建築情報学系コミュニティを楽しく運営するために ~ND3M R&E 勉強会活動を通して~

ND3M の MEDY(メディ)です。
普段は某社の設計部で意匠設計をやってます。

ND3M は建築情報学系クリエイティブコミュニティとして活動しています。


今年の活動概要
①理化学研究所の研究者・FabCafeTokyo とのコラボワークショップ(昆虫フォトグ ラメトリ×3DPrinting)
②国内最先端 5 軸 CNC を保有する Artistry さんとコラボで行う自主制作
③各種ハンズオン/勉強会の開催、古民家を丸ごと 1 棟使って合宿形式でひたすらプロトタイピングをする

学生,大学院生から社会人(構造/意匠の実務設計者,建築系エンジニア等)まで楽しく活動しています。

以前から社会人主体のコンピュテーショナルデザイン/建築情報学領域/ファブリケーショ ン/XR 界隈でのコミュニティはチラホラ見かけます。私自身もそういったコミュニティ主催のワークショップやハンズオンに積極的に参加するようにしています。自身も他人から「どのように 運営しているのですか」と聞かれますし、自身も他コミュニティに対してそう思います。

そこで、今回の記事では、

①建築情報学系コミュニティをどのように立ち上げて運営してきたか
②ND3M R&E 勉強会の活動報告について
③建築情報学系コミュニティを運営・所属するメリット

この 3 点にフォーカスしていきます。
この記事を読まれた方には
「建築情報学系コミュニティにちょっと顔を出してみようかな」
「自分もコミュニティ立ち上げてみようかな」
と少しでも思って頂けたら幸いです。

建築情報学系コミュニティをどのように立ち上げて運営してきたか

きっかけは、2019年11月24日に行われた3DPrinting で作成したジョイントを用いたパスタタワーワー クショップでした。この時、運営に関わっていた (当時は 4 名。うち 1 名は脱退)3 名が中心となって今も継続しています。

活動年表
2019.11 【ワークショップ】Enjointing spagetoini workshop
2020.03 【展示】学生照明展
2020.05 【公開ディスカッション】Unravel Future「電脳設計論壇#1 豊田啓介氏」
2020.09 【展示】MONSTER Exhibition2020
2020.07-09 【アンバサダー】EMARFアンバサダー
2020.09 【設計施工】地獄組取り付けプロジェクト
2020.09 【公開ディスカッション】OPEN RESEARCH CNC ゲスト:秋吉浩気氏
2021.01 【スタジオ開設】ND3Mスタジオ(事務所)開設
2022.04 【プロダクト制作】有松の転写
2021.03 【設計施工】Fabllosom@青空ルネサンス
2021.09 【設計施工】すやみがすり(オフィスの内装設計施工)
2021.09 【展示】ND3M Exhibition
2021.09 【空間演出・施工】Z落語名古屋公演の空間演出・施工
2022.03 【合宿形式展示】WILD FAB FESTIVAL in 吉野
2022.04 【新体制】半数のメンバーが社会人になったことに伴い新体制へ
2022.04 【新体制】ND3M R&E勉強会開設
2022.06 【ワークショップ】Digital FUTURES workshop
2022.08 【ワークショップ】FabCafe Another World Workshop
2022.10 【学会】韓国の建築学系の学会にて優秀賞を受賞(土壁3DP)
2022.03-現在 【設計施工】5軸CNC×3DPrintingによるコラボ制作(Artistryとの共同企画)

(活動年表) 年表から分かるように、ワークショップ・自主制作による設計施工・国際展示や海外の学会コンペへの挑戦・勉強会と公開ディスカッションなどを中心に活動しています。

はじめは全員が学生で「近くに建築情報学系研究室がない」「大学で建築情報学系授業がない」「学びたいことを学べる環境がない」という状況下で「だったら自分たちで勝手に立ち上げて『先生のいないゼミ』のように活動して、自分たちで勝手に学んでいこう」という純粋な想いがきっかけでした。

今では、メンバーの半数近くが社会人となり「とにかく楽しいことをしたい」「まだみたことがないものや新しい取り組みをしたい」「自分の興味をひたすら突き詰めてメンバーとコラボしたい」という想いのもと、各自の専門性(職能や研究内容など)と建築情報学領域を組み合わせながら、自由気ままに取り組んでいます。

最近の活動は、ワークショップ・コラボによる自主制作活動・プロトタイピング(土壁/粘土3Dprinting)が多いです。

ND3M R&E 勉強会の活動報告について

ここからはND3Mの活動の中でも「Research & Engineering(略してR&E)」という勉強会活動にフォーカスを当てていきます。

ND3M R&Eでは、ND3Mメンバー(正規メンバー)と外部メンバーが集まったコミュニティです。毎月テーマが決まり、ファシリテーターとなった人が中心となり、読書会・勉強会・ハンズオン・ワークショップなどを週1程度で行われます。

参加者には学部生から大学院生、博士後期課程の研究者、社会人(実務設計者・コンピュテーショナルデザイナー・エンジニア)まで多種多様です。

ND3M R&E活動実績
2022.04 【創立】ND3M R&E創立、参加者募集
2022.06 【ワークショップ】Digital FUTURESにてworkshopの1つを担当
2022.09 【勉強会】動く建築・動く機構(ファシリテーター:MEDY)
2022.10 【勉強会】建築史・建築思想の中でのコンピューテーショナル・デザインの位置付けについて(ファシリテーター:近藤)
2022.11 【勉強会】agent based modelから考える都市、建築の動態(ファシリテーター:水口)
2022.12 【勉強会】3Dプリントの原理とGrasshopperでのG code生成
(ファシリテーター:田住)

