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血圧が下がったら?【考えること3つ】

研修医
「血圧80きったんですけど、エフェドリンでいいですか?」
麻酔科医
「うーん、とりあえずプロポとレミをさげようか。それからネオシネをいれよう。」

よくある
研修医と麻酔指導医のやりとりです。

今回の記事では
なぜこのようなやりとりになったか、を解説していきます。

後半で具体的な麻酔科医のアタマの中も紹介します!

■原因別に考える

前回、麻酔中の原因は3つしかない

という話をしました。

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前回の記事はこちら

今回は、
それぞれが臨床的には何に当てはまるのか?
そしてその対応についてまとめます。

さっそくですが、
図でまとめました。

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3つの原因別に臨床的な要因を考えて、
それの対処をする。

という流れです。

実際には
原因が一つではなくて
複数絡んでいることがほとんどです。

たとえば、
こんな感じ↓

■麻酔科医のアタマの中

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- 症例

73歳男性
大腸癌に対して低位前方切除術が予定された。
大きな合併症はない。
麻酔は全身麻酔(TIVA)+硬膜外麻酔で計画した。

手術開始後30分
特別大きな出血があるわけではないが、血圧がひくめである。

BP 70/40mmHg HR70 洞調律 SpO2 99% BT36.5℃ BIS 30

さて、
どうしましょう?

ここで
先程の3つの原因を
ひとつづつ検討していきます。

(ちょっとむずかしくなりますが、理解できなくても大丈夫です。伝えたいことは「血圧低下を原因別に考える」ということなので!)

- ①前負荷の低下は?

あきらかな出血はない。
心拍数は手術開始時より5bpm程度あがっているが、
頻脈というほどではない。
パルスオキシメーターの呼吸性変動をみてもそこまで大きくはなさそうだ。
輸液を200-300ml急速負荷して反応をみてもいいが、
効果はイマイチそう。

- ②心収縮力の低下は?

心電図は洞調律で、波形も変化はない。
パルスオキシメーターの立ちあがりも大きな変化はない。
もともと心臓には大きな問題のない状態だし、
心臓の動きが悪くなったということはなさそう。
BISはひくめで鎮静薬の影響を受けている可能性は多少あるかもしれない。
プロポフォールの量はちょっとへらそう。

- ③SVR(末梢血管抵抗)の低下は?

BISは低めで鎮静薬の影響はあるだろう。
プロポフォールの量をへらそう。
執刀からレミフェンタニル0.1mcg/kg/minで維持してきたが、
血圧は低空飛行のままだ。
脈拍が急激にあがることはなかったし、
硬膜外麻酔でよく鎮痛できているのだろう。
レミフェンタニルもさげる余地はありそうだ。
薬剤変更をしてもすぐには効果がでないから、
対処療法としてネオシネジン(α作動薬)をいれておこう。
硬膜外カテーテルにつなぐ術後持続鎮痛薬も準備できているが、
つなぐとさらに後負荷をさげそう。
つなぐのはもうちょっと時間をあけてからにしよう。

ということで、
麻酔科医のアクションは以下のとおりになります。

- 麻酔科医のアクション

● レミフェンタニルの減量
● プロポフォールの減量
● ネオシネジンの投与
● 輸液負荷はオプション

麻酔中は、
この判断を繰り返し行っていきます。

全体を見渡して
今、何が足りていないのか、あるいは過剰なのかを
考えて対応していくわけです。


■さいごに

本の紹介です。
これまでの話を
もっとわかりやすく、
やさしい語り口で解説してくれます。

「なるほど!麻酔科医はこう考えて管理しているのか」

ということが
すっ、と頭にはいってきます。

個人的にはかわいいイラストが多いのもポイントです。

さいごまでお読みいただきありがとうございました!
また次回もよろしくおねがいします。

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