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著名建築家ホテル⑦ 倉敷アイビースクエア

ホテルに泊まるために生きていると言っても過言ではない私が考えるホテルの魅力。もちろん第一はホスピタリティですが、それと双璧を成すのが建築の美しさやユニークさ、建物に込められた想い。

というわけで、泊まれる建築作品をまとめているシリーズです。

倉敷アイビースクエア(1974年開業)

日本でいちばん好きな美術館、大原美術館がある倉敷。規模は小さいし、そこまで人気というわけでもないけど、好きな人は好きな街なはず。メジャーな京都と違って、しっとりと落ち着いて静かな空気感も好き。

そんなお気に入りの街、倉敷の発展は倉敷紡績所(今のクラボウ)と創業家の大原家抜きには語れない。そんなクラボウの始まりになった工場を改築して建てられたホテルには、絶対一度は泊まりたい!

そう思っていた20代の頃、友人が就職した会社の福利厚生でリーズナブルに宿泊できると分かって飛びついた🤣

相応しくない例えと承知で、それでも言っちゃうけど、どことなくアウシュビッツを連想してしまって。

私がアウシュビッツを訪れたときってツアー客がいない閑散とした時間帯で、どこを見て周ってもその場に私しかいなくて。みんなで対象物を見物するというより、その世界にどっぷり浸かるような見学だったせいか、その時に抱いたアウシュビッツで自分が寝泊まりするイメージがいつまでも頭に残っていて。

収容所にしても監獄にしても極論は宿泊施設なわけで、効率を重視して建てられた工場を基礎にしているから、どうしても迎賓からは距離があるというか。加えて紡績工場の過酷な状況を連想してしまって、歴史を鑑みればあながち大外れというわけでもない気もする・・

そんなわけでビビり半分・興味半分でなかなか泊まれずにいた時に、背中を押されるように女子会宿泊。いや〜、行ってよかった!実際に泊まってみると、とても温かみを感じられる建物だった✨

確かに客室の天井は低いし、換気の問題か年季の問題か埃っぽいような乾ききったような空気ではあったんだけど、懸念していた澱みが全然なくて!街としての倉敷を創り上げた建築家さんと言ってもいい、浦辺鎮太郎さんの想いが溢れているよう✨

とりわけ、空気感が違う!と感じた中庭。そここそが浦辺さんが想いを込めてリノベした箇所だそうで、なるほど納得。

元ある建物を間引いていく減築方式でのリノベ。解体で出た建築材をリユースした中庭は、知らなければなんてことない模様だと素通りしちゃいそうになるけど、柱が立っていたところには柱の基礎石が埋めこまれ、それに合わせて柄になるように埋め込まれているのは紡績機の基礎石なんですって!

地面をよ〜く見ると、ほかにも模様が入っているんだけど、それは解体した工場に使われていた瓦の再利用!1970年代にしてSDGs最先端。その年の建築学会賞を受賞したそう。

全然知らなかったけど、2020年に客室がリニューアルされたんですね✨ クロスは真っ白になっているし、なにより天井に木材が張られていて、めちゃくちゃ明るい!私が泊まった頃の面影なんて1ミリも残っていない💦

寝泊まりするには、そりゃあリニューアルされた真新しいお部屋が快適だけど、紡績工場だった頃のことがひしひしと感じられた(それにしたって本当に初期の工場を知る人なんかに言わせれば雲泥の差なんだろうけど)以前の客室に泊まっておいて本当に良かった🥺

客室リニューアルに少しがっかりするなんて滅多にない感情に自分でも驚きだけど、そんな風に思うほど素敵だったってことですね✨


・トップの写真は公式サイトのものを利用しています

新たな視点がもてたり、世界が広がったり、楽しい気持ちになりますように・・✨