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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ダレンシャンの話(ネタバレあり)

前振り
 小学生のころ、同じグループに所属していた子がダレンシャンを読んでいた。
 それを見て私は「どうして作者の名前とタイトルが同じなのか」と聞いた。
 すると彼女は
「実話だから」
 と答えた。
 私はあらすじだけ少し読ませてもらったが“主人公がバンパイアの蜘蛛を盗む”という部分で「いや、絶対嘘じゃん」と言った。バンパイアなんて存在しないのだから、と。
 彼女は「うるさい」とだけ言ってそれ以降、ダレンシャンの話をすることはなかった。

ハリーポッターと出会う
 それから数年後、バイト先でハリーポッター大好きなパートのおばさんと会った。
 当時の私は映画が好きだったもののハリーポッターはテレビで見る程度でちゃんと見たことはなかった。と言う話をすると、おばさんはハリーポッターのDVD全巻を貸してくれた。
 全部見た後、面白過ぎるという感想をおばさんにすると、原作も貸してくれたが、なかなか読めなかった。それでも映画では描かれなかった部分や伏線がうますぎて読み終わった後に呆然としてしまった。特にアズカバンの囚人はよく出来ていると思った。伏線がうますぎる。映画では描かれていなかったが、地図があそこに繋がるとは思わなかった。
 しかし本を読み慣れていなかったので、アズカバンの囚人を読み切るのに一年を費やしていた。
 じゃあ、アズカバンの次…となっても炎のゴブレットは上下巻なのだ。無理だろ。こんな分厚い本2冊も読むの。無理。と断念してしまった。
 絶対面白いのは分かっているが、ハリーポッターは分厚すぎる。その分読み応えはあるし感動する。しかし本を読み慣れていないので全然読み進められない。でも借り物なので早く読まないといけない……返すのはいつでもいいとは言ってくれるものの……結構しんどかった。

派閥を知り映画を見る
 その数年後、ネットで「ハリーポッター派かダレンシャン派か」というまとめサイトを見た。Twitterだったかもしれない。忘れたが、とにかく児童書には派閥があるのを知った。
 確かに学校の図書館にはハリーポッターもダレンシャンもあった。たぶんデルトラクエストもあったと思う。
 ダレンシャンってどんなものなんだろうか、と調べてみると映画化していたので、DVDをレンタルして兄弟と見た(当時は本よりも映画の方が好きだった)。
 兄弟が何度か「このシーン見たことある!」「この映画知っている!」と懐かしそうに言っていたのが印象的だった。
(余談だが数年後に兄弟にダレンシャンの話を振っても覚えていなくてあらすじを言っても理解されなかったから予告の動画を見せたらようやく「あー! あのサーカスの」と思い出させることができた。いまだにダレンシャンの話をする時に映画の予告を見て思い出させてる。YouTubeから予告動画が消えたら兄弟はダレンシャンを思い出すことはもうないかもしれない)
 ここからどうなるんだろうと思ったけど続編は作られなかったらしい。しかもどうやら映画は評判が悪かったと言うことを知った。
 映画の感想としてはフリークショーを映像化するの凄い挑戦的だな……昔だからできたことなんだろうな……と思った記憶がある(しかしこの数年後グレイテストショーマンが出てくるのである)。

とあるキャラとの出会い
(ネタバレあり)

 映画を見た数年後、私はどうしても読みたい本があったがどの本屋にもネットにもなく調べると最寄りの図書館に置いてあったので借りることにした。
 図書カードを初めて作った。これを利用する手はないといろんな本を読もうと思った。映画館も値上がりしているし。
 しかし相変わらず本を読むことに慣れていなかったので初めに児童書から読んでいた。これがダレンシャン、ではなくグレッグのダメ日記である。
 ダメ日記は今人気な児童書らしく、確かに面白かったが、いかんせん人気なためよく借りられている。競争率が高いのだ。
 他に何か、と調べてみるとここでようやくダレンシャンが出てくる。
 私は小学生の頃にダレンシャンを読んでいた人がいたことを思い出した(その子とはもう連絡をとっていないけど今めちゃくちゃ連絡取りたい)。
 ダレンシャンについて詳しく調べてみると
「ダレンシャンに登場するキャラクターが主人公に対する愛憎が物凄い」と言う。
「主人公のことしか頭にない」「悪質なストーカー」「作中随一のヤンデレ」とまで書かれていた(pixiv百科より)。
 こいつあやべえぞ。読んで確かめるしかねえな。とヤンデレ好きな私はダレンシャンに手を出したのだった。

