入退院支援加算の算定
前回、算定要件の話をしたので、今回はもう少し診療報酬の話をしましょう。
診療報酬というのは、保険診療を行った場合に医療機関が受け取ることができる各医療サービスの代金のことを言います。
診療報酬は2年に1回見直しが行われます。その2年に1回の見直しが今年の4月でした。
令和2年度の入退院支援加算は下記のようになっています。
■入退院支援加算の点数
A246 入退院支援加算(退院時1回)
1 入退院支援加算1
イ 一般病棟入院基本料等の場合 600点
ロ 療養病棟入院基本料等の場合 1,200点
2 入退院支援加算2
イ 一般病棟入院基本料等の場合 190点
ロ 療養病棟入院基本料等の場合 635点
3 入退院支援加算3 1,200点
1点=10円なので、「600点」は6000円になります。保険によりますが、3割負担であれば1800円が患者負担で残りが医療保険から支払われます。
では「1」「2」「3」とはなんでしょう?
ここではまず入退院支援加算「1」「2」「3」の違いを簡単に説明します。
入退院支援加算は「1」「2」のグループと「3」だけのグループに分かれます。
最初に、仲間外れになる「入退院支援加算3」の説明をしましょう。
■入退院支援加算3
「入退院支援加算3」というのは、そもそも算定対象がベビーのみとなります。
それも、対象の入院期間内にNICU(新生児集中治療室)に入院していたり、自院に転入してくる前にNICUに入院していたことがある早産児や低出生体重児などの出生直後から早期の治療が必要な重症児が対象です。
早産児や低出生体重児はいくつかの障害を併せ持っていることが多く、入院が長期化する傾向にあります。転院可能な医療機関が少なく、退院にあたっては患者家族へのケアが欠かせない点が支援の難易度が高いとみなされて、高い点数になっていることが推測されます。
■入退院支援加算1と2の違い
では、残りの「入退院支援加算1」と「入退院支援加算2」はどう違うのでしょう?
①施設基準が違う…「入退院支援加算1」を算定する病院は、「入退院支援加算2」を算定する病院より多く入退院支援業務に従事する看護師または社会福祉士の配置が求められます。特に病棟ごとに最低1名は入退院支援および地域連携業務に従事する専任の看護師または社会福祉士が配置されている必要があります。「入退院支援加算2」を算定する病院は入退院支援および地域連携業務を担当する部門の設置や、その業務に従事する看護師および社会福祉士の配置は必要ですが、病棟ごとに配置する必要はありません。
②算定要件が違う…「入退院支援加算1」は、自院に転入してくる前に入院していた医療機関で「入退院支援加算」を算定していた場合に算定できます。例えば大腿骨頸部骨折でA病院に入院し手術をした患者さん。在宅療養を希望しているもののリハビリによるADL向上が不可欠のためリハビリ施設の充実しているB病院に転院。この場合、A病院で「入退院支援加算」を算定していれば、B病院でも「入退院支援加算1」が算定可能です。
なお、この例ではB病院でも「入退院支援加算1」の施設基準を取得している必要があります。B病院が「入退院支援加算2」の施設基準しか取得していない場合は、この事例のような患者に「入退院支援加算2」を算定することはできません。
ちなみに一般病棟の場合と療養病棟の場合で、療養病棟の場合の方が点数が高いのは何故でしょう?
これはやはり、患者さんの在院期間の長さに比例して、退院調整の業務工数が上がったり、支援の難易度が上がる傾向にあるからだと思います。
■入退院支援システム作りのポイント
ここからは、入退院支援業務を自院に構築しようとしている医療者向けのお話です
残念ながら、病院が入退院支援システムを運用する費用と、算定した入退院支援加算の診療報酬を比較した場合に、診療報酬の方が勝っている病院はあまり多くありません。
なぜかというと、入退院支援には経験値の高い看護師さんやMSWさんが必要であり、ひとりひとりの患者にきちんと向き合おうとすればするほど、人件費が高騰してしまうからです。
しかし、入退院支援業務をうまくシステム化すれば、省力化できる業務もたくさんありますし、平均在院日数の短縮や在宅復帰率の向上を図ることができ、さらに患者満足度の向上も見込まれます。それらは結果として必ず病院の診療報酬に反映します。
入退院支援業務を行っていく病院は、そのあたりを俯瞰的に観測・分析できる立場の方がきちんとマネジメントを行う必要があると強く感じます。
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