[自作台本] ギャル外郎売
ギャル外郎売
うちのお師匠さん、みんなんなかで知ってる人もいるかもしんないけど、東京から80kmくらい大阪の方かな?
小田原の一色町ってとこをすぎて、青物町をちょっと京都側にいった欄干橋ってとこにいる虎屋藤右衛門ってひと!
いまは出家しちゃって圓斎って名乗ってんだけど。
もー、一年中いつでもゲットできちゃうこの薬なんだけど、昔ね、中国のういろうって人が赤坂御所にきたんだって。
天皇さんに会いに来たときずっとこの薬だいじにもっててさ、使うときは帽子の隙間から一粒づつ出してたらしいよ。
だから、天皇さんが とうちんこう ってあだ名つけたんだって。
意味的には、 頭の天辺の 隙間から いい香り って意味で とうちんこうってつけたらしいよ
今はこの薬、めっちゃ有名になっちゃって、ぱちもんもめっちゃでて、 小田原産だの、はいだわら産だの、さんだわら産の、炭俵産のだとかいろいろいってるけど、ひらがなで「ういろう」って書いてるのはうちのお師匠さんの圓斎だけだからね。
もしかして熱海とか塔ノ沢に温泉入りにいったときとか、伊勢参りのときに会ってもぜったい間違えないでね。
京都行く人は右の方、そうじゃなければ左の方、家には屋根にとがったとこが8こあって、門には3つ、めっちゃきれーな建物で、屋根の両端には菊や桐の紋をつけることを許されてるってゆー、超セレブな薬屋なんだよ!
あ、さっきからめっちゃ自慢ばっかしても、知らない人にはわかんないよねー、幻想だよねー。
じゃー、一粒食べて、そのすっっごいとこ、みせちゃお!
まずね、この薬をこんなかんじでー、べろのうえにのせてー、ごっくんすると・・・
いやー、なんてーの、胃も心臓も肺も肝臓もちょー健康になって、口臭対策にもなるくらいさわやか!
食べ合わせ悪いもの食べたときと、それいがいもどんな病気も治っちゃうよ!まさに神!
そんでね、このくすり、不思議なことにめっっちゃ滑舌よくなんの!
ひょっとベロがまわりだすともーとまんないっ!
(本来の)外郎売
拙者親方と申すは、御立会の内に御存知の御方も御座りましょうが、御江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町を御過ぎなされて、青物町を上りへ御出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今では剃髪致して圓斎と名乗りまする。
元朝より大晦日まで御手に入れまする此の薬は、昔、珍の国の唐人外郎と云う人、我が朝へ来たり。
帝へ参内の折から此の薬を深く込め置き、用うる時は一粒ずつ冠の隙間より取り出だす。
依ってその名を帝より「透頂香」と賜る。
即ち文字には頂き・透く・香と書いて透頂香と申す。
只今では此の薬、殊の外、世上に広まり、方々に偽看板を出だし、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方圓斎ばかり。もしや御立会の内に、熱海か塔ノ沢へ湯治に御出でなさるるか、又は伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
御上りなれば右の方、御下りなれば左側、八方が八つ棟、面が三つ棟、玉堂造、破風には菊に桐の薹の御紋を御赦免あって、系図正しき薬で御座る。
イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、御存知無い方には正真の胡椒の丸呑み、白河夜船、されば一粒食べ掛けて、その気味合いを御目に掛けましょう。先ず此の薬を斯様に一粒舌の上に乗せまして、腹内へ納めますると、イヤどうも言えぬわ、胃・心・肺・肝が健やかに成りて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。魚・鳥・茸・麺類の食い合わせ、その他万病即効在る事神の如し。
さて此の薬、第一の奇妙には、舌の廻る事が銭ごまが裸足で逃げる。ヒョッと舌が廻り出すと矢も盾も堪らぬじゃ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?