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私の前世探究記【第一話】

あらすじ
作者である研究太郎(Q太郎)は、自身の前世についての研究を重ねて来た。
これは、Q太郎が前世の人物を特定し、その人生の細やかなディテールを解き明かしていくまでの物語を、Q太郎本人の日記を元に描く実録探究記である。

【2017年5月13日】
運命の日。Q太郎は右手に重傷を負う。37歳のときであった。
救急搬送され、即手術。
手術は成功したが、その後長い間、激しい痛みや握力低下などの後遺症に悩まされることになる。

【2019年9月27日】
運命の日その②。
Q太郎の人生に「前世占い」というワードが出てくる。

怪我の痛み、社会復帰への絶望感、家族との関係など、様々な悩みが重なっていた。
その不幸の原因を「自分のせい」にしなくて済む方法を考えていたQ太郎は、「前世で悪いことをした報いなのだ、前世のせいにしよう」との考えに至り、前世占いを受けてみたいと思うようになる。
後日、ネットで占い館を調べ、来店の予約を取る。

【2019年11月19日】
運命の日その③。
予約していた前世占いを実際に受けに行く。
占い師「R先生」との出会いが待っていた。
R先生は40代ほどの美人な女性だった。

Q太郎はこれまでの生い立ちや、怪我でどれだけ悩んでいるのかを告げた後、もしこれが前世のせいなのであれば、それはどんな人物で、何をしてこうなったのか教えてほしい、と教えを乞うた。

しかし意外にも、R先生はQ太郎の前世のヒントとなるワードを教えるのみであった。
これは、「教えてもらうより、自分で探してみなさい」ということだと理解し、その日からQ太郎の前世探究が始まるのだった。

【2019年12月〜2020年1月】
調べ始めてみたものの、前世の時代も国も目星がつかない。
「中世ヨーロッパ」
「農民が参加した戦争」
「宗教絡みの戦争」
などのキーワードを全て満たすような歴史的な出来事を探す日々をおくる。

【2020年2月5日】
Q太郎は「フス戦争」というものに出会う。
15世紀のチェコで起きた宗教絡みの戦争で、農民が主体となって戦った。
R先生のキーワードと一致するので、しばらくこのフス戦争について調べてみることにした。

【2020年3月〜5月】
フス戦争についての研究を続ける。
日本人でフス戦争を研究している人は少なく、著作物も少ない事が判明する。
その中に、山中謙二という人が太平洋戦争中に防空壕の中で仕上げたというフス戦争の研究書があることを知り、それを取り寄せる。(フシーテン運動の研究

大変勉強になるのだが、少し調べるとさらに詳しく知りたくなる。
しかし、その本に書いてあるチェコ人の名前や地名はカタカナ表記であり、そのままネットで検索してもほとんどヒットしなかった。
止むを得ず、Wikipediaのリンクにあるチェコ語のページなどに移動し、少しずつ自力で翻訳しながら調べていくことにする。

【2020年6月】
フス戦争に出てくる人物の中に、「ヤン・ロキツァナ」という人がいるのを知る。
彼の人生に興味が湧き、なぜか彼をモデルにした小説を書いてみようと思うようになる。

【2020年7月3日】
ヤン・ロキツァナをモデルにした小説を書くにあたって、彼の生い立ちや家族構成は不明な点が多かったため、フィクションを織り交ぜた設定にすることにした。
町工場で働くQ太郎自身の境遇と重ねて、ロキツァナの実家を鍛冶屋とし、また、姪っ子を登場させ、その姪っ子が成長して平和団体を立ち上げて戦争を終わらせるというストーリーにしよう、と考えた。

そして、ロキツァナに関するチェコ語の資料を翻訳しながら調べていたとき、驚愕の事実を発見する。

なんと、ロキツァナの実家は本当に鍛冶屋だった、とその資料には書いてあったのである。

※その時点で、Wikipediaにはまだロキツァナの生い立ちについての記述はなかった。後から加筆修正されたものが現在も閲覧できる。

【2020年8月10日】
さらに驚くべき発見をする。
ロキツァナには甥っ子がいて、その甥っ子が成長すると、「ボヘミア兄弟団」という完全非暴力主義団体を創設した、という記述が、歴史書に載っていた。
小説の設定を考えていた時点では、Q太郎はこれらのことは知るわけもなく、本当にフィクションとして考えていたのだ。

フィクションとして考えたはずのものが、史実として歴史書に書いてあったということになる。

【2020年10月】
初めて前世占いを受けてから、もうすぐ1年が経とうとしていた。
Q太郎はいまだ飽きずに、前世探究とフス戦争の研究を続けている。

これまでにフス戦争というものを調べて来た結果、このフス戦争に登場する人物の中にこそ、Q太郎の前世が居るのではないかという強い確信が芽生えていた。

Q太郎は自身の前世の候補を数名に絞り込み、その資料を携えて再びR先生の元へ行くことにした。

前世の人物特定の答え合わせをするのが目的であった。



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