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絶対に信じていない、ただひとつのこと

すべてにおいて情報過多ではあるが
特に、食品においては
丁寧すぎるほどに説明書きが多い。
アレルギーで重篤な症状が出たり
保管方法を誤れば傷んだりと
さまざまな問題が生じるからであろう。
さほど神経質にはなっていないが
食物アレルギーを持っているので
それっぽい物を選ぶときに、注意はしている。
食に貪欲ではなく、偏食なので
基本的に同じ物を買い
冷蔵庫の中に常備しているのはチーズくらいだ。

カップ麺は
ただお湯を入れればよいと思っていた。
昼休みに、同僚がカップ麺を食べようとしていて
いくつかの小袋を取り出し
慣れた手つきで何かを先に入れたり
お湯を入れた蓋の上に残りの小袋を置いたりして
携帯でタイマーをセットしていた。
難しいんだね、カップ麺って…と、言ったら
は?何が?と、不思議がられた。
カップ麺を食べたことがないと言うと
珍しいものを見るような目で
マジ…?と、引かれる。
祖母に、カップ麺とコーラは身体によくないと
刷り込まれて育ったので
カップ麺を食べたことがないのだ。

ジブリは、カリオストロの城以外だと
学校の授業で使われた
ナウシカと火垂るの墓しか観たことがない。
ディズニーは、学校の遠足で
ランドに二回行ったけど
二度目は、バスから降りずに寝ていた。
シーは、職場がスポンサー企業だったので
プレオープンのチケットを貰ったが
興味がなかったので同僚にあげてしまった。
白米が好きではなく、醤油も苦手。
漫画は好きだけれど、アニメには疎い。
日本人の大多数が好むものに
ほとほと縁が薄い。

出雲に行ったときに、名物の蕎麦を食べた。
とても美味しいお蕎麦に嬉しくなっていたが
チラチラとお店の方がこちらを見る。
出雲蕎麦は、器につゆをかけていただくのだが
つゆが苦手なので、あえてかけずに
いただいていた。
チラチラと見ていたお店の方が
「おつゆがこちらにありますので、かけてお召し上がりください」
と、声をかけてきた。
ありがとうございます、とお礼を言ったが
そのままつゆをかけずに食べ続けていると
再度
「おつゆはこちらにございます」
と、声をかけられた。
せっかくお声掛けいただいたのに
つゆが苦手とは言い出せず
そのまま食べてしまったが
なんとなくお店の方に申し訳なくなってしまい
美味しい蕎麦の味が消えてしまった。
きっと、お店の方は食べ方を知らない観光客だと
怪訝に思ったであろう。

冬が近づき、急に冷え込んだこともあり
温かい汁物を食べたくなることが増えた。
何かを拵えるのも面倒だし
サッと簡単にすませたい。
禁断のカップ麺に手を出してみようと思った。

気に留めて見たことがない即席麺の
あまりの種類の多さに驚いた。
ラーメンは得意ではないので
それ以外の何かで悩み
少しでも野菜が多そうなちゃんぽんを選んだ。

そこに、ヤツはいた。
『こちら側のどこからでも切れます』だ。
大抵のことは信じるし、信頼もしている。
でも、ヤツのことだけは、絶対に信じていない。
絶対に、だ。

今までに、何度も裏切られ
手やテーブル、服を汚し
そのたびに、どっからも切れんやないかい!と
ハサミまで洗わなければならなくなり
小さな怒りを抱くことになる。
家にいるときは、最初からハサミで開封するが
出先では慎重になりすぎて
何度も『こちら側』をビロビロにしてきた。

切り口をカットする工程と
マジックカットにする工程は
いったいどちらが手間なんだろう…。

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