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運動器理学療法士のプロになるためのキャリアラダー(総論)<全文無料公開>

 皆さんの施設では既にキャリアラダーは運用していますか?今回、このような機会をいただいたので、全4回で当院が使用している「運動器理学療法士のプロになるためのキャリアラダー」の説明をしたいと思います。
第1回は総論として、キャリアラダー作成までの経緯やキャリアラダーの骨格について説明します。

皆さんはじめまして!運動器7の月曜日担当、小保方祐貴と申します。
 私は理学療法士11年目の33歳です。現在、群馬県前橋市の東前橋整形外科病院で診療技術部長兼企画管理部長として勤務しております。

役職名がやや複雑ですが、当院ではリハビリ科、放射線科、栄養科、臨床工学技士科が診療技術部として組織されており、そこで部長をさせていただいております。

そこから推察していただけるとは思いますが、「バリバリの管理職」をしています!そのため、普段は臨床現場に出ておりません。

 今回、運動器7のお話をいただいた時に何を話そうかな?と考えておりました。臨床の話?JSPO-AT持っているから、トレーナー現場での働き方?

いやいや、私の立場だからこそ述べられる運動器の見方があるだろう!っということで、今回のテーマを「運動器理学療法士のプロになるためのキャリアラダー」としまして、当院での活動を中心に書かせてもらえればと思います。

キャリアラダーとは?


 キャリアラダーは1980年代にアメリカで提唱されました。日本においては看護師や保健師で導入が進んでいます。ここで日本看護協会が定めているキャリラダー(クリニカルラダー)の定義を確認してみましょう。

クリニカルラダーとは能力開発・評価のシステムの一つで、「クリニカル」は臨床実践を、「ラダー」ははしごを意味し、看護師の臨床実践能力を表している。

キャリアラダーとは専門的な能力の発達や開発、臨床実践能力ばかりではなく、管理的な能力の段階や専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師としての段階等も含むもの。引用:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)活用のための手引き.公益社団法人日本看護協会.2016

このようにキャリアラダーは、病院や組織で働く従業員が、はしごを登るようにキャリアアップできるようにする能力開発システムになります。

キャリアラダー作成の契機は?


 キャリアラダー(クリニカルラダーも含む)については、既に作成し、運用されている病院・施設も多いかと思います。

当院においても新人教育という形で、職員に対する教育は行っておりました。私が当院に入職して10年。入職当初はPT7名の組織でしたが(今井編集長とは同期です)、職員の入退職を繰り返し、現在ではPT28名、OT3名のリハビリ科となりました。うちのOB・OGには実に個性の強い方々が多くいます。

・編集長している人

・自費施術サービスでがんばっている人

・新規開院の整形外科クリニックに科長としてヘッドハンティングされた人

・大学院進学後、産科と組んで産後腰痛に対して取り組んでいる人

 etc.

あれ?意外と少ないか?(笑)でもここに書いた人以外にも地域・社会で活躍しているOB・OG、現職員はたくさんいますね。そして、彼らの印象としては、「病院(当時はクリニック)勤務のPTとしても優秀」ということです。ここで、地域・社会での貢献=優秀という方程式は成り立つと仮定します。

では「優秀」になるためにはいったい何が必要なのでしょうか?

職員のやる気?資質の問題?

確かにこれらは必要な要素ですよね。しかし、様々な人材が流入してくる昨今のセラピスト事情の中で、成長やキャリアアップを個人のやる気や資質に依存するようでは、組織としてダメでしょうね。病院としての質も向上していきません。

そして、せっかく当院に入職してくれるのだから、地域・社会に貢献できるプロの運動器PTを育成できるシステムを構築していくべきだ!と考えたことがキャリアラダー作成の契機でしたね。

当院のキャリアラダーについて


1.ゴール設定
 さて、当院のキャリアラダー(クリニカルラダー)について説明していきますが、まずゴールを明確にしなければいけませんね。当院のキャリアラダーのゴールは、「地域・社会に貢献できるプロの運動器PTの育成」です。

すなわち、整形外科における病態・病期ごとの臨床判断・実践が可能であり、当院の看板がなくても地域・社会に貢献できる人材の育成を目指しています。

2.育成ポイントの設定
 ゴールを定めたところで次はキャリアラダーの構成要素についてです。当院のキャリアラダーは以下の13のポイントに対して運動器理学療法士を育成することを心がけています。

1,高い専門的臨床技能

2,整形外科診療を理解し、説明できる能力

3,理学療法士としての倫理観

4,リハビリマネジメント能力

5,エビデンスに基づく理学療法の提供能力

6,チーム医療を実践しうる能力

7,インフォームド・コンセント能力

8,コミュニケーション能力

9,科学的探究心

10,生涯にわたって学ぶ姿勢

11,教育能力

12,課題解決する能力

13,管理能力

3.カテゴリー分け


 12の育成ポイントを定めたら、これをカテゴリー分けしていきます。今回は、日本看護協会のキャリアラダーに倣い、2カテゴリー(5サブカテゴリー)+1カテゴリー(2サブカテゴリー)としました。育成ポイントとの整合表は以下の通りとなります。

くどいようですが、当院が目指しているものは「地域・社会貢献ができるプロの運動器PT」です。そのため、地域・社会貢献を組織として推奨していく形は必須です。

しかし、職員には職員のキャリアプランがあったりするので、当院の(と言いますか私の)育成プランを無理やり当てはめるということはしていません。

希望がある職員には、様々な形で地域・社会貢献活動を進めており、それを地域・社会貢献カテゴリーとしています。

4.階層分け


カテゴリー分けができたら、次は階層分けになります。当院のキャリアラダーではGrade1〜6まで全部で6つの階層に分けています。以下に各Gradeの定義を示します。

Grade1:整形外科・運動器リハビリの基礎を理解し、実践できる。地域・社会貢献活動について理解し、参加できる。

Grade2:整形外科の病態・病期を理解し、臨床実践及び業務場面で単独判断が可能。地域・社会貢献における主体的な参加をすることができる。

Grade3:整形外科における高度な臨床判断が可能であり、地域・社会で主たる役割を担うことができる。

Grade4:チームのマネジメントができる

Grade5:部門・部署のマネジメントができる

Grade6:部署を含めた組織全体のマネジメントができる

ここでお気づきの方もいらっしゃると思いますが、Grade4〜6はマネジメントラダーとなっており、役職者およびマネジメントラダー希望者対象のラダーです。

つまり、地域・社会貢献できるプロの運動器PTのキャリアラダーとしてはGrade3までとなっております。

Grade3をクリアできた人材については、当院が院内外問わずプロの運動器PTとして活躍できると太鼓判を押せる人材という認識になります。

今回は総論なので、ここまでとしたいと思います。次回はGrade1での各カテゴリー・サブカテゴリーの構成要素や行動目標などを提示しながら、当院が目指している「地域・社会貢献ができるプロの運動器PT」の育成方法をお示しできればと考えています。

それでは次回もよろしくお願い致します!!

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【目次】

第一回:運動器理学療法士のプロになるためのキャリアラダー(総論)

第二回:運動器理学療法士のプロになるためのキャリアラダー(Grade1)

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