VR、現実の強度

はじめに

昨今、アメリカのメタ社におけるVRゴーグルの新製品の発表、それに対応するゲームソフトなどの開発、VR技術を用いたゲームセンターが秋葉原に出店するなど、VR技術を用いた製品、サービスの市場は伸びていると言えるだろう。そこで、こんなVR技術があれば良いという想像における、その展開とその技術・製品がこの現実世界に及ぼしうる可能性についてメタクエストにおいて考察する。

VR技術

そもそもVRとは日本語で言えば仮想現実となり、人工的な現実となるだろう。VR技術とはユーザーが操作し、それを入力インターフェースである、加速度センサやカメラ、磁気センサなどが感知し、内部のコンピュータによりシミュレーション、そしてその結果を出力インターフェースから出力し、それをユーザーの感覚器官にフィードバックするものである。

メタ社のメタクエストシリーズ

メタ社のVRヘッドセットのシェア率は非常に高く、VR市場において78%に達しているという。また、同社のメタクエスト2は3万円という、価格や大規模な広告によって世界で約2000万代を売り上げる結果となった。高価になりがちなVRヘッドセットにおいて、比較的安価なメタクエスト2はVRゲームに新規参入したいと考えているユーザに好評であると考えられる。詳しくは後述するが、VRでゲームをするユーザのほとんどはこの製品を考慮に入れるだろう。

現実から仮想へ

私が考えるこのメタクエストシリーズに求める「あれば良い」はもう一つの現実としての役割、さらに言えば、人類と世界の進化系としての役割を求めたい。つまり無限にリアルに近いVR技術であり、それだけではなく、その先へといける可能性のある技術である。現在、もう一つの現実としての役割を持つVRゲームのソフトには、VRChatが挙げられるだろう。このVRchatのユーザは1000万人いると言われている。現実世界での東京の人口とほとんど同じ人数が(頻度は別として)部分的にVR内で生きていると言う事だ。そこでは、現実の外見、声、などの要素はアバターやボイスチェンジャーの使用によってほとんど無視される。これは端的に「なりたい自分」になれる環境であるといえるだろう。さらに、これらの属性はほとんど無制限に変更可能なのだ。例えば、現実世界では無理なような、今週は男性の声で女性の外見で、来週は犬の見た目で男性の声などということも可能なのである。また、VRChat内では現実世界では使えない、超能力ともいえる機能がある。公園のような広場にいたとして、疲れたから寝室に行きたいと思って、その移動をシステム上で行なってしまえば瞬時に寝室へと移動する事ができるのだ。もう一つの例を出しておこう。VRChat上で絵を描こうとしたとき、そのペンは宙に浮いていつでも取れるようになるし、色も自在に変える事ができる。この点を考えると部分的にはVRChatにおいて現実空間をVR空間が凌駕したと言えるだろう。

しかしながら、問題もあり、その問題を解決するようなVR技術こそが私があれば良いと思うようなVR技術である。その問題とは、VRchatなどのサービスは現実に回帰してしまうと言う点にある。つまりヴァーチャルな世界に"のみ”生きる事が許されていないのだ。VRの世界の没入感や現実性がいくら上がったところで、現時点では様々な問題からVRの世界はVRのみで自己完結できておらず、所謂フルダイブ型のVRは開発されていない。このフルダイブ型のVR技術や製品が出る事になれば、完全に本質的な現実としてのVRができると考えている。それこそ、創作作品である川原礫作のSAO(ソード・アート・オンライン)や岡嶋二人のクラインの壺のような世界が可能になるのだ。これらの作品の中ではVRが現実と同じ強度を持つような設定がある。これらの作品はVR空間での死が現実世界での死に直結するという構造があり、VR空間に生きることこそが現実なのだという、われわれの認知とは全く異なる考えを登場人物が持つことがある。これは現実の端的に「いま・ここ」としか言い表せないような性質を壊すだろう。このような創作作品において、VR空間での死が現実世界での死と直結を表すようなことを現実に回帰させて私が肯定しているわけではない事を留意して欲しい。ここで私が言いたいことは、人類や世界の進化系、進化先としてのVRを期待しているということである。VR空間が現実と全く同じ強度を持ち、感覚や思考と完全に一致した時に、現実はVR空間の(瞬間移動や、ある種の魔法を使えない、つまり物理のあらゆる制約に縛られた状態の)下位互換となり、VR空間は現実を超えたナニかになるだろうということだ。さらに、その世界の進化に伴ってその進化を受け入れる人間の側にも進化があると感じてる。前述の通り、人間が本来様々な制限によりできない能力をVR空間において得たり、身体的特徴や、外見などに縛られなくなるということだ。

おわりに

VR技術に期待する技術として、メタクエストを上げその進化の可能性を探る事によって、具体的にはフルダイブ型のVR機器について、その使用用途や世界、人間の可能性を考察した。これにより、VR機器が十全に発達すれば、現実の強度を崩せる事や、誰もが子供の頃に夢想したような世界が実現可能であるということがいくつかの創作作品を参照することで確認できた。


この論考もまだまだ不十分である事に留意して欲しい。

参考文献

Vtuber 批評誌VXY vol.1

ソード・アート・オンライン

クラインの壺

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