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マーケティングを”真剣に学びたい”実務家のためにオススメしたい、今どきの勉強方法

長い前段〜でもこの大前提の理解が大事

Twitterでツイートした件をこちらで。

まず、このようなことをわざわざ言う理由は、以下のような理由です。

誤りの内容に言っておきますが、日本でも(日本語で読めるものでも)素晴らしいマーケティング本はあります。例えば、

今一番オススメしてる、黒岩先生たちがまとめられた、

とか、今ほどご本人がメジャーじゃない頃に某ファミマCMOが共同翻訳者になってるこれとか、

あるいは基本の基本を学ぶなら、常にオススメしている放送大学の教材とか、

日本の(日本語の)オススメ本も幾つもあります(※放送大学のマーケティングの教科書は数年おきに改訂されてますが、過去のものも集めて読むのが良いです)。

しかしながら一方で、

という声もあるように、(これはマーケティング本だけに限りませんが)「これは個人の経験です」というような本が多い。

もちろんそういった「経験」を読みたいのであれば、それでもよいかもしれません。しかしながら「知識」というのは基本的には一般化されているものを指すのであって、個人の経験というのは本来身につけるべき「知識」とは違うと思います。

それで、マーケティングを適切にイチから学びたいという人にいつもススメているのが、こちらになります。

やはり、マーケティングをなんらかやってるものについては一度は読んでおきたい本であり、現代マーケティングの基本概念が詰まってる本として、この本は挙げておく必要があります。中でもこの "AN ASIAN PERSPECTIVE"版は、日本含むアジア圏でのケースが含まれているので、身近な感じがすると思います。

一方で、Kotlerのマーケティング論があらゆるマーケティングをカヴァーしてるかというとそれは?だし、例えば北欧学派というマーケティングの学派や、Service-Dominant Logic などはKotler的なマーケティングとは筋が違います(但し、後者についてはKotler先生の最新”共著”ではとりこまれていますが)。

現在日本でメジャーなマーケティングの考えは、Kotler的というか北米型のマーケティングの思想であり、またその中でもアップデートされていないものだったりします。”今”のマーケティング理論の考えとはズレがあるのも否めません。

といっても、「じゃあ最先端のことを知りたい!」と思っても、実際のところは、上記 "Marketing Management"や放送大学の教材でもよいので、「マーケティング論の基礎」や「これまでマーケティング研究ではどのようなことが語られてきたのか」といったことを理解しておかないと、何が最先端で、何がオーセンティックで、どういったマーケティング思想が基盤となってきたのか、といったことがわかりません。なので、”最先端”を知りたいのであれば、基礎的な学びが必須になります。

で、「ビジネス書としてのマーケティング本」の場合は、タイトルや帯に「新しさ」や「時代の変化」を謳うものが多いわけですよね。ただ、実際のところはそれはポジショニングトークなのであって、客観的とか理論的な新しさは皆無だったり、著者がたまたまそれまで気づかなかったことに気づいたのをすごい発見のように書いていたり(=車輪の再発明)、歴史的経緯や先人たちのマーケティングの知見を無視していたり(=デジタルマーケティング領域に多い)と、あまり「適切」な道筋をもって書かれている本がない。

なので私の周りでも、「ビジネス書としてのマーケティング本」を読まなくなった人は多数います。じゃあどうしてるかというか、海外のマーケティング関連のコミュニティやサイトだけを情報源にしていたりするわけです。

私の場合はアカデミズムと実務の両方に足を突っ込んでいるので、知識収集の仕方が上記のような実務家コミュニティでのやり方とアカデミックにおけるそれとのハイブリッドになってますが、今回オススメしたいのは後者の方法論です。

さて・・・いざオススメのHOW・・・の前にもう少し

まず、なぜアカデミックな文章を読むのがいいか?なのですが、まず、学術誌やそれぞれの学会が発行している学会誌、いわゆる「ジャーナル」と呼ばれるものは”査読付き”の”論文集”と考えて下さい。”査読付き”というのはその筋の研究者が、提出された論文をブラインドで(投稿者に誰かがわからないように)読んで、その論文内容について評価をします。その際に先行研究との関係や研究内容の不備などを指摘していきます。それで査読された結果をもとに論文投稿者は修正をし、再投稿して、それを繰り返してようやく掲載されるというプロセスをえます。

そうしたプロセスの結果出てきた論文がジャーナルに掲載されるため、論文の内容は、「先行する研究を踏まえた上で新しい知見が書かれたもの」となります。しかも大抵のその手の学術誌は文字数・語数の上限が決まっているため、一本の論文のページ数はせいぜい数十ページの分量です。一般的な書籍と比べれば文字数・語数はとんでもなく少ないわけです。

ただし、文字数・語数が少ない理由は、そこに書かれている内容についての基礎的な部分は、それぞれの学術誌・学会誌の購読者は理解できているから書かれていない、と言っても過言では有りません。つまり、基礎的な知識・理解がなければ、論文を誤読してしまう可能性も無きにしもあらずなのです。しかし、基礎的な知識・理解さえ身につければ、これほどコンパクトにまとまった、ちゃんとした過程を得て世に出た良質な資料はないわけです。

