒頭にも書いたけれど、自分を大切にするのも自分しかいないからだ。
これから先も、何かに迷ったときはどうやって生きていくの?自分が大切にしたいものは何?と自分に問いかけながら暮らしていきたい。

(読んでいただいた皆様へ)利用可能な福祉制度は障害の種類や程度によって異なるため、参考としてとらえていただければ幸いです。

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