ダレンシャンとの出会い
 児童書であり、昔よりも多少本を読むことが増えていたので3時間ほどで全て読み終えた。確実にグレッグのおかげである。
 感想としては正直つまらねえ。
 でも1巻なので序盤も序盤である。まだ前振りの説明なのだ。まだまだこれから11冊読まないといけない。しかし主人公であるダレンがどうしようもないクソガキで感情移入ができない。対象年齢に合わせているのか?
 ダレンシャンは全12巻である。12巻も出ていると言うことは面白いのだ。しかも外伝まである。スピンオフの前史まである。
 何よりもハリーポッター派かダレンシャン派か、なんて言われるほど人気なのだ。

 ここから面白くなるに違いねえんだ。

 信じてるぞ。

 絶対面白くなるって信じてるぞ。

 信じてるぞ!!

 そう思いながら10巻まで読んだ。
 全然面白くないのである。主要キャラが死んだけど作中で誰かは死ぬ一人しか生き残らないって言われていたので特に衝撃はなかった(ダレンシャンって作者名はダレンが生き残るからかーと思ってた)
 これは別に読む前にネタバレを見たからではない。5巻を読む頃にはpixiv百科のネタバレ項目を読んだことをすっかり忘れていた。元々読むのが遅いうえに、つまらなく感じながら読んでいるのでなかなかページがめくれず読むのにすごく時間がかかった。その間に忘れた。
 忘れていたので新鮮に楽しめた。あースティーブやっぱ出てくるんだ、バンパイアハンターになったと思ったのに味方してくれるんだ、とか思ってた。
 兄弟がダレンシャンの映画を見たことを毎回忘れているように自分もダレンシャンの情報を忘れていたのだ。

 自分にはこの小説は合わねえ。もはや意地だった。気合いで読んでいた。友達に愚痴をこぼしまくっていた。もう読むのやめろ、とまで言われたが読み続けた。
 面白くなるはずなんだ。12巻も出ているんだから。前史入れたら16巻、外伝含めて17巻(18巻?)だぞ。ハリーポッターは全7巻11冊。ダレンシャンの方が出ているんだぞ……。
閑話休題
 そもそも前提として自分はファンタジーが苦手だった。
 それがハリーポッターで覆った。なろうアニメも見るようになった。
 昔は理解できなかった用語や設定(魔法魔力魔素? とかゴブリン、オーク、ピクシー等の魔物の名称etc…)が理解できるようになった。
 しかしそれは魔法の世界の話だ。ダレンシャンはバンパイアの話なのだ。
 と、ここまで書いて思ったけどダレンシャンって実話を元にしてるからもしかしてファンタジー枠ではないのか?

ダレンシャンの話
 掟を重んじるバンパイア。血はたまに飲めばいい。バンパイアになるためには指先に傷をつけて合わせたら良い。日に当たってもすぐには死なない。心臓に杭を刺されたら人間でもバンパイアでも死ぬ。敵対組織としてバンパニーズというものがある。
 ダレンシャン独自の設定である。よくあるバンパイアの設定(首を噛む、コウモリになれる、流れる水を渡れない、十字架やニンニクに弱い)はでまかせである。
 オリジナリティが強い。そこがダレンシャンの面白いところである。面白いところなのだが、面白くない。
 先は読めないしどんでん返しも多いのにどうしても強引な部分やミスタータイニー(神様的なキャラ)に頼っている部分が多いように思う。
 あとなんとなくダラダラしている気がする。
 いや、面白い部分もあるのだ。
 好きなシーンとしては、ダレンがR.V.にヤギを投げつけるシーンとか、スティーブと再開して秘密基地に案内された時にあまりの汚さに嫌味を吐き捨てるダレンとか、警察に捕まって校長(理事長だったか?)に嫌味を言うダレンとか、気づけばダレンのクソガキムーブが好きになっていた。
 これ絶対面白くなるんだよな? と疑いながら10巻読んできてダレンの口汚さがクセになってきた。
 児童書の主人公が作中で1番口汚いのって大丈夫なの?