取り組みはいろいろあるのですが、今回は2つにフォーカスして紹介します。

①Digital FUTURES workshopでの取り組み

ワークショップテーマ:RECONFIGURATABLE ARCHITECTURE~再構成可能な建築を考える~
概要説明
伸縮する折り紙のような機構をもった展開モジュールのgrasshopperによるモデル作成、作成したモジュールを最小単位のセルとした充填機構やセル・オートマトンによる多次元的な拡張、そして出来上がったモデルに対する解析と評価を行う。このプログラムでは、都市計画・建築設計・ファサード設計という複数のスケールから参加者が自由に選択しトライし、解析や最適化に用いるパラメーターも自らが設定する。最終日に各参加者の作成した様々なスケールの3Dモデルを持ち寄り、その中を歩きつつ講評会を開く。ワークショップ前半ではgrasshopperを用いた展開構造や伸縮する折り紙機構のレクチャー及びその評価までをハンズオン形式で行い、後半でそのスキルを活かして作品制作を行う。

Digital FUTURES とはざっくりとした言葉で言うと、海外の巨大な建築情報学会コミュニティのことです。毎年、初夏頃に各国で何百というワークショップが同時開催され、参加者は好きなものに参加します。

今年は日本語ワークショップも開かれるということでその1つをND3Mが担当しました。

近藤誠之介が担当したハンズオン

「ECONFIGURATABLE ARCHITECTURE~再構成可能な建築を考える~」をテーマに、Rhino+Grasshopperのさまざまなプラグインを使い倒した4つのハンズオンを開催(水口・九冨・大口・近藤が担当)

折り紙建築・エージェントアルゴリズム建築・モジュール建築・折り紙機構と環境シミュレーションなどなどを題材とし、ハンズオンを行い、最後に3つの課題から参加者に好きな題材を選んでもらって最終成果物を制作・プレゼンするというワークショップです。

5日間かけて行われました。

②動く建築・動く機構ハンズオン

所要時間:2時間30分
担当者:北島・池本・斎藤

こちらのハンズオンは3本立てになっており、基本的なリンク機構の解説とgrasshopperでの制作、立体スピログラフをgrasshopperで作ってみる、テオヤンセンの機構をgrasshopperで作ってみるという3つです。

ND3M R&E勉強会ではこのように外部からも参加者を募り、ハンズオン・ワークショップ・読書会・勉強会の開催を行っています。

建築情報学系コミュニティや勉強会を運営するメリット

学生にとってのメリット
①無料でスキル習得や知識の習得ができる。完全に理解できなくても「なんとなく知っている」という状態になれるだけでもお得。(あとから「ああ!あの時のやつだ!」となって急にできるようになったりすることもあるため、まずは知ることが大事)
②社会人が実務の中でどのように活かしているか知ることができる。
③とりあえず学外の人と知り合いになれて息抜きになる。

社会人にとってのメリット
①同じ業界でも他分野の人が実務の中でどう活かしているか、情報交換ができる。
②同世代の他業種・他社の人と知り合えて息抜きになる
③学生と話して息抜きになる
④実務に活かせなくても自分の興味のあることをつまみ食いできて楽しい。

運営サイド/ファシリテーターにとってのメリット
①とにかく人脈が広がる。
②週1ペースでコンスタントに新しい知識を得られる。
③「次は何を題材にしたら面白いかな」とアンテナを張って日常を過ごすことができる。
④いろいろお悩みを共有できる。
⑤以前習得した知識を新しい知識も加えてまとめなおすきっかけになる。

全員に共通するメリット
①とにかく手や頭を動かすきっかけになり、それが蓄積していくのが楽しい。
②ゆるっとしたコミュニティでやっているので孤独感がなく、かといって強制力もなく、程よい。(個人差はあるかもしれない)

建築情報学系ならではのメリット
①建築情報学系の学生・社会人は、建築情報学系ではない研究室出身の人もかなり多い。そのため、建築学に関する知識も、情報学に関する知識も、それ以外の知識も幅広くもっている人や複数の専門領域をまたいでいる人が多く、議論をする際にありとあらゆる視点での議論が生まれる。また未来志向や先端技術への興味関心が強く、常に新しいトピックやホットな情報がディスカッションの中で出てくる。誰かが出してくれる。(ありがたい)
②ツールやソフトウェアに関する相談がしやすい。
③やはりまだまだ建築情報学を専門とした人は他分野に比べて若干マイノリティであるためとにかく「仲間を増やそう」「暖かく迎えよう」という雰囲気があり、「なんもわからん」という状態で参加している学生にも優しい。そのため、周りも「ああ、実はわかったふりになっていたな」と気付かされることも多く、基礎的なところから勉強になる。

まとめ

ND3Mは先日3周年を迎え、現在4年目に突入しています。
建築情報学領域にどっぷりとつかり、自分たちの興味のあることをひたすら自由気ままに突き詰めてアウトプットするだけのコミュニティです。

この記事を書いている私もついこの間までは学生だったわけですが。
社会人になると、どうしても好きなことよりも「自らの属性」「どこに属しているか」などの話題やポジショニングトークをする人が周りにどうしても多くなってしまうような気がします。(別の建築系以外のコミュニティにいる感想)

そんな中で、「私はこれが好きで、最近こういうトピックにハマっているんです」「これに興味があるから一緒にやってみない?」と気軽に言えて、手を一緒に動かしてくれる人がいる環境ってとても大切だなと思います。

建築情報学なあなたも、そうじゃないあなたも、ちょろっとでもよいのでのぞいてみませんか。様々なコミュニティがあります。また自分で立ち上げてみるのも良いでしょう。

いつか、どこかで、コラボしましょう。



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