一般的な「ビジネス書としてのマーケティング本」についても、優秀でかつ知的な部分に真摯な編集者がついていれば、“いいかげんな”内容にはならないでしょう。しかしもうそういう時代ではなく、「売れる本」を作るためには、敷居を下げ、キャッチーなタイトルをつけ、文字サイズを増やし、業界関係者に本を配って売れ線であることを演出する・・・というプロダクト戦略や広報戦略が必要になっているため、「優秀な編集者」の基準が変わってきているのが実情です。しかも「マーケティング」というのはなんとなく今は流行りですので、お手軽な本が増えてるように思います。

言い換えれば、硬派な、というか「ちゃんとした」というか、適切な・オーセンティックなマーケティングを学びたい人には、書店で並ぶ本や、あるいは note に書かれた「僕の・私のマーケティング」では満足できない不遇な時代だと言えます。

というわけで、本来であれば英語のマーケティングの文献を読むといいですよ、と言いたいところですが、皆がみな英語が得意なわけではないので、こういった手段にでましょう↓。

やるべきこと(1) Deep Lの有料版を申し込む

もう皆さんご存知な翻訳ツール Deep L ですね。無料版の経験者は多いかもしれませんが、マーケティングを学びたいなら絶対に有料版を申し込みましょう。そこらのサロンを辞めたり、やたらと積ん読になる「ビジネス書としてのマーケティング本」を買うのを辞め、そのお金を Deep L の"Advanced" 2500円/月に使ってください。"Starter"では足りません。必ず”Advanced"です。

で、有料版で"Advanced"にすると、「文書ファイルの丸ごと翻訳」が月に20本可能になります。ここ重要です。

やるべきこと(2) 学術論文をピックアップできるサイトに登録する

実務家が学術的な論文に出会う方法としては、一つには、Google Scholarを使う方法がありますね。

Google Scholarで自分の気になる領域のキーワードを「英語」で入力して、該当する論文を見てみるというのがもっともラクな方法でしょう。また My Libraryという機能もあるので、気になるものは片っ端から保存しておいてもよいかもしれません。

ただもっと良いのは(本来はアカデミックな人々向けなのですが)、ResearchGateやAcademic.eduといったサイトを使うこと。

これらは研究者向けのSNSのような存在なのですが、世界中の研究者の書いた論文に出会うことができます。

どちらのサイトもキーワードや領域を登録しておくと、それに関連した論文やプロジェクトが投稿されたときにはアラートが送られてくる機能があるので重宝しています。

やるべきこと(3) 論文をダウンロードする。

さて、Google Scholarであってもその他でもあっても、英語(や他の言語)で書かれた論文がpdfファイルで公開されていたら喜んでください。

そのファイルをダウンロードしてご自身の端末に保存しましょう。

有料版のDeepLを申し込みましたよね? 

そしたらダウンロードしたpdfファイルをDeepLにアップしてください。
少し待てばすればすっかり翻訳をしてくれます。

もちろん正確性でいうと100%ではないですが、粗い訳をざっくり読む・内容を理解するには非常に高い精度を誇りますので、実務家が読み物的に読むのであれば充分です。

やるべきこと(4) 翻訳された論文を読む。

論文には reference、参考文献が書かれています。ある論文は別の複数の論文を参考にしているので、芋づる式に関連論文を読むことができます。

なので、論文を読めば、次に読んだほうがいいものが見つかるわけです。で、そのタイトルを、Google ScholarやResearchGateやAcademia.eduで探せばいいわけで、これを繰り返していくことになります。

つまり

Deep L の Advanced の2500円で、無料公開されている論文であれば月に20本(なんとなく日本語で)読める時代になったわけです。

安くないですか???

なのに、店頭で並ぶ今流行の「ビジネス書としてのマーケティング本」にだけお金を費やすのって、もったいなくないですか?

Deep L のおかげでハードルの下がった海外論文購読をぜひ試してほしいと思います。

また、英語はできる人でも、ドイツ語やスペイン語やノルウェーあたりの言語の素晴らしいマーケティング論文に出会えることも保証します。


最後に

  • 繰り返しになりますが、日本の(日本語の)マーケティング本でも素晴らしいものは多数あります(しかし今の「ビジネス書としてのマーケティング関連本」や note でのマーケティング関連記事のインフレ状態は悩ましい)

  • これも繰り返しになりますが基礎・基本の知識がなければ、論文を読んでもチンプンカンプンになるのは間違いないです。なので基礎・基本を身につける書籍は必ず通りましょう。

  • ResearchGate/Academia.eduについては研究者向けのツールなのでご利用についてはそれを前提とした使い方と節度をもった利用をお願いします(例えば論文投稿者も同じ研究者以外から連絡もらっても嬉しくないかも)

  • DeepLの翻訳は完全では有りません。あくまでも下訳や粗い訳であることを前提に読んでください。

  • 「論文なんて読んで実務にどう役立つの?」というクエスチョンが出てくる人にはオススメできません。短期的な眼の前の仕事に活かしたい何かを探してる人には役に立たない学び方です。

  • 上記のようなアカデミックな論文に触れた結果、学び直しをしたくなった方は、Twitterなどを通じてご連絡ください。多少のアドバイスはできます。


以上。




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