視覚障がい関係の補装具・日常生活用具 まとめ
以前、別の記事で補装具・日常生活用具について紹介しました。
その種類があまりに多く、全てを紹介はできなかったのですが…今回は視覚障がい関係の補装具・日常生活用具をまとめて紹介してみたいと思います。
1 補装具
補装具とは、身体障がい者が装着することにより、失われた身体の一部、あるいは機能を補完するものの総称です。その品目や支給額(購入基準額)の上限、耐用年数などは全国共通になっています。
補装具費支給制度を利用することで、購入は基本的に1割負担(所得上限あり)になります。ただし購入基準額以上分は自己負担となります。またそれぞれに耐用年数が設定されており、新たに制度を利用して購入する際は、耐用年数を経過する必要があります。
1.視覚障がい者安全つえ(盲人安全つえ)
(画像は厚生労働省より)
視覚障がいのシンボルでもある、いわゆる白杖のことです。直杖ともいわれる普通用、折りたたみやスライドできる携帯用、サポートケーンとと呼ばれる身体支持併用の3種類があります。
それぞれグラスファイバーや木材、軽金属の材質により購入基準額や耐用年数が異なります。
(画像は日本ケアフィット共育機構より)
基本的には普通用、携帯用のどちらかになりますが、用途や目的を別として両方の購入が認められることがあります。
また購入の際は、身体サイズや用途にあったものを専門家に相談しましょう。役所の障害福祉課などへ相談に行って、サイズや用途の合わない白杖を職員さんが良かれと思ってその場で渡されるケースを聞いたことがあります。
白杖については別の記事でも紹介しています。
2.義眼
(画像は厚生労働省より)
義眼とはガラスやプラスチックなどで人工的に製作された眼球のことで、摘出後の眼球を補うために使われます。眼科医の診察を経て、義眼師という専門家がオーダーメイドで義眼を作成されます。
(画像はアツザワ・プロテーゼ九州より)
普通義眼、特殊義眼、コンタクト義眼の3種類があり、どれも耐用年数は2年です。
3.眼鏡
(画像は厚生労働省より)
近視、遠視、乱視などの屈折異常や弱視等の視力障がいを補うのが、矯正眼鏡とコンタクトレンズです。
(画像はプライオリティ・オプティシャンズより)
矯正眼鏡などでは矯正ができない弱視に対して、対象物を拡大して見るため、重度の視覚(視力、視野)障がいの人に支給されるのが弱視眼鏡です。眼鏡のレンズに拡大レンズを用いるのが掛けめがね式です。
(画像はメガネのアマガンより)
(画像は宮崎県身体障害者相談センターより)
|単眼鏡《たんがんきょう》とよばれ、黒板や駅の時刻表など遠くのものを見るのに使うのが焦点調整式です。片眼だけの双眼鏡をイメージしてもらえればとわかりやすいと思います。
(画像は福井県立盲学校より)
羞明感(眩しさや白んだ感じ)をやわらげ、コントラストを上げて、見え方をよくするのが、遮光眼鏡です。矯正眼鏡のフレームに取り付けて使用する前掛け式と、眼鏡式とがあります。
(画像は宮崎県身体障害者相談センターより)
(画像は朝倉メガネより)
矯正眼鏡や弱視眼鏡は、遠用と近用の両方の必要が認められた場合は、2つ支給されることがあります。遮光眼鏡も屋外用と室内用で2つ支給が認められる場合があります。
また弱視眼鏡の焦点調整式で東京都のみ、拡大鏡いわゆるルーペが認められています(なんでなんでしょう、やっぱりお金があるからでしょうか…)。
(画像はルーペスタジオより)
2 日常生活用具
日常生活用具はお住まいの市区町村によって対象となる品目や手帳の等級や年齢といった条件、給付限度額や耐用年数などの扱いが異なります。
今回は詳細な情報が掲載されている大阪市の例を中心に紹介していきます。
〈自立生活支援用具〉
1.移動・移乗支援用具(歩行支援用具)
(画像は大阪市福祉局より)
家庭内の移動に介助を要し、身体障がい者2級以上かつ3歳以上を対象に、限度額60,000円、耐用年数8年で、段差解消や手すりに限り認められます。通常は申請できるのは1項目につき1つだけですが、この項目では、1回の申請につき限度額内で複数個給付することができます。
(画像はパナソニックより)
2.火災警報器
(画像は大阪市福祉局より)
火災発生の感知及び避難が著しく困難な障がい者のみの世帯又はこれに準ずる世帯で、身体障がい者手帳2級以上を対象に、限度額15,500円、耐用年数8年となっています。
具体的には屋外などでもブザーが鳴るタイプの警報器です。
(画像はパナソニックより)
3.自動消化器
(画像は大阪市福祉局より)
火災発生の感知及び避難が著しく困難な障がい者のみの世帯又はこれに準ずる世帯で、身体障がい者手帳2級以上を対象に、限度額28,700円、耐用年数8年となっています。
(画像は北日本防災設備より)
4.電磁調理器
(画像は大阪市福祉局より)
単身世帯又はこれに準ずる世帯で、身体障がい者手帳2級以上を対象に、限度額15,000円、耐用年数6年となっています。点字表記付きのものや、音声対応の商品もあります。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は北海道視覚障害者福祉連合会より)
5.音声はかり
一部自治体で日常生活用具として認められています。身体障がい者手帳1〜4級を対象に、限度額31,000円、耐用年数3年などです。音声で重さを教えてくれるはかりです。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
6.歩行時間延長信号機用小型送信機
(画像は大阪市福祉局より)
視覚障がい2級以上かつ学齢児以上を対象に、限度額12,000円、耐用年数10年となっています。
