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ポイント事業を考えるときはマーケティング観点ではなく、

というニュース。

 (今も存続会社がありますが)昔、博報堂と住友商事が合弁で創った頃の「G-point」という会社に少し関わることがあった。

 当時の同社の思想が「ダイナミック・オプトイン」というもので、”ポイントの獲得(発生)”=”購買の発生”=興味関心etcデータの獲得ができ、常に”フレッシュな”データが収集できるというもの。

 メールニュースなどを登録するときに興味関心項目をチェックしてもらい、そのオプトイン状況に基づいて最適な内容のメールを送るということができる。しかしそれではメール登録時の情報からアップデートができない。そこで、”フレッシュな”データをもとに最適な情報を提供しようという考えで、「ダイナミック・オプトイン」という名前がついていた。

 また一般的にポイントの発行を行うということは、顧客の囲い込みを狙ったマーケティング活動であることが多い。そのため購買に関するデータを収集し、リレーションシップマーケティング/CRMで、一人あたりの顧客の売上をあげていく(Life-Time Value = マーケットシェアではなく顧客シェア)ことが主たるゴールである。

 購買に関するデータとメールというのは、インターネット/デジタルマーケティングの初期から今に至るまで、最強かつ基盤となるものであって、それがアプリプッシュだとかサイト来訪歴とか、伝える方法と収集されるデータが増えてきているだけ。基本はすでに2000年代初頭にできていた。マーケティングオートメーションの基本となる考え方でもある(つまり20年前の思想の自動化を実現しているのが”マーケティングオートメーション”)

 で、そういうデータというのは自社の抱えている顧客情報をリッチにするために最重要である一方で、他社とのデータ共有は相乗効果を及ぼさないこともある。自社の獲得できる情報とかぶる場合や、そもそも相手方の持っているデータが自社の事業に役に立たない場合など、そういうケースも結構ある。

 あとポイント事業の大きなボトルネックは、ポイントというのは「負債」に当たるので、そのポイント発行額が大きければ大きいほど、発行している企業からすると会員に対して”借金”をしているようなものになる。一般的に1年以内に処理される負債は流動負債になるのでまだ扱いやすい。ポイントの有効期限を1年にしておけば、それが全て償還されたことを想定したとしても財務的な計画は立てやすいわけだ。しかしポイント有効期限を長くすればするほど、その「負債」は固定化されていく。固定負債化すれば支払いが先延ばしになるからいいんじゃないの?と思いがちだが、”支払の時期”はこちらがコントロールできず、会員側に委ねられているわけだから、固定化すればするほど累積していく額も大きくなりリスクが大きくなる。

 こうした点を踏まえた上でメリットがあるかどうか?がポイント事業の”ポイント”となる。つまり、ポイントの兌換・相互送客というのは、CRM的・マーケティング関連ではメリットが多いように見えるが、それとは別に、財務的な観点での潜在的なリスクの考慮が必要になる。

 以上を鑑みると、ZHDのTポイント離脱は、いつか来るだろう話だった、ということだなと。

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