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目的別 システム構築のポイント①

前回、「入退院支援のメリット」では、入退院支援業務を行うことにより、いくつかのメリットがあることと、それらの全てを最初から求めようとせず、一つか二つの目的を定めて、そこに向かってシステムを構築すべきということをお話しました。

これからしばらくは、目的別にどのようなことに注意してシステムを構築していくかについてお話します。

まず最初は「入退院支援加算により収益向上を目指す」という目的です。

■入退院支援加算等の収益向上

入退院支援加算の施設基準を取得するためには、経験値の高い看護師やソーシャルワーカーの配置が必要不可欠です。保険診療においてはサービスの値段を医療機関ごとに勝手に定めることはできないため、医療機関がきちんと成り立っていくためには、行った医療サービスを100%診療報酬として請求するということがとても重要になります。「90%」でも「110%」でもなく、「100%」。行った医療サービスを過不足なく保険請求を行うことが重要です。

入退院支援加算を漏れなく算定するためには、まず入退院支援加算の算定要件をきちんと把握しましょう。

入退院支援加算の算定要件をまとめると下記のようになります。

①入院後3日以内に患者の状況を把握し、退院困難な要因を有している患者を抽出する
②入院後7日以内(※)に患者または家族と病状や退院後の生活も含めた話合いを行うと共に、関係職種とカンファレンスを実施して退院支援計画の作成に着手する
 ※入退院支援加算1を一般病棟で算定する場合
③退院支援計画書には所定の内容を記載し、患者及び家族にその内容を説明する
④退院先は診療録に記載する

確かに3日以内とか7日以内とか慌ただしい感じはありますが、入院直後のスクリーニングはアナムネと一緒に行えばいいし、入院後のICやカンファレンスもすでに行っているはずの業務なので、要件を満たすことはそれほど難しそうには思えません。

■入退院支援加算を算定しない理由

しかし、実際に入退院支援加算を算定している病院にヒアリングをしてみると、医療機関独自で色々条件をつけていることが少なくありません。
私が実際に伺った条件には下記のようなものがあります。

・65歳以上または介護保険の被保険者しか算定していない
・実際に退院支援部門が介入している場合しか算定していない
・7日以内に計画書を患者に渡せなかった場合は算定していない

色々な病院の入退院支援部門の方とお話してきましたが、ほとんどの病院の方が本当に真摯にその業務と向き合い、患者様と向き合っておられると感じます。
だけど、マジメすぎる!と思ってしまうのです。

「入退院支援加算」の算定要件には「退院調整を行った人に算定しなさい」とはひとことも書いていません。もしそうであれば「600点(6000円)」は安過ぎます。「入退院支援加算」の通知の一番最初には下記のように書かれています。

患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるように、施設間の連携を推進した上で、入院早期より退院困難な要因を 有する患者を抽出し、入退院支援を実施することを評価するものである。

私は、基本的に「退院困難な要因」がある全ての患者さんに対しては、なんらかの「入退院支援」が必要であると考えています。
それは、「安心して退院できるよう支援しますよ」という説明だけでもいいと思うのです。また患者本人だけではなく、家族がきちんと心の準備ができるよう文書をもって説明することでもあると思っています。

患者本人が高齢者ではないから、転院先を探すという業務をしていないから、という理由で「入退院支援加算を算定しない」というのは、実際に行っていることを蔑ろにしているか、やるべきことをやっていないかいずれかではないでしょうか。
入退院支援部門が介入していなくても、病棟の担当看護師さんはやっているかもしれません。自然とそうなるような運用を構築することが大事だと思うのです。

また「7日以内に計画書を患者に渡せなかった場合は算定していない」に関しては算定要件の読み間違いですね。計画書作成に着手さえしていれば、算定要件は満たしています。

■算定のハードル

入退院支援加算にはもうひとつ算定のハードルがあります。

それは、算定ルールが難しいということです。

先ほど記載した通り、3日以内にスクリーニングをし、7日以内にカンファレンスと計画書作成を行えば入退院支援加算の算定要件を満たすことはできるのですが、実際に入退院支援加算を算定するのは「退院日」である必要があります。

保険診療に関しては、多くの項目が「行ったときに算定する」ルールなのに、入退院支援加算ではそのルールが適用されていません。入退院支援加算は「実施」と「算定」の間にタイムラグがあり、そのタイムラグのために算定漏れや算定ミスが発生しやすくなっています。

算定に関しては医事部門の担当ですので、入退院支援加算を算定するためには、医事部門との連携が不可欠です。この連携がうまくいかなかったり、医事担当者の経験値等により算定もれが発生しやすいのです。

「入退院支援加算」算定の運用は、だいたい下記のいずれかに該当するようです。

・退院支援計画書のコピーを医事部門に回して、算定担当者が対象患者の退院までコピーを保管しておき、退院会計の時に算定する。
 →コピーを医事部門に回すタイミングが遅れる、コピーの保管ミスにより算定もれが起こりやすい
・入退院支援加算のコストは退院支援計画書作成時にとばし、算定担当者がそのコストを退院日に移動させる
 →月跨ぎ等入院が長期になった場合にミスが発生しやすい
・カルテ記載や電子媒体で保存されている退院支援計画書を算定担当者がチェックして退院日に算定する
 →算定担当者の経験値等により算定ミスが発生しやすい

今の時代、ほとんどの病院は電子カルテシステムまたはオーダリングシステムを採用していると思います。中には入退院支援加算を自動で算定日に移動させるシステムもある筈ですので、そのようになっていない場合はシステムベンダーに問い合わせまたは要望を出すべきだと思います。

■まとめ

入退院支援加算等の収益向上のためには、下記のポイントをおさえましょう。

・算定要件に当てはまる患者には100%入退院支援加算を算定する
・3日以内のスクリーニング、7日以内の面談とカンファレンス、退院支援計画書作成着手がスムーズに進むようなシステムを構築する
・医事部門の経験値等に左右されないよう、電子カルテシステムの機能を最大限利用する

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