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Time Trip

7年ぶりに、高校の同級生から連絡があった。

7年前の連絡が、同級生の訃報だったので
一瞬、身構えてしまったが
電話ではなかったので、急用ではないだろうと
メッセージを開いてみた。

「Uさんがいるんだけど」

少しだけ鼓動が早くなった。
Uさんとは、15歳で出逢い
一目惚れをして、交際を始め
何度も別れ、何度も復縁をし
今でも、年に一度くらいはやりとりのある
自分にとってのキーパーソンだ。

朝、何気なく開いたSNSで
ライブの告知を見たばかりだったので
「あー、ライブ行ってんだ。Uさんと一緒に出るTちゃん、すごくいいよ。適当に、よろしく言っておいて」
早くなった鼓動を隠すように
素っ気ない言葉を並べて返信した。

「話しかけたら、覚えてると思う?」

高校時代も、その後も
何度も顔を合わせてはいるし
何度か飲みにも行ったし
Uさんの車検を同級生にお願いしたこともあるが
おそらく、同級生とUさんは
25年は会っていない。

「覚えてると思うよ。名前はパッと出てこんかもしれんから、名乗って声かけてあげて」

「とりあえず、気づくまでガン見してみる」

写真が送られてきたが
3列目くらいからの距離だった。

「その距離じゃ見えないんじゃね?客電ついたら見えるかもだけど」

「今、転換で前の人いないから、ガン見してる」

その場にはいなくても
同級生は、気づいて欲しいオーラを出しつつ
言葉通りにガン見していて
Uさんは、まったく気づかずにマイペースに
ステージを進行しているのが
手に取るようにわかる。

「MCがめちゃくちゃ面白い」

いや…
MCじゃなくて、頑張ってるんだから
演奏も褒めてあげて…と、返そうとしたが
無粋だな、と送信せずに消去した。

少し経って
同級生とUさんの写真が送られてきた。
同級生の名前の一文字目だけは出てきたが
名前は失念していて
でも、ちゃんと覚えていたらしい。
開口一番
「最近、全然逢えてないんだけど、逢ったりしてる?」
と、尋ねられたそうだ。

毎日、想うようなことはなくても
頭や心、記憶の片隅に
自分が今も存在し続けているんだ…と
くすぐったくなるような
懐かしさのあるぬくもりを感じた。

バイト帰りに遠回りをして
古い雑居ビルの地下にあったUさんの職場に寄り
他愛のない話をして
明け方に仕事が終わると
今度はUさんが遠回りをして家まで送ってくれた。
何度も、ふたりで並んで眺めていた
伊勢佐木町の交差点の景色が浮かんできた。

熱量や、意味合いは変わってしまったけど
今も、変わらずたいせつなひと。

不意に訪れた、想い出への旅を経て思う。
15歳の自分よ…
Uさん以上、好きになる人には出逢うけど
一生、Uさんのことを
たいせつに想うという直感は間違いないよ。

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