褒めることの功罪
私はブログやセミナーで「人を育てるためには褒めることが大事」と言い続けてきました。しかし、今となってはそれは違った、とも思うようになりました。
残念ですが、褒めることには大きなデメリットも存在します。これは褒めることの効果が大きいから故ではあります。効果の強い薬には副作用があるようなものですね。
一番危ないのは「褒めるために行動する」人を作ってしまうことです。
褒めることはモチベーションにつながります。褒めることで勉強なり仕事なりをさせることはできるのですが、いつまでも「ほめ」を使い続けては効果が薄くなります。
さらに、上手に使わないと相手(だいたいは子ども)は常に褒めを求めるようになります。褒められなければ勉強しない、仕事をしない。
加えて、ひどくなると相手の承認欲求を強くし、「褒めなしでは何もしない」「褒めてくれない人を敵視する」という行動に陥りがち。
さらに、褒められて優越感を抱くことで、勉強ができるようになってきたら「できない奴はダメ」なんて言い出すようにもなる。
褒めることを上手に使いこなせず、「とりあえず褒める」はこのように危険を孕んでいるのです。そのことをよく考えずに、「もっと褒めるべきですよ〜」なんて言っていたことを、とても反省しています。
勉強は自分のためにするものなのに、ほめてばかりいたら、ほめられることばかり期待していたら、それは他人のために勉強しているだけ。
特に勉強は承認欲求を刺激されるイベントが多いですよね。数値で自分を評価されるから自分がどの位置にいるかがよくわかるし、誰に勝っているかもわかる。人との比較が容易だから、人と比べて「自分はすごいんだ」という自意識をすくすくと育てることになります。
褒める側の大人として、人の良いところを見つけようとすること、そしてそれを伝えようとすること、そのマインドは大切なことです。ですが、育てる人の責任として、他人との比較褒めで優越感を煽りすぎないように、褒められることだけがモチベーションにならないように、いつか「褒められる」ことから自立させられるようにしてあげないといけないのです。
それができないのであれば、安易に「ほめる」ことをしてはいけない。勉強だけでなく精神的にも美しい人を育てたいと思うのであれば、私たちも学び続けないといけないのですね。
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