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規制改革推進会議とオンライン診療〜通所介護事業所や公民館等での利用が可能に〜


こんにちは、メドレーの政策渉外部です。
「規制改革推進会議」という会議の名前を聞いたことのある方は多いかと思います。かつては電力自由化、コロナ禍では行政文書の押印廃止など、そして最近ではライドシェア解禁が議論されていたことでも、話題となりました。

規制改革推進会議とは?なぜ医療分野が議論されるのか?

規制改革推進会議は、経済や社会の構造改革​​に向けて必要な公的規制の緩和を議論する、内閣府の会議体です。冒頭にも記載の通り、様々な分野における規制が議論されており、今年は、下記のようなワーキンググループ(以下WG)が設置されています。規制改革推進会議では設定するWGを決め、その進捗や重要事項を話し合い、それぞれのWGでは個別のテーマを議論する、という形です。

  • 公共

  • スタートアップ・投資

  • 働き方・人への投資

  • 健康・医療・介護​​ 

  • 地域産業活性化

​​​​健康・医療・介護​​が議論される理由としては、準公共分野に属する医療は規制も多く市場原理が働きにくいため、技術の発展に伴い社会が必要とする新たなサービスを提供するには、厚生労働省とは異なる視点で内閣府が規制緩和をリードする必要があるからです。

私達メドレーの携わるオンライン診療も、この規制改革推進会議のWGで議論がされてきた経緯があります。例えば、昨年は「通所介護事業所や公民館等の身近な場所におけるオンライン診療の受診の円滑化について」(※1)や「オンライン診療等の診療報酬上の評価見直しについて」が議論され、昨年12月末に「規制改革推進に関する中間答申」が示されたところです。(他にも健康・医療・介護WGで議論された内容はありますが、今回はオンライン診療に関連する内容のみをピックアップしています。)

※1 令和3年度規制改革実施計画より
(18)オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置の恒久化


結論からお伝えすると、今回の中間答申の内容とそのアクションは、下記の通りです。

R5年度規制改革推進会議中間答申:
「通所介護事業所や公民館等の身近な場所におけるオンライン診療の受診の円滑化について」:通所介護事業所や公民館等でのオンライン診療が可能にとする内容が提示され、1月16日付で厚生労働省(以下「厚労省」)から実施可能とする関連通知が発出。(「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」の改訂について」「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」)

②「オンライン診療等の診療報酬上の評価見直しについて」:精神科・小児科などの診療におけるオンライン診療の診療報酬の見直しを検討する内容が提示され、診療報酬を議論する厚労省の中央社会保険医療協議会で議論。

今回はまず、①「通所介護事業所や公民館等の身近な場所におけるオンライン診療の受診の円滑化について」を紐解き、②は後日のnoteで解説したいと思います。

通所介護事業所は居宅扱い、公民館の地理的要件は廃止となり、オンライン診療が可能に

それでは、通所介護事業所(デイサービス)の方から見ていきましょう。

オンライン診療は、オンライン診療の適切な実施に関する指針の中で、受診が可能な場として、「医療提供施設」または「居宅等」のいずれかに限られています。患者の勤務する職場等については、療養生活を営むことのできる場所として認められていましたが、これまで厚労省は通所介護事業所は居宅等に該当しないと整理していた(※ただし、宿泊型のサービス付き高齢者向け住宅やグループホームなどは居宅に該当)ため、受診を可能とするためには、医療提供施設としての開設届を提出する必要がありました。

これに対し規制改革推進会議において介護事業者団体は、以下の理由からオンライン診療の受診が可能となるよう要望を提出しました。

・「通所介護利用者においては歩行困難者が多く、地理的制約がなくても通院が困難なケースがしばしばある」
・「歩行困難者以外にも、認知機能障害などにより、本人1人での受診が困難なケースも少なくない」
・「2世帯、3世帯で暮らす要介護者の場合は、通院に伴うご家族の負担が大きく、通院のたびに、仕事を休まざるを得ない状況もある」

規制改革推進会議 第2回健康・医療・介護ワーキング・グループ
資料1-1-1 日本デイサービス協会 御提出資料 (2023-11-20)

こうした議論や厚労省での検討を踏まえ、新たな解釈が示されたのが、今回の「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」の改訂について」のQ17です。以下に、主なポイントを整理します。