シグナルエイド3という商品名で、歩行時間延長信号機では、歩行者用の青色点灯時間を通常より長くしたり、信号機の操作ボタンを直接押すことなく、遠隔で操作ができます。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
7.音響案内装置
一部自治体で日常生活用具として認められています。身体障がい者手帳1〜4級を対象に、限度額49,000円、耐用年数5年などです。個人向けの自宅玄関用音声標識ガイド装置で、シグナルエイド3の信号を受信してメロディが流れます。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
8.空間認知用計測器
一部自治体で日常生活用具として認められています。身体障がい者手帳1〜2級を対象に、限度額91,000円、耐用年数5年などです。 超音波の反響による振動などで障害物などの有無を確認する機器です。該当するパームソナーという商品は生産終了しています。
(画像は鹿児島県視覚障害者団体連合より)
9.携帯型GPS地図端末装置
一部自治体で日常生活用具として認められています。身体障がい者手帳1〜2級を対象に、限度額126,000円、耐用年数5年などです。単独歩行時に、現在位置の住所情報とその周辺の情報を音声で伝える機器です。あらかじめ目的の場所までのルートを登録すると、そのルートに沿った道案内を行います。該当するトラッカーブリーズという商品は販売中止になっています。
(画像はエクストラより)
10.光量感知器
一部自治体で日常生活用具として認められています。身体障がい者手帳1〜2級を対象に、限度額5,000円、耐用年数5年などです。部屋の電灯の消灯確認を行うための機器です。該当する振動式光チェッカーという商品は販売終了しています。
(画像は鹿児島県視覚障害者団体連合より)
〈在宅療養等支援用具〉
1.視覚障がい者用体温計(音声式)
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上で学齢児以上を対象に、限度額9,000円、耐用年数5年となっています。ブザーと音声で案内してくれます。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像はジオム社より)
2.視覚障がい者用体重計(音声式)
(画像は大阪市保健局より)
視覚障がい者のみの世帯又はこれに準ずる世帯で、障がい者手帳2級以上を対象に、限度額18,000円、耐用年数5年となっています。音声で体重を教えてくれますが、プライベートな情報を漏らさぬようイヤホンジャック付きです笑。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
3.視覚障がい者用血圧計(音声式)
(画像は大阪市保健局より)
視覚障がい者のみの世帯又はこれに準ずる世帯で、障がい者手帳2級以上かつ18歳以上を対象に、限度額15,000円、耐用年数5年となっています。測定結果や過去の記録を音声で読み上げてくれます。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
〈情報・意思疎通用具〉
1.情報・通信支援用具
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ学齢児以上を対象に、限度額100,000円、耐用年数5年となっています。
この情報・通信支援用具では、PCやタブレット端末の周辺機器やアプリケーションが対象になります。通常は申請できるのは1項目につき1つだけですが、この項目では、限度額内で複数個申請することができます。
2.視覚障がい者用地上デジタル放送対応ラジオ
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ学齢児以上を対象に、限度額29,000円、耐用年数5年となっています。これに対応していた「テレビが聞けるラジオ TRKO-01B」という商品は生産中止になり、現在は購入できません…。
(画像は日本視覚障害者団体連合用具購買所より)
3.点字器
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上を対象に、標準型は限度額10,800円で耐用年数7年、携帯型は限度額7,500円で耐用年数5年となっています。標準型か携帯型がどちらか一方しか申請できません。
点筆を使って手動で点字を打つための道具です。
標準型はかつての仲村製木製点字板が生産中止となり、現在はプラスティック製のものが販売されています。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
4.点字ディスプレイ
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ18歳以上を対象に、限度額383,500円で耐用年数6年となっています。18歳以上ですが、盲学校の自立活動で訓練するために必要と交渉され、17歳で購入が認められたケースがあるそうです。
持ち運び可能な点字のワープロといった機器で、パソコンやスマートフォン/タブレットに接続しデータ共有が可能です。
大きさや機能、値段など多様な種類があるので使いやすいものを直接体験して選ばれることをおすすめします。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
5.点字タイプライター
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ就労もしくは就学している者/就労が見込まれる者を対象に、限度額63,100円で耐用年数5年となっています。
点字のタイプライターで、点字器よりも少ない負担で点字を打つことができます。
