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”ブランド論”は実務に使えるのか、使えないのか

ダイキン工業の広告宣伝の長である片山さんが、

『ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論』

というタイトルでアドタイで連載を始めた。

ちなみ正直にいうと、世の中で言われている”ブランド論”や”ブランドコンサルタント”たちの話に関しては僕もニガテである。ほんとに。

で、片山さんが記念すべき第一回となる↑で語っていることはもっともだと思う(ただし最後のほうの”ブランドは第五の経営資源などという間違った理解をして〜”というくだりについては気になる)。

ただ、”ブランド論”に関しては次の3つのようなことが言えると思っている。本当はもっとあるんだけれども、自分の頭の中で今まとまっているのが3つなので。

1)アカデミックな理論と実務の間でよくある話。

・アーカーらのブランド論というのは色んなケースをもとに抽象化され理論化されたもの。それを実務の世界に活かすには、アカデミックな理解と実務的で実行可能な施策へ落とすスキルの両方が必要。なので、“ブランド論”のフレームワークがダメというより、それを使いこなす能力が特殊技能に値するのだと思う。

ちなみにアーカーのブランド論を”広告まわり”の実務側に引き寄せるには、たしか邦訳の出ていないコチラの本を一度は読むべきではないかと思っている。

2)ブランドはマーケティングや広告宣伝の文脈で話すと間違いが大きいのでは?

・次に“ブランド論”というのは、マーケティングの文脈で語るよりも、“ブランドは資産になりうるか?”という観点のほうが強いはず。計上しにくい無形の資産としてどう考えるか? なので、マーケティング担当者・広告担当者の担当範囲の視点だけで見るには手に余る。結局“ブランド”を構成するのは、企業のイメージや商品・サービスそのものや顧客体験やらの総体なので、むしろ“ブランド”とは、マーケティング課題ではなく、経営課題だと思います(というものなんだけど意外とそのように理解されず、マーケティング領域だけで語られることが多いのが“ブランド論”の悲劇)。

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3)従来の”ブランド論”自体が、現在ブランドが置かれている状況にフィットしていない可能性もあるかも?

・最後に、従来の“ブランド論”は現在においても有効なのか?ということ。アーカーはこの数年、story telling に重きを置いているようですが、つまるところは「”企業による”ブランド構築」の新しい考え方なのは間違いない。

しかし従来使えてきた情報の非対称性などが崩壊し、お客さん側に評価される時代になると、企業にとってのブランドの維持管理は難易度があがっている。つまり、これまでのブランドは企業が作れてきたけれども、今ではブランドは”お客さんによっても作られている”と言えるわけで、そうなってくると企業主導なアーカーのフレームワークそのものが有効なのかどうか、あるいはそれをどのように時代にあったものにしていくかが重要になる。それゆえに、“そのまま”旧来的なブランド論がまますます実務の現場での活用が難しくなる可能性はあるだろう。


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