東京ステーションギャラリー「佐伯祐三 自画像としての風景」

山種美術館の展示をきっかけに知った佐伯祐三の回顧展が始まりました。
開催初日に出向くとは相当気合の入ったファンのように思われるかもしれませんが、たまたまタイミングがあったから。流れと勢いに任せて、とも言います。

東京ステーションギャラリー、久しぶりです。最後に出かけたのがいつだか思い出せない。歴史を紐解けば、
*1988年誕生
*2006年一時休館
*2012年リニューアルオープン
とのことで生まれ変わってからは初めて訪れることになります。

ライトが映り込んじゃったの 後で気づいた…


スキャナ持っていたのを思い出しました

佐伯祐三が東京美術学校を卒業したのがちょうど100年前。学生時代の自画像から始まり、作風の変化や生涯の様子を追うことができます。お写真を見るとハンサムさん。顔の石膏像(ライフマスク)も展示されていましたが、やっぱり彫りの深いお顔立ちだった様子。学生のうちに恋愛結婚、自宅の改装に熱心になり5年で卒業と同時に、妻子を伴い渡仏する…となると恵まれた環境だったかと思いきや、父・弟・親戚を結核で相次いで亡くす経験も。

パリの街並みは「どこを切り取っても絵になるよ」という声が聞こえてきそう。
私だってあの街並みを見るとウキウキする。佐伯さんもきっと嬉しかったんだろうなぁと想像してみる。100年前のパリを一緒に旅行しているような気分になれます。中には同じテーマで描かれたものが2つ並べて展示されていたりして、何をどう変えたのか、比べてみるのも面白いところです。

一時帰国の東京で暮らしている間に描かれた、街並みの中の人はまだ和服。そんなにはっきりと描かれていないけど、シルエットでそれとなくわかる。山手線の陸橋は土を盛って草が生えているような風景。電信柱が立っているのも発展の象徴だったのだろうか。私が風景写真を撮る時は電柱が映り込まないようにするけど、佐伯さんの作品にはたくさんの電柱が描かれている。大きな船の絵も帆の柱が空へ伸びている。

レンガの描き方が、ある絵は普通に描かれていて、別の絵は油絵の具を塗った上から引っ掻いて傷つけるように描かれていたりする。古い建物の壁の黒ずんだような質感も上手に表現している。こんなに短い生涯で、たった数年の間にこんなにたくさん描くとは、なんと密度が濃いことか。

ほとんどが風景画だけど、人物画や静物画も出ていました。静物画の「薔薇」は素敵だったし、「蟹」のエピソードが面白い。記憶が正しければ、「活きが悪いからと捨てられてしまった蟹を拾い上げて、30分で描いたのちに、一人でペロリと平げた」といった内容で、思わず一人でクスリと笑いました。

作品を所蔵している美術館は、ほとんど大阪中之島美術館なのですが、その他にも各地幅広い美術館に所蔵されているので、作品が愛されて、親しまれていることも伝わってきました。

100年前に疾風の如く駆け抜けた一人の画家。ドラマや映画になりそうなものですが、海外ロケを伴う制作は状況や予算が許さないかもしれませんね。

展示室内は撮影禁止 階段ならいいかな 建物も美術品



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