問題のシーン(未読の人は読んでから読んでほしい)
 そして11巻を読んだ時私の意見は覆った。ハリーポッターでファンタジーは面白いと思ったように、ダレンシャンは面白いと思った。
 そのシーンはスティーブがダレンの友人の子供を殺すシーンである。
 何そのシーン。児童書だぞ。

 11巻の終盤。ダレンの友人の子供がスティーブに人質に取られたが、代わりにスティーブの子供も交渉するためにダレンに拘束されていた場面である。
ダレン「友達の子供を解放しなければお前の子供を殺す」
 ということである。
 しかしダレンはスティーブを見誤っていたのだ。それは読者も同じだったはずだ。
 ここに来るまでに散々友人の子供との触れ合いが書かれていて怪しいなこの子供なんかあるのかな、とは思ったが人質に取られるだけで死ぬとは思っていなかった。
 スティーブを舐めていた。こいつはダレンを苦しませるためなら子供を殺す。例え自分の子供が人質に取られていようと同じである。
 それどころか子供を殺す前に彼は
「子供の頃一緒にした相手の真似をする遊びをしよう」
 と言った。
 つまりダレンに自分の子供を殺させようとしていたのだ。

 やばい。
 こいつはやばい。
 そしてその場にいる誰よりもダレンがスティーブのことをよく理解している描写があるのが1番やばい。
 スティーブの周りにはスティーブの仲間がいたが、誰も彼の行動を理解できずにひいているだけだった。
 スティーブ自身すら子供を殺した自分が理解できないような反応があったにも関わらず、ダレンは『スティーブは自分にも同じように悪に手を染めてほしいのだ』と理解していたし、一緒に落ちようとすらしていた。

 たまらねえ〜!!

 これだよこれ!!これを待っていたんだよ!!
 12巻の最後(というか中盤か?)に泣き言を言うスティーブ、真実を知って意気消沈するスティーブ、ダレンの嘘に騙され最後までダレンへの恨みを募らせて死ぬスティーブ、たまらねえ。これだよこれ。自分はP5では明智吾郎が好きなんだよ。
 『こいつの人生とはなんだったのか?』
 と問いたくなるようなキャラクター。たまらねえ。好きだ。
 唯一信じていた大親友のダレンに裏切られた(と洗脳された)挙句に大親友に対する憎悪も植え付けられ、ダレンのために生きてダレンのために死ぬ。母親からの愛は受け取れず、求めていた父親には絶対に愛されない。
 スティーブの人生はなんだったのか。

 か、かわいそう……好きだ……。
 こんな可哀想なキャラ見たことない。えげつない。可哀想。好き。
 12巻の最後、仮に一巡した世界とでも言うのか、ダレンが変えた世界ではなんとかなったかもしれないが、その前の子供を殺したスティーブはずっと闇の中なのだ。これからもずっと。

結果
 ダレンシャン、めちゃくちゃおもしろい。
 12巻まで読んでくれ。私を信じてくれ。なんたって12巻も出ているんだぞ。おもしろくなきゃ12巻も出ないよ。信じてくれ。
 ダレンをバンパイアにしたバンパイアの過去の話、クレプスリー伝説も4巻出ているぞ。
 こっちは最初から最後まで面白かった。ダレンシャンの悪かった点が改善されていて最初からフルスロットルで子供が死ぬとんでもない児童書だ。
 でもその前に出ているデモナータという本は序盤で家族が惨殺されて主人公が精神病院に拘束される。最初からクライマックスってやつだ。

本について
 ダレンシャン8巻を読んでいる頃、友人に散々面白くないと愚痴った後に
「これ読み終わったら同じ作者の別の作品読む」
 と言ったら
 「狂ってる」「もっと面白い本読みなよ」
 と言われたのもいい思い出だ。
 ちなみにこのダレンシャンは図書館で借りて読んだものなので、改めて本を買うかどうか迷っている。
 でも部屋にダレンシャンだけがあるのってどうなんだ? ハリーポッターとかホビットとか置いてある部屋にダレンシャンがあるなら違和感はないが、ダレンシャンしか置いてなかったらおかしくないか? という偏見が拭えずにいる。助けてくれ。
 それなのにダレンシャンの英語版が安売りしてたから買ってしまった。実は作者のサイトに住所が書いてありファンレター書きたいな、と思い最近英語を改めて勉強し始めた。なのでいつか英語版も読めるようになるのでは……と、希望を込めて購入に至った。
 あと作者の本はダレンシャン前史のクレプスリー伝説以降の作品は日本語翻訳されていない。ゾンBやファザーなど面白そうな小説があるにも関わらず翻訳されていないどころか、ゾンB以降、というよりも児童書以外の本(the CITY除く)はダレンシャン名義ではなくダレンダッシュとして自費出版している(出版社に断られたらしい?)。
 ダレンシャン前史が面白かったのだからそれ以降の本なんて面白いに決まってるのに、英語ができなければ彼の本は読めないのだ。ふざけんじゃねえぞ。絶対読んでやるからな。

