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17年

2005年12月3日
たいせつな、たいせつな、キミが
ひとり、黄泉へと旅立った。

10月に体調を崩して入院したときに
弱っている姿は見せたくないから、と
お見舞いに行くことを禁じられた。
入院をしていることは
実家にも伝えていないと言う。
「たいしたことないで、すぐ元気になるし」
その言葉を信じていた。

実際、1週間程度で退院し
すぐに仕事にも復帰していたので
忙しいのはわかるけど、病み上がりだし
無理だけはしないで…と、口煩いほど言うと
そのたびに
「そんなに心配せんでも、大丈夫やで」
と、笑う。

「もすこしぬくなったら、温泉でも行こか。
二、三日、ふたりでゆっくり過ごしたいなぁ」
キミからの遠出の誘いは珍しかったし
ふたりの休みを合わせるのが難しく
近場に1泊程度しか旅をしたことがなかったので
ものすごく嬉しかった。
芽吹く春のその日を、楽しみにしていた。

楽しみにしていた春の旅が
ひとりで
キミのお墓参りになるなんて
微塵にも思っていなかった。

体調を崩したときに、止められても会いに行き
状況を見ていれば、じわじわと蝕んでいく病を
止めることができたのではないか?
もっともっと、口煩く、療養をすすめていれば
セカンドオピニオンをすすめていれば
病を見逃さずに…

どれほどの、たらればを繰り返しただろう。

最もたいせつな人を
守ることができなかった自分は
生きている意味も価値もない。
キミを失い、空っぽになって
自分を見失った。

「後追いだけは、しないで欲しい」
キミのご家族にも、まわりの友人にも言われた。
頭では、それだけはしてはいけないと
わかっている。
わかっているけれど
キミが居なければ、存在理由なんてない。
世界から色が消えてしまった。

考える時間があると
泣くか、自分を責めるか恨むかしかしないので
ギチギチに仕事のスケジュールを詰め込んで
仕事に打ち込むしかなかった。

キミと過ごした時間があるから、生きていける。
キミが居たことを忘れないために、生きていく。

モノクロの世界の中で
呪文のように唱えながら、過ごしてきた。

指輪/坂本真綾

涙があとからあふれだして
最後の笑顔がにじんで見えないの
行かないで 行かないで ここにいて
宙へ 光 駆けぬけてゆく

こんなに小さな私だけど
あなたを誰より精一杯愛した
ありがとう 幾つもの大切な気持ち
手渡してくれたよね

「その時ずっと、
私は消えかけた飛行機雲をみていた…」


忘れないで
ひとりじゃない
離れても手をつないでいる
はじめての恋 はじめて知った
こんな悲しみが在ること

何かが消滅しても何かが再び宿って
別れにくれた微笑みは強く生きようという
あなたからのメッセージ

いつかきっと逢える
ふたりならば
遠くても 瞳見つめ合う
希望と夢のすべてを賭けて
約束をしようよ
あの日の激しさを抱いて
明日咲く未来を生きる


キミがくれたMDに入っていたこの曲を聴いて
今日は、キミのことだけを考えて過ごすよ。

17年間ずっと、12月3日は、晴れ。
今までも、今も
たぶんこれからもずっと
愛しているよ。

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