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低用量ナルトレキソン療法(LDN)について

今日は朝から日差しが強く、暑くなりそうです。
地震に続いて、物騒な事件が複数報道されております。
気を付けましょう(どうやって?)。

先日Yahoo Newsに以下の記事がのっていました。
(元ネタはNational Geographicのようですが)
コロナ後遺症の改善に依存症薬ナルトレキソンが注目浴びる、生き返ったよう」と話す患者も
5/25(木)配信.
いつもながら、やや題名が誇張されたものになってる気がしますが。


イ〇ルメクチンやア〇ガンの件もありますし。
飛びつくのはいかがなものかと思いますが、
もともと、アルコール依存症や癌に対して自由診療(未承認)で扱っているところもあるようでして、ネット広告も増えるのかなあ。


ちなみにナルトレキソンのアルコール依存症に対しての効果は、
偽薬とあまり変わらない程度だったようです。
Naltrexone in the Treatment of Alcohol Dependence.
N Engl J Med 2001; 345:1734-1739.



元ネタとなる論文は以下のものです。
Safety and efficacy of low dose naltrexone in a long covid cohort; an interventional pre-post study.
Brain Behav Immun Health. 2022 Oct;24

Open Access(誰でもネットで読める)で、
載せてもらうのに2500ドル(35万円位)かかるみたいです。

背景
SARS-CoV-2感染後、最大37.7%の患者が12週間を超える症状を経験している。これまで、長期罹患者に対するケアは、集学的リハビリテーション、セルフケア、セルフペーシングが中心であった。薬物療法が有効であることは示されていない。

セルフペーシングは、症状が悪化しないように、自分で活動量を調整したり、休憩をこまめに取ったり調整することみたいなものでしょうか。


方法
この単一センターの介入型事前事後研究では、低用量ナルトレキソン(LDN)の安全性を、SARS-CoV-2の初感染から12週間以上経過しても症状が継続し、症状の説明がつかない患者としてNICEで定義されているCOVID-19後症候群(PCS)の患者で検討した。患者は、COVID後のクリニックで募集され、ベースラインのQOLアンケートを左右対称のリッカート形式で行い、LDNを2ヶ月分(1ヶ月目は1mg、2ヶ月目は2mg)処方され、2ヶ月目の終わりに同じアンケートを繰り返しました。患者には有害事象の監視を行った。

これだと、比較群(プラセボ:偽薬など)がないです。
ちなみにナルトレキソンは50mgを使用するので1mgだとかなり少ないです。

結果
合計52名の患者が参加し、そのうち40名(76.9%)が女性であった。年齢中央値は43.5歳(IQR 33.2-49)であった。職業別では医療従事者が最も多く、16名(34.8%)であった。COVID-19の診断から登録までの期間の中央値は333日(IQR 171-396.5)であった。38名(73.1%)がLDNを開始することが分かっており、そのうち2名(5.3%)が開始後に新たに発症した下痢のためLDNの服用を中止した。2ヶ月間の投与期間終了後、合計36名(69.2%)の参加者がアンケートに回答した。COVID-19の回復、日常生活動作の制限、エネルギーレベル、痛みのレベル、集中力のレベル、睡眠障害の7項目のうち6項目で改善が見られたが、気分の改善は有意ではなかった(p = 0.054)。

女性、医療従事者が多いようで、参加者に偏りがあります。
その上52人中36人の回答で有効であったとされていますが、
残りの16名の回答があれば容易に結果は変わるかと思われます。


結論
LDNはPCS患者において安全であり、このコホートでは幸福感を改善し、症状を軽減する可能性がある。このことをさらに検討するために、ランダム化比較試験が必要である。


はい、その通り。ランダム化比較試験必要です。

「使った。治った。だから効いたのだ」
という論法を「3た論法」と言います。

コロナ以前では、あまり見かけなくなったのですが、
コロナが流行ってからどうもおかしくなった気がします。


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