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坂道とチャンス

メイクスクールでの悩み

日々  アルバイトの生活。学校も、毎回講師が変わる授業スタイル。
そそっかしい上に 不器用な手。
(こんなんで ヘアメイクになれるのか)
内心は不安を抱えながら 銀座や表参道にメイク道具を見に行ってみたり、ブライダルのショーを見に行ってみたり。
きっと何かに繋がると 相変わらず根拠のない自信から行動に移していました。どうやったらヘアメイクになれるのか。情報もなければ 伝手もなく、ひたすらに目の前の事が 何か形になるかもしれないと信じ続けていました。


上り坂と下り坂

不安な気持ちを抱えながらも 学校への上り道、何度となく吸い込まれそうになるファーストフード店。お腹を空かせながら通り過ぎ、ガマンすればブラシが1本買えると言い聞かせ 学校へ向かう急な坂道。
学校に着くなり『話があるので 帰りは待っていてください』と。
学費は納入したし…ワタシ何かしでかした???
その日の授業は 正直あまり覚えていない。
終わり次第 すぐに話を聞きに行くと
「本来なら 入学してこんなに早く外に出すことはないのでくれぐれも 他の生徒には内密にしてほしい。I先生から貴方にインターンに来てほしいと連絡があり まだ早すぎると伝えたけれど了承してくれなかったので、連絡だけでもして欲しい。とても厳しい先生なので覚悟するように」という内容でした。
産まれて初めて 高揚感というものを感じた瞬間でした。

渡されたメモを握りしめ 坂道を走る。下り坂だというのに笑
坂の途中にある公衆電話へ急ぐ。心臓が飛び出そうなくらいバクバクしている。ありったけのにコインをいれる。以前 受けた授業では少し厳しそうな印象のI先生。電話口では柔らかい印象でした。
『良かったらうちに来ない?』YES以外の返事は見当たらない。何より、現場が見れるチャンスを逃すわけにはいかない、と。

事務所の住所を聞き 事務所に行く日時を確認し、受話器を置いた
その瞬間 ふわりと美味しそうなにおいがした。振り返ったらファーストフードのお店だった。その日から 上り坂でガマンをするワタシは居なくなったのでした。


おさまらないワクワク

駅の改札口で 自然と足が止まる。
そういえば 事務所はまったく土地勘のない場所。方向音痴なうえに心配性。念の為 事務所の場所を確認しに向かうことにしました。
地下鉄の出口を出て 坂道を上ると、ひとつだけ灯りのついたガラス越しの部屋がありました。そこに I先生の姿が。浮かびあがるように見えた 凛とした女性がひとり。
この時の光景は未だに鮮明に覚えています。

見つかるのは恥ずかしいので、そっと 地下鉄の駅へ。
私の中にも小さな灯りが灯った瞬間でした。




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