玉入れのキセキ
小学校の運動会。
ウチの子どもの運動会を観戦してきた。観戦という言葉を用いたものの、私自身はあんまり気合いを入れずにゆるーい気持ちで観に行った。そしたら思わず観戦モードに引き込まれて感動するシーンに出会うということになったので観戦としてみた。意外だった。
ウチの子どもが小学校1年生、2年生の頃は基本子ども中心。
我が子の成長に感動するというのがまぁ当たり前といえば当たり前なんだけど、やっぱり私もそこに感動していた。
徒競走でゴールまで走り切るだけで感動したし、玉入れで必死になって玉をかごに入れる姿に感動をしていた。
そんな訳で今年も当然ウチの子ども中心に見た訳だが、今年は少し心持ちにも余裕が出てきたのか、なんとなく運動会全体を楽しむ感じで見ていた。
そこで気になったのが赤・白の総合得点だ。
正直、どのような点数システムになっているのかが分からない。それでも点数が多い方が勝ち、少ない方が負けというとってもシンプルな部分は分かる。
去年まで「ウチの子ども」のことしか気にしてなかったから、どっちが勝とうか負けようが全く気にしてなかった。
しかし、どうもウチの子どもの様子を見ていると、すっかりこの色組意識に染まっていて、「絶対に勝つ!」と意気込んでいた。そしてウチの子どもだけでなく、学校全体が運動会における「赤組優勝」「白組優勝」にかける思いが湧き起こっていたことに気がつく。
(ああー、先生や運営側のムード作りが上手いなあ)
なんて感心した。
全くの部外者である私からみると、運動会なんてゲームと一緒でそこに勝ったから負けたからといって何かが自分に影響がある訳ではない。それでもそこに意味を持たすことに成功しているんだから、すごいなぁと思った。
てか、そんなに勝ちにこだわる性格だったかな?と普段はあんまり勝負事をどちらかというと拘らないタイプなのに、運動会になったらものすごく勝ちにこだわりを見せていた。ここからも雰囲気作りが学校内で上手くいっているのを強く感じた。
そういった雰囲気に私ものまれた今回の運動会。当然ながら、自分も会場に入ったら赤が勝つのか白が勝つのかというモードに染まった、という訳である。
午前の部では白組が優勢で昼休憩に入る。ウチの子どもは赤組なので午後は赤組は追い上げる形になるなという心境だ。
そして、午後1番に迎えた競技は小学1年生の玉入れだった。
小学1年生の玉入れといえば、
「ああ、かわいいねぇ」
と微笑ましくみる競技だったはず。しかし自分が勝負モードになっていると勝ち負けがかかっている大事な一戦として捉える。見方がガラリと変わった。
(赤組勝ってくれー、がんばれー!)
という思いで見つめていたら、選手である生徒たちはそれ以上に勝ちへのこだわりに湧き立っていた。
1年生の玉入れ競技を中心にそれを囲む上級生が必死に応援をする姿が身に飛び込んできた。
「フレー、フレー、あーかーぐーみ!」「あと少しだよー、がんばれー」「いいよー、たくさん入ってるよー」
飛び交う声援。まさに会場は応援の渦が巻き起こっていた。
ピー、と笛の合図で玉入れが終わり、かごに入った玉の数を数える時がきた。歓声が湧き起こっていた会場か一瞬にして静まり返る。そしてカウントがはじまった。
「いーち、にー、さーん…」
と数える声にも
(どうか赤組が勝ってくれー)
という思いが詰まっていた。
「20、21、22…」
と続く。まだカゴの中にはお互い玉が残っている。まだまだ勝負はここからだ。
「30、31、32…」
まだまだ、お互いいい勝負だなぁ。
「40、41、42…」
まだあるかな、ここら辺で不安もよぎる。どうか残っていてくれ!という思いが込み上がってくる。
「49、50…」
と50に差し掛かったところで、白組の玉を数えていた人が両手を上げる。
その瞬間、
「おおー!!!」
という歓声が赤組から一気にあがる!
「51、52、53!」
とそこからはもう急テンポで玉を数え、数え終わった後勝利を讃える拍手が喝采した。
この拍手の中、なんでだろうか私は泣きそうなくらい感動をしてしまった。
他の競技も終わり、結果今年は白組の勝ち越しで幕を閉じた。白組の圧勝だった。
大会の終わり、お偉いさんの挨拶でしめくくる。子どもにとってはちょっとしんどい時間となる。
「えー、今日は皆さんお疲れ様でした。」
と定型から入り、定型の挨拶が続くと思っていた時にこんな言葉が聞こえてきた。
「今日は本当に皆さんから感動をもらいました。プロのサッカー選手とかの試合、これはお金を払って観るものですが、そういったプロの試合よりも今日の運動会の方がよっぽど価値があるんじゃないかなと思いました。」
あー、私もそんな感想だったなあと、ふとそのお偉いさんの挨拶に共感を得てしまった。
今までは我が子のことだけしか見ていなかった運動会。今年は少し引いた目で見てみたら、そこには勝ちにこだわることで学年を超えた一体感が生まれており、劣勢で迎えた赤組が1年生の玉入れでの勝ちに湧いたあの歓声には感動させられた。
結果、赤組は負けることになってしまったが、あの時のチームの一体感や応援にこもった熱い思いはなかなか体験できない貴重な経験だったなぁと思う。
スポーツ観戦なんて全く興味のない私でしたが、ふと小学校の運動会でちょっとした感動をさせてもらったことは意外で、ああーいい体験したなと思う1日でした。
「私も小学校の運動会で感動したよ」という方はぜひその感動話などをコメントでいただけると嬉しいです。
それでは、ごきげんよう。
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