池袋アニメーションフィルハーモニーの生成AI利用について

アニメの音楽演奏イベントなのにポスターに生成AIが使用されたことが問題になってますね。

高橋洋子さんが生成AIの使用を理由に参加を辞退された事も話題になりました。

この件の本当の問題点を生成AIを批判するネットの皆さんは理解してるのでしょうか?

なぜポスターに生成AIが使われたか、本当の理由を説明しますね。

まず、この件について、音楽とアニメ作品の絵について、許諾方法が全く違うことをみなさんはご存知でしょうか?

例えば、高橋洋子さんがエヴァの主題歌で参加されるからといって、エヴァンゲリオンの絵をポスターに使えるかと言えば、これは現実的には、かなり面倒な事になります。

それに対して、歌唱や演奏はJASRACの申請で簡単に許諾が取れます。こちらは手続きが、システム化されており、比較的スムーズに許諾が降ります。

これは、なぜかというとアニメの製作委員会の問題なんです。製作委員会…聞いたことありますよね?アニメを作る時に出資者を募って銀行口座と作品の利用契約を結びつける手法です。

アニメは制作が終わる前にあらかた、作品の利用権利を先に出資者に売ってしまうのです。つまり、言い換えると先に権利を売って製作費をもらうのが製作委員会方式です。

製作委員会には、一応、幹事会社などもありますが、単一の権利を管理する組織ではありません。製作委員会は前もって、DVDを売る権利や、フィギュアを作る権利、映像配信する権利などを先売りして、商品化を製作前に決めてしまうので、組織ですらありません。異なる組織の間で結ばれたり契約書でしか無いのです。

この取り決めに含まれない作品の利用は、製作委員会参加企業全部に確認と許諾を取る必要があります。どの出資者に権利があるかわからないからです。

一般的には、例えば製作委員会に参加してない業者が後から、Tシャツをアニメの絵で出したければ、製作委員会の参加企業全社の同意を得て、売れたTシャツの何%を製作委員会におさめるか決めて、そのミニマムギャランティを前払いしてアニメの絵の使用権を買ったりします。

さて、今回のような演奏イベントの場合はどうでしょうか?

商品化するわけではありませんのでミニマムギャランティを払うことは出来ません。製作委員会も使用を打診されたら、どう判断すべきか、想定外の許諾になります。

その結果、作品の宣伝になると判断するケースもないことはないので絶対に許諾されないとは言い切れませんが、作品によってはものすごく時間がかかってしまうのです!さらに、許諾の金額もマチマチになってしまうでしょう!

さらに困った事に、製作委員会はアニメ放送が終わると連絡がつきにくくなります。終わった作品のために担当窓口の人が常駐しているわけではないからです。これも、アニメの絵の許諾がものすごく時間がかかる理由です!

アニメの祭典なのにアニメの絵を使うのはものすごくハードルが高いのです!

演奏リストを見ると数多くの作品がありますので、どのアニメの絵をポスターに使うかも難しい問題ですよね。

さらに新規作画するなら、アニメの関係者に頼むのか?原作者に頼むのか?これによって連絡先が異なります。アニメーターに頼むなら、Newtypeなどの雑誌の表紙のようにアニメスタジオを通してアニメーターに連絡する事になりますが、古い作品だとスタジオや製作委員会から、キャラクターデザイナーや作画監督に連絡が出来ないこともあります。漫画原作者の場合は、アニメの絵ではなくなります。Newtypeの表紙は作品が放送中だから描いてもらえるのです。

古い作品をアニメ関係者に描いてもらうのは本当に難しいのです!

つまり、今回の生成AI利用は、クリエイターへのリスペクトとかの問題ではありません!!描くのがほぼ無理なんです!アニメの絵を使うのすら、難しいのです!
その結果、アニメ作品の新作は不可能で、結果、よくわからないイメージイラストを頼まれた絵描きやアニメーターだって、演奏内容とかけ離れた絵を描くわけですから困ってしまいますよ!すごくやりがいのある仕事にはなり得ません!あと、アニメーターは線画しか描けない(描かない)人が多く、ポスターの絵は仕上げさんと組まないと描けません!(描ける人もいらっしゃいますが普通は嫌がられます)

結局、生成AIではなく手描きの絵にしますと言う事で出来上がったポスターは、よくわからないイメージイラストになりました。

そこに何か生成AIを使わなかった差が出ましたか??新しいポスターが手描きのイラストレーターの何か特別な実績になりましたか?このイベントの本質的な何かが変わりましたか?

むしろ、複雑な権利関係を避けてポスターを作るには生成AIの方が無難だったのではないでしょうか?

生成AIが描いた絵は、「いらすとや」のようなもので、イメージによるコミュニケーションを促進させる効果があると私は思います。

最初のポスターはイベント内容の演奏しているイメージを伝えるポスターとして十分に機能しており、ここで生成AIの利用を忌避するのは、完全にAIに対する誤解から来ているとしか言えません。

過剰に広まる生成AIへのキャンセルカルチャーの悲劇の一つでしか無いのです。

もし、生成AIの絵が、エヴァンゲリオンの絵に依拠性のある無断使用であれば大問題であり、高橋洋子さんの参加拒否も納得です。ですが、なんの権利も侵害しない単なるイメージイラストに対してあの態度を取るのは流石に完全に言いがかりでしか無いと感じました。

今後同じようなことが起きないことを祈るばかりです。生成AIについては、学習はいかなる場合も合法であり、出力された絵の依拠性でのみ著作権侵害を訴えることが可能と言うのがいまの日本の法律の見解です。

なんとなくネットで生成AIは良くないと言ってるから、批判しました…では、ネットリンチとなんら変わりありません!

本当にどっちがおかしいかみんな冷静に考えて欲しいと思います。

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