・オンライン診療は原則として、患者の居宅においての受診が想定されているが、学校や通所介護事業所なども居宅と同様、療養生活を営む場所として長時間にわたり滞在する場合には、オンライン診療を受診できる場所として認められる。
・その際、利用者が誤解しないよう、通所介護事業所等が、①自ら医療提供を行わないこと、②診療所に課せられる医療法の各種規制(清潔保持、医療事故の報告、報告徴収等)の対象とならないことを利用者に説明する。
その上で、オンライン診療が通所介護事業所等で実施可能な旨の周知や、事業所等の職員による機器操作のサポートは可能

諸条件はありますが、通所介護事業所や学校を居宅同様に「療養を営む場所として長時間にわたり滞在する場合」に、オンライン診療を可能にすると整理していることが分かります。

次に、公民館等の取り扱いについて説明します。

まず、公民館は居宅には分類できないこともあり、公民館でオンライン診療を受診可能にするには、医師非常勤の診療所(医療提供施設)として開設する必要があります。

 昨年5月には、「医療資源が限られ、受診機会が十分確保されていない場合があるへき地などについて」という条件で、公民館などをオンライン診療のための医師が常駐しない診療所として開設することが認められるようになりました。(参照:「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」令和5年5月18日)

これを受け、昨年6月に閣議決定されたR5年度規制改革実施計画では「都市部を含め開設可能にすることについて、引き続き検討し、結論を得る」という旨が記載され、開設場所の緩和が引き続き求められ、その続きが規制改革推進会議の​​WGで議論されました。

WGでは「能美市スマートインクルーシブシティ事業」を実施している石川県能美市が「公民館の機能として、オンライン診療を受診できる環境を構築したい」という旨の要望を提出しました。具体的には、医療機関やスーパー、学校などそれぞれの施設に住民が移動するのではなく、近くの公民館に行けば生活支援サービスやオンライン診療などで各人の課題が満たされるものを構築したい、という内容でした。

そして今年の1月、上記WGの議論や厚労省での検討を踏まえ、「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」(令和6年1月16日​​)の通知が厚労省により発出されました。主なポイントは以下です。

・オンライン診療のための医師非常駐の診療所について、必要性があると認めた場合に特例的に、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を認める。
・診療所の開設の申請等を受けた都道府県知事や市長は、確認にあたって、住民の受診機会が不十分であると考えられる理由の提出を求めること。
・開設を申請する医療機関は、急変時の対応について合意した医療機関と連携可能な地域の医療機関とし、当該合意医療機関名を提出すること。

上記の他にも諸条件が課されていますが、へき地に限定されていた地域要件が廃止され、様々な地域の公民館等でのオンライン診療の可能性が広がる規制緩和となりました。

また補足として、通知上では「オンライン診療のための医師非常駐の診療所」が設置される場所を「公民館」に縛っているわけではありません。例えば総務省の実証事業では、郵便局でのオンライン診療を実施しているものもあり(参考:「郵便局でのオンライン診療の概要」)、今後は公民館をはじめとする地域のコミュニティハブでの活用が期待されます。

まとめ

最後に、今回の規制改革推進会議及びその後の厚労省の通知を受けて、現時点で「オンライン診療が可能な場所」を下記の通り整理しました。

オンライン診療の受診場所の拡大を受け、患者とその家族にとって診療を継続するための選択肢が増えたことは喜ばしいことです。一方で、診療と処方はセットで考える必要があります。今後は地域や施設、患者の実情に合わせた「処方薬の運用」をいかにスムーズにしていくか、も課題になると思います。

オンライン診療後の処方箋の受け取り方・オンラインを含む服薬指導の受け方・薬の受け取り方や支払い方法など、検討ポイントは複数あり、当事者がスムーズに利用できる必要があります。例えば、以前に当社が視察させていただいた特別養護老人ホームでは、調剤薬局の事務担当者が老人ホームまで処方薬を持参し、服薬指導についてはオンラインで調剤薬局にいる薬剤師から指導を受ける、といった薬剤師や患者、患者の家族の移動が不要な運用も取り入れていました。

以上、ポイントを絞り、R5年度規制改革推進会議における通所介護事業所や公民館等でのオンライン診療関連のトピックを解説しました。

本記事が皆様のご理解の一助となりましたら幸いです。

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