やせ薬(GLP1受容体作動薬)と自殺念慮

今朝は、曇りかつ小雨で、猛暑にも一息つけました。
芸能人の訃報もあり、
ちょっと今日の話題変えようか迷いましたが、
そのまま投稿させてもらいました。

「ヒポクラテスの誓い」というのがありまして、抜粋しますと・・・
・自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、
 害と知る治療法を決して選択しない。
依頼されても人を殺すを与えない。
同様に婦人を流産させる道具を与えない。
(その他、師匠と弟子には教えるけど、その他の奴には教えないとか、狭量なのも含まれますけど。)

医学生だった時に、講義中に某泌尿器科の教授が「お前ら、アルキメデスの誓い知ってるか。馬鹿だから知らないだろう」っていわれて、教室がざわついたのが未だにインパクトあって覚えてます(エウレカ?)。

患者さんに害がある(かもしれない)ことはしない」ということです。


ちょっと前の職場で、中堅くらいのDrが「新薬はどんな副作用があるかわからないので飛びつかない」といっていたのを聞いて、しっかりしてるなあと感心した記憶があります。
そんな彼も、コロナワクチンバイトは「おいしいです」って、やってたのでずっこけました。


「死ぬかもしれないから、どんな副作用があるかわからないけど(効果あるかもわからない)新薬を使うべきだ」という理屈には、(時と場合によるんでしょうけど)賛成しがたいと思っております。
手間と時間とお金がかかる「治験」や、市販後調査が重要です。

前振りが長くなってしまったのですが、
Forbesから、
Can Ozempic Cause Suicidal Thoughts? Here's What The Research Says.
Jul 11, 2023.

オゼンピック、ウェゴビー、サクセンダなどのGLP-1糖尿病・体重減少薬が、自殺念慮を引き起こしたとして欧州連合(EU)の調査を受けている。製薬メーカーのノボ・ノルディスク社は自殺と同社製薬との関連を否定しているが、いくつかの研究や症例報告は、関連性の可能性を示唆している。
サクセンダの第3相臨床試験によると、自殺念慮はこの薬の最も重篤な副作用の一つであり、他の重篤な副作用には腎障害、膵炎、胆嚢疾患が含まれる。
米国では、サクセンダの処方情報において、自殺念慮や抑うつ状態について患者を監視し、症状が現れた場合には使用を中止することが推奨されている。
オゼンピックの処方情報にはこのような推奨はないが、ウェゴビーの処方情報にはある。
製薬会社のノボ・ノルディスク社はCNBCの取材に対し、自社の薬が自殺念慮を引き起こしたという主張を否定し、臨床試験や事後調査のデータからは、セマグルチド(オゼンピックとウェゴビーの一般名)およびリラグルチド(サクセンダの一般名)と "自殺念慮や自傷念慮 "との関連性は示されていないと述べた。

セマグルチドとリラグルチドを含むGLP-1薬
(日本でもウェゴビーが最近認可されましたね)で、
自殺念慮の関連性が指摘されたそうです。
メーカーは当然否定しております。

欧州医薬品庁は、オゼンピックとサクセンダを服用している複数の患者が自傷行為を考えたと報告したことを受け、ノボ ノルディスク社を調査している。欧州医薬品庁は、セマグルチドとリラグルチドを含むGLP-1薬の潜在的な精神衛生上の副作用を調査する。火曜日、EMAはこの調査をウェゴビーのような他のGLP-1受容体作動薬にも拡大すると発表した。EMAは、自殺念慮や自傷行為の可能性があるという150件の報告を検討している。調査は11月に終了する予定である。ノボ・ノルディスク社はCNBCに対し、「患者の安全が最優先事項である」と述べ、自殺念慮と同社医薬品との関連を否定した。

欧州医薬品庁主導で調査中です。


主な背景
ノボ ノルディスク社が製造するオゼンピックとウェゴビーは、ともに2型糖尿病患者の血糖値を調節するために使用される週1回投与の注射薬である。ウェゴビーだけが減量を目的としてFDAに承認されているが、オゼンピックを体重管理のために適応外で処方する医師もいる。サクセンダは、ノボ・ノルディスク社によって製造され、減量のために承認された1日1回投与の注射薬である。この3つの薬の主な副作用は胃腸障害であるが、これらの薬を服用中の患者から自殺念慮が報告された例がいくつかある。食品医薬品局の有害事象報告システム(Adverse Event Reporting System Public Dashboard)によると、2018年以降、セマグルチドを服用中の患者から自殺念慮が報告された症例は60件、自殺未遂は7件あった。リラグルチドを服用中の患者からは、2010年以降、自殺念慮が71例、自殺企図が28例報告されている。Drug Design, Development and Therapy誌に発表された研究では、研究者らは自殺企図または自殺念慮の既往歴のある患者にセマグルチドを処方しないよう警告している。

イーロンマスクやチェルシーハンドラーが使用していることで、
話題になって、アメリカでは大人気のようで、
出荷調整になったこともあるようです。

Wegovy Shortage: Drug Maker Limits Distribution—Here’s When Supplies Should Improve. Forbes. May 5, 2023.

ハッシュタグ#wegovyが3億6,530万回、#ozempicが9億2,240万回、#semaglutideが2億1,940万回閲覧されている。
ハーバード公衆衛生大学院によると、体重過多または肥満のアメリカ人の数は69.9%である。

ちなみに、中止すると徐々に体重は戻ってしまうようです。

中止時の有効性
New England Journal of Medicine誌の研究によると、セマグルチドを68週間服用した患者の体重変化は平均14.9%であったのに対し、プラセボ群では2.4%であった。しかし、GLP-1作動薬の服用を中止すると、体重は元に戻ることが研究で示されている。別の研究では、セマグルチドの服用を中止した患者は120週目までに11.6%体重が戻った。別の報告では、セマグルチドの服用を中止してから1年後に体重の3分の2が戻っている。

臨床試験では除外基準というものが通常設けられます。
メーカーは「臨床試験で問題ない」と言ってますが、
当然、臨床試験では、うつ病などの精神疾患のある方は除外されており、
市販後の実臨床とは少々ちがいます。

セマグルチドとリラグルチドの臨床試験において、自殺企図の既往歴、スクリーニングから30日以内の自殺行動、スクリーニングから2年以内のうつ病の既往歴、統合失調症や双極性障害などの重篤な精神疾患の診断歴がある患者は試験から除外された。

やせ薬として使用される前、もともと糖尿病薬として使われていました。
その時でも、自殺未遂に関する報告(日本人が初症例)あったようです。

Diabetes Research and Clinical Practice誌に発表された研究によると、GLP-1受容体作動薬を使用した自殺未遂が数例あり、リラグルチドを使用して自殺を図った33歳の日本人女性が最初のケースである。Diabetes Care誌に発表された臨床試験では、同じくGLP-1受容体作動薬であるエキセナチドも自殺に関連していた。

ネットで検索すると、
やせ薬として宣伝しているサイト(病院)がいっぱいあります。
うつ病の方も、薬が欲しくて病歴を隠して処方希望されるケースも多いのではないでしょうか?

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