本屋の指標
 本屋さんでダレンシャンを探してしまう。
 今(2024年)の児童書はおしり探偵、銭天堂、5分後に意外な結末、の三強だと思う。絶対にこれらの本は置いてあるのだ。あとグレッグのダメ日記。
 そこにハリーポッターが置いてあるとそこそこ本が揃った本屋だと思う。そのうえダレンシャンまで置いてあったらこの世の全ての本がここにある、とすら思う。
 ブックオフに行ってもダレンシャンを確認してしまう。ダレンシャンが置いてあるとなんでも置いてあるな……としみじみしてしまう。デモナータなんてあった日にはもうここがラフテル。
 ダレンシャンを指標に本屋の品揃えの良さを見ている。
 助けてくれ。ダレンシャン(作者)のXも見初めている。デモナータ映像化に心躍り、エイプリルフールの嘘で泣いた。
 毎日Xで「ダレンシャン」を検索していたらあるとき急にトレンド入りして追うのが大変だった。
 漫画も読み、作画担当してた新井隆広が描いてるARAGO、ゼロの日常を最近読んでる。コナンは読んでないのに。テノゲカは医療漫画は痛そう過ぎてゾワゾワするからたまにしか読めない。

助けてくれ
 ダレンシャンにハマってもダレンシャンの話をできる友人がいないのだ。愚痴を聞いてくれてもダレンシャンの話はできないのだ。
 小学生の頃のあの子よ、君はどうやってこの気持ちを処理していたのだ。
 かと言ってあの子と連絡が取れるようになり「ダレンシャンが!」と言ったところで同じ熱量では語れないのだ。

愛とはなんなのか(ここからダレンシャンの批判が多い)
 最後にダレンシャンの話をする上で言いたいことがある。私はダレンシャンをはじめはつまらないものだと思っていたということだ。実際つまらなかったから。
 世間で評価されているものは面白いはずだという信条に則ってようやく得られた面白さなのだ。
 つまらないんだ、ダレンシャンは、本当につまらない。主人公はクソガキで主人公と一緒に旅をするバンパイアは主人公をバンパイアにした理由は不明とか抜かすし、何よりもキャラの行動が行き当たりばったりに見えてその埋め合わせもチグハグ。突然異世界に行くしグロが書きたいだけだろと思う。そして何よりもだいたいミスタータイニーのせいなのがモヤモヤする。ミスタータイニーだから仕方ないな、みたいな。
 ダレンシャンの話をしたら7割は悪口が出てくるのではないかと思う。人にダレンシャンを勧められないが、1巻読んだなら11巻まで読んでほしいとも思う。
 でも正直ダレンシャン読むならハリーポッター読んだ方がいいと思う。ハリーポッター面白いから。100%面白い。
 矛盾しまくり。助けてくれ。この気持ちをうまく消化できない。
 ダレンシャンの考察や感想や妄言を垂れ流す反面ダレンシャンなんてつまらねえと蔑む。助けてくれ。この矛盾した気持ちってなんか名前とかある? 逆張り?

 友人にダレンシャンの話をしまくっていたら友人が「noteに書いてみたら?」と言っていたので今こうして書いている。その友人はダレンシャンの1巻を読んでくれたらしいが、面白かったらしい(????)。

 正直この投稿ももうちょっとうまく書きたかった。
 ダレンシャンに対する気持ちを。
 ダレンシャンは面白いのだと言う感想を。
 でも自分はダレンシャンをつまらないとも思っていると言う気持ちを。
 うまく書けない。
 読書感想文は苦手なのだ。
 でもまた気持ちがまとまったら書いてみようと思う。

最後に
 ダレンシャン読むならせめて12巻まで読んでくれ。