アメリカで生産されるパーキンスブレイラーと国産のテラタイプがあり、機種によって打ち方や点字の読み取り方が異なります。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像はアイフレンズより)
6.視覚障がい者用ポータブルレコーダー
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ学齢児以上を対象に、録音再生機は限度額89,800円で耐用年数6年、再生専用機は限度額36,750円で耐用年数5年となっています。録音再生機か再生専用機がどちらか一方しか申請できません。
デイジー方式によって音声データの録音や再生が可能な機器です。CDやSDカードの録音再生から、PCと接続したり、直接Wi-Fi経由でサピエ図書館からデータをダウンロードできる機器もあります。
デイジーのアプリもあります。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
7.視覚障がい者用活字文書読み上げ装置
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ学齢児以上を対象に、限度額115,000円で耐用年数6年となっています。
SPコードや二次元コードなどの音声コードを読み込むことで、文章の内容を読み上げる装置です。
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
カメラなどで撮影した文書を読み上げる機器もあります。
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
渋谷区や横浜市などの一部自治体では、オーカムマイアイなどのAI視覚支援デバイスが給付対象になっているそうです。
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
8.視覚障がい者用拡大読書器
(画像は大阪市保健局より)
学齢児以上の視覚障がい者を対象に、限度額198,000円で耐用年数8年となっています。据え置き型、携帯型などいくつかの種類がありますが1台しか申請できません。
カメラで写した文字や画像を拡大や白黒反転などしてディスプレイに表示する機器です。
携帯型は比較的小型で持ち運びが容易です。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
据え置き型は持ち運びは出来ませんが、画面が大きく大きなサイズまで拡大できます。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
活字文書読み上げ装置と一体になったものもあります。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
9.視覚障がい者用時計
(画像は大阪市保健局より)
身体障がい者手帳2級以上かつ18歳以上を対象に、触読式は限度額10,300円で耐用年数10年、音声式は限度額13,300円で耐用年数10年となっています(音声式は触読式時計の使用が困難な者が対象になります)。
触読式は文字盤の針を直接触って時間が確認できるもの、音声式はボタンを押すと音声で時刻を教えてくれるものです。給付対象外ですが、振動によって時刻を教えるものや、点字で時刻の数字が浮かぶものもあります。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
10.ICタグレコーダー
(画像は大阪市保健局より)
単身世帯もしくは世帯全員が視覚障がい2級以上もしくはこれに準ずる世帯で、身体障がい者手帳2級以上かつ18歳以上を対象に、限度額59,800円、耐用年数6年となっています。
あらかじめICタグやICタグ付きのシールなどを衣服や缶詰などのモノに貼り付けて音声を録音しておきます。レコーダーを近づけて読み取ることでそのモノが何かが音声でわかる機器です。
(画像は日本視覚障害者団体連合用具購買所より)
(画像はフロッグワークスより)
3 こんなところで相談・購入できます
補装具や日常生活用具などを販売しているところについて別の記事で紹介しています。
特に白杖は専門家に用途にあったものを選んでもらうべきですし、ルーペや拡大読書器などはたくさんの種類の中から実際に体験して納得したものを選ぶべきです。
そういう意味でも、実際にお店や施設を訪れる意義があると思います。また紹介しているお店や施設の多くが、実際に補装具・日常生活用具を扱っており、役所との申請に関するやりとりのサポートをしてくれます。
4 対象にならない便利グッズもあります
補装具・日常生活用具の対象にならないのですがや生活に役立つ便利グッズもあります。
別の記事でも便利グッズについて紹介しています。
視覚障がいの方の生活の工夫を考える記事にも便利グッズを掲載しています。
まとめ
調べてみると生産や販売が中止になっている商品や新商品が沢山あって月日の流れを感じました。
そして自治体による格差を実感しました…日常生活用具は地域生活支援事業に位置づけられているので、実施主体が市町村になり差ができてしまうのですり
今回の記事の内容はあくまでも参考で、くれぐれもお住まいの自治体で給付対象になっているかどうかや、限度額、耐用年数などを確認してください。
参考にしたサイト
2.日本盲人会連合「視覚障害者のための日常生活用具と補装具の給付及び貸与の実態調査事業― 報告書 ―」
4.東京都心身障害者福祉センター「平成30年度東京都身体障害者福祉法第 15 条指定医講習会資料
視覚障害編」
5.大阪市福祉局障がい者施策部「重度障がい者日常生活用具給付基準」
表紙の画像は高田馬場経済新聞より引用した、日本点字図書館の外観写真です。