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鎮痛を調整する

手術も終盤。
外科医が皮膚を縫い始めた。

麻酔科医
「そろそろレミフェンタニルを下げようか。」

研修医
「あ、はい!」
(まだ手術は終わっていないのに、鎮痛薬減らしちゃって大丈夫なのかな、、?)

今回は手術終了に向けた鎮痛の調整についての話です。
終わりに向けて麻酔科医が何を考えているのかを解説します!

■ multi modal analgesia

最近の麻酔ではmulti modal analgesiaという考え方が主流です。
言葉のとおり、「様々な」鎮痛薬で鎮痛をしていきます。
こうすることで副作用を減らしながら、
目的の鎮痛を達成できます。

薬には必ず作用副作用があります。
一つの鎮静薬で痛みをすべてカバーしようとすると、
どうしても量が多くなります。
作用(鎮痛)を強くしようとすると、副作用も強く出てしまうのです。

たとえば、
フェンタニルなどの麻薬系鎮痛薬では
副作用として吐気が強くなります。

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たとえば、
硬膜外麻酔では、量が多くなると副作用として運動神経ブロックが起きます。
「痛くないけど、足がうごかない」状態です。

そこでmulti modal analgesiaという考え方が登場します。

様々な薬で鎮痛を図ると
鎮痛の「作用」は積み上がりますが、
「副作用」は薬によって違うので分散します。

神経ブロック、麻薬、NSAIDs(ロピオン)の3つで鎮痛すると下記のようになります。

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痛みがでない鎮痛が達成できていて、
かつ
副作用が分散されていることに注目です。

■ レミフェンタニルを切っても大丈夫?

ということで、
現代の麻酔では様々な薬を使って痛みをとっています。

さて話題をちょっと変えます。

今度は覚醒に向けて鎮痛レベルがどう推移していくか、についてです。

たとえば、レミフェンタニル。
この薬は半減期が約3分なので、
調節性が良く術中鎮痛では大活躍しています。

しかし、術後は使用できないのが欠点です。
投与を中止すると血中濃度は急激に下がります。

つまり鎮痛レベルが急落して
痛みが出てきてしまう可能性があります。

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いずれ切らなくてはいけない薬なので、
覚醒に向けて減らして
それでも鎮痛ができているか確認していきます。

手術の終了間際。皮膚縫い中。
レミフェンタニルを切って痛がるようでは鎮痛が不十分です。
他の手段で鎮痛を追加する必要があります。

■ 鎮痛が不十分なら追加する

たとえば
フェンタニルを追加して鎮痛レベルを上げましょう。
(図を再掲します。)

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さきのレミフェンタニルは一つの例です。

他の薬についても、どのように血中濃度・効果範囲が変化していくか予測します。

それらを総合的にとらえて、
覚醒時に痛みが十分カバーできているか?
を考えます。

ちなみに
痛みの判定については
血圧・心拍数の上昇が基本です。

■ 呼吸数が参考になる

痛みの判定方法をもう一つ。
呼吸数が鎮痛レベルの参考になります。

痛みによって呼吸は早く浅くなるので、
呼吸数が20回を超えてくるようなら
鎮痛の追加を考えたほうがよいでしょう。

覚醒に向けて
自発呼吸がでてくる場合があり、これを利用します。

逆に麻薬が効きすぎていると
呼吸数が少なく、一回換気量が大きい呼吸をします。

■ さいごに

まとめです。

鎮痛の基本はmulti modal analgesiaです。
「様々な」鎮痛薬で鎮痛をしていきます。
副作用を最小限に、目的を達成するためでした。

覚醒に向けて十分な鎮痛ができているか
レミフェンタニルを減らしたり、
予測を立てて検証しましょう。

このとき、
心拍数や血圧の他
呼吸数が参